デネブ

 年間を通して日中の気温が最も高くなる真夏の頃、宵の東天を見上げると、高度を上げてきた夏の濃い天の川が大きく横たわって見えます。北東の空から南の空へと流れる中で、途中で大きく2つに別れている部分があります。デネブはちょうどその分岐点付近で1等星として白く輝いています。
 
 デネブははくちょう座が作る十字形の一角を担っている重要な星です。

星名 学名 星座 バイヤー符号 フラムスティード番号 赤経 赤緯 実視等級 絶対等級 距離 スペクトル型
デネブ Deneb はくちょう座 α星 50番 20h41m26s +45゜16’49” 1.25等 −6.9等 1411光年 A2

デネブの位置

白鳥のしっぽ

 デネブははくちょう座の頭かと思いきや、尾っぽの部分になります。頭の部分は反対側のアルビレオになりますので注意してください。

デネブの意味

デネブはアラビア語のアッ・ザナブ・アッ・タジャージャからきており、その意味は「めんどりの尾」です。デネブはザナブ、つまり尾に由来しているのです。

その他の呼び名

 デネブの呼び方には古七夕(ふるたなばた)、後七夕(あとたなばた)という和名があります。七夕の星であるベガとアルタイルよりも遅れて南中することから、このようによばれています。

夏の大三角

 デネブは、こと座のベガ、わし座のアルタイルとともに、夏の大三角を作っています。冬と春にも大三角がありますが、濃い天の川を背景にした夏の大三角は、一番優雅で華やかなものかもしれません。また、夏の大三角は細長い三角形であるのも特徴です。

白色の超巨星

 夏の大三角を作る3つの星は、ベガが0.0等星、アルタイルが0.8等星、デネブが1.3等星と、デネブが一番暗くなっています。しかし、距離をみてみますと、ベガは25.0光年、アルタイルは16.7光年であるのに対して、デネブはなんと1400光年も離れています。
 
 デネブは太陽の15倍もの質量を持ち、大きさは太陽の108倍もあります。そして放つ光の量は太陽の5万4千倍以上もあるという、恒星としては最大クラスの明るさを持っています。仮に太陽をこの距離まで遠ざけたとすると、その明るさは13等級といいますから、小型の天体望遠鏡では歯が立ちません。デネブがいかに強烈に明るい星であるかがおわかりいただけると思います。

わずかに変光する変光星

 デネブは明るさがわずかですが変化する変光星です。その変光範囲は小さなもので、1.21等から1.29等の範囲にとどまります。はくちょう座α型変光星の代表というか、そのものです。数ある変光星の中にあってこの型は、2016年現在でわずかに121個だけしか見つかっていません。

8300年後の北極星

 地球自転軸の歳差運動によって、長い年月が経つと北極星も移り変わっていきますが、8300年後にはデネブが北極星となります。といっても天の北極からは6.6度ほど離れていますから、あまり精度のいい北極星とはいえません。しかしそれでも1等星デネブは、素晴らしい北極星としてその役割を果たしてくれるでしょう。