天体望遠鏡の選び方

 天体望遠鏡で観測する天体には独特の味わいがあります。肉眼では見えなかった天体が観測できるようになるだけに、天体観測の対象も惑星、星雲、星団、二重星、変光星など、大きく広がります。天体観測の本当の楽しさを味わうためには、やはり天体望遠鏡が欲しいところですね。ここでは「天体望遠鏡を買いたいんだけど、よくわからなくて・・・」という方のために選び方を説明しましょう。

以降では大きく4つに分けて選ぶコツを解説しています。参考にしながら、ぜひ自分に合った天体望遠鏡をゲットしてください!

天体望遠鏡を選ぶステップ

目的別 天体望遠鏡の選び方

予算別 天体望遠鏡の選び方

どこで買えばいいの?

天体望遠鏡を選ぶステップ

 おおまかに言うと、天体望遠鏡の選び方は次の4つのステップからなります。

鏡筒の形式を決めよう

  • 屈折式
  • 反射式
  • カタディオプトリック式 

架台の形式を決めよう

  • 経緯台式
  • 赤道儀式

口径を決めよう

  • 性能は口径で決まる
  • 倍率が大事なのではない 

その他をチェックしよう

  • 三脚
  • ファインダー
  • 接眼レンズ
  • 自動導入装置
  • 付属品
  • その他 

 以降ではステップごとに詳しく解説しましょう。

 疑問点は、天体望遠鏡でよくある質問をご覧ください。
 わからない用語は天体望遠鏡の用語をお読みください。
 天体観測入門機の購入は、天体望遠鏡の入門機を買っちゃおうからからどうぞ。

鏡筒の形式を決めよう

 天体望遠鏡を選ぶ第一歩は鏡筒の形式を決めることです。鏡筒の形式を大きく分けると、屈折式天体望遠鏡、反射式天体望遠鏡、カタディオプトリック式天体望遠鏡の3つに分かれます。それぞれに特徴があり、ベテランの人でも好みが分かれます。天体望遠鏡の鏡筒の形式に詳