水星を見つけよう 2003年4月

 水星を見たことある?

 「木星や土星なら見たことがあるけど、水星は見たことないよ。」という方も多いのではないでしょうか。でも大丈夫。4月中旬には今年最高の好条件となって、見つけやすくなります。この機会にあなたも水星を見てみませんか?


水星は見つけにくい惑星

 水星は太陽系の中で一番内側を回る惑星として知られています。それゆえに、地球から見た水星は、太陽のそばをへばりつくように動いており、太陽の光が邪魔になってなかなかその姿を見ることができません。地動説で有名なコペルニクスでさえ、死の床で「私は生涯、水星という天体を見ることがなかった」と嘆いたそうです。


水星観測の好機とは

 そんな水星ですが、見つけるチャンスがないわけではありません。むしろ好機を選ぶと、案外と簡単に見つけることができます。では、水星を見つけるための好機とはどんなものでしょうか。

 それは水星が太陽から最も離れた時です。この時のことを東方最大離角、西方最大離角と呼んでいて、それぞれ水星は、太陽の東側、西側に最も離れた位置に来たことを意味しています。東方最大離角の頃には夕方の西空に、西方最大離角の頃には明け方の東空に水星を見ることができます。

 また、太陽から離れた方向も重要です。極端な話をしますと、日の出/日の入り時刻に、地平線と水平な方向に水星がいくら離れていたとしても、残念ながらこの時は水星を見ることができません。水星が地平線に対して垂直な方向に離れていることが大事なのです。


4月16日は今年最高の条件

 水星は2003年4月16日に東方最大離角となり、しかも日の出/日の入り時刻での水星の高度が今年最大となります。したがって、この頃には今年一番の条件で水星を見ることができます。

 しかし、4月16日でなければ水星を見ることができないというわけではありません。この前後1週間くらいが水星観望の好機となります。


水星の位置

 水星は日の入り時刻には真西からやや北寄り、高度20度弱くらいのところにあります。

日の入り時刻の水星の位置(東京)
日の入り時刻の水星の位置

 しかし、1時間も経つと水星の高度は10度を切ってしまって、条件が悪くなってしまいます。

日の入り時刻 1時間後の水星の位置(東京)
日の入り時刻1時間後の水星の位置



水星を見つけよう

 下の絵は4月16日、東京での日没40分後の空の様子です。実際にはまだ薄明状態のために空はまだ少し明るいので、明るい星以外は見ることができません。この絵を参考に水星を探してみてください。観測地点によって、時間が多少前後することに注意してください。探すにあたってのポイントをいくつかあげておきましょう。

日没40分後の空の様子(4月16日、東京)
2003年4月16日 日没40分後の空の様子
西の視界が開けた場所で

 何はともあれ、水星は日没後の西の空低くに見えます。ですから、西の方角が開けていて街灯などの明かりが少ない場所を探しておきましょう。

薄明かりの中で

 水星は高度が低いため、空が暗くなりきった頃には沈んでしまっているか、高度が低くてほとんど見えなくなっています。ですから、空がまだ少し明るい状態の中で水星を探すことになります。

 日没後の早い時間では、空がまだ明るいので水星を見ることはできません。逆に、時間を置きすぎると水星の高度が低くなり、地球の大気による光の吸収や市街地の明かりなどに邪魔されて、見えなくなってしまいます。

 おおまかに言えば、日没の40分後から1時間後くらいの間が勝負になります。

西からやや北寄り、高度10度付近

 日没の40分後から1時間後には、水星の位置は真西から北へ15度、高度10度付近に見えます。水星の明るさは16日の場合で0.1等星ですから、肉眼で十分見える明るさかと思いきや、空は薄明状態なので普段の感覚とは全然違って案外苦労します。とはいえ、付近に水星より明るい星はありませんので、薄明の空にプチッと光る星があれば、それは水星だと思って間違いないでしょう。

 大人がいっぱいに手を伸ばしてにぎりこぶしを作ると、その間隔が10度くらいになると言われていますので参考にしてください。

日増しに落ちる明るさ

 水星の光度は9日にはマイナス0.7等星ですが、16日には0.1等星、23日には1.4等星と、どんどん暗くなっていくので、早い時期に見た方がみやすくなります。特に23日頃の1.4等星という明るさは、ちょっと条件が悪いと、肉眼で見るには少し苦労する明るさかもしれません。視力に自信のない方は双眼鏡があれば用意しておいた方が無難でしょう。

4月16日以外の見え方

 水星の4月16日の見え方は上の絵のとおりですが、他の日でも見え方に大きな違いはありません。ただし、背景の星座の位置や日没時刻の違いによって見る時間帯が微妙に違ってきます。そこで、いちおう16日をはさんだ前後1週間のリンクを用意しておきました。時刻は東京の日没40分後ということで統一しています。東京以外の地域では、次の項目の観測データを参考にして時間を補正してください。

  4月 9日(水) 18時49分
  4月12日(土) 18時51分
  4月16日(水) 18時54分 (上の絵)
  4月19日(土) 18時57分
  4月23日(水) 19時00分



観測データ

 主な都市での観測データを示しておきますので参考にしてください。

日付 項目 札幌 東京 大阪 福岡
9日 日没時刻 18:09 18:09 18:25 18:44
水星没時刻 19:43 19:35 19:50 20:09
日没時水星高度 15.9度 16.4度 16.4度 16.5度
水星の明るさ −0.7等星
12日 日没時刻 18:13 18:11 18:27 18:47
水星没時刻 19:56 19:46 20:01 20:20
日没時水星高度 17.4度 17.9度 17.9度 18.0度
水星の明るさ −0.4等星
16日 日没時刻 18:17 18:14 18:30 18:50
水星没時刻 20:07 19:54 20:09 20:27
日没時水星高度 18.3度 18.7度 18.8度 18.8度
水星の明るさ +0.1等星
19日 日没時刻 18:21 18:17 18:33 18:52
水星没時刻 20:09 19:56 20:10 20:28
日没時水星高度 17.9度 18.4度 18.4度 18.5度
水星の明るさ +0.6等星
23日 日没時刻 18:26 18:20 18:36 18:55
水星没時刻 20:03 19:50 20:04 20:22
日没時水星高度 16.0度 16.5度 16.5度 16.6度
水星の明るさ +1.4等星

天体望遠鏡で見てみよう

 最後に、水星を天体望遠鏡で観測してみるとどのように見えるのでしょうか。同じ内惑星である金星の場合、大きさを変えながら満ち欠けをすることは、中学校の教科書にも書かれているとおりです(「みんなで星のお勉強」の中にある、「4.月や惑星の満ち欠け(2)金星の満ち欠け」を参照してください)。

 水星の場合も地球の軌道の内側を回る内惑星なので、やはり大きさを変えながら満ち欠けをします。天体望遠鏡で見ると、金星よりも小さいながらこの様子がわかります。下の絵のように、初めは小さく丸みを帯びた水星が、次第に細く大きくなっていく様子が観測できます。

 しかし、高度が低い水星は大気の影響を受けやすく、その映像をハッキリととらえるのはなかなか難しいかもしれません。

東方最大離角前後の水星の形
 

「つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレット」の中にある内惑星の位置で、自分の近くの観測地へ変更し、水星の見える位置やその形をシミュレーションしてみましょう。また、補正値を設定すると、日没後何分後といったシミュレーションも行えます。

 今回の水星を見つけようの特集はいかがでしたか。普段はなかなかお目にかかれない水星ですが、これを機会にぜひとも見つけてほしいと思います。み・ん・な、がんばってネッ!

(なにが「み・ん・な、がんばってネッ!」や。気持ち悪いっちゅうねん)
つる−−>あーら、そうかしらん? いやーねぇ。。。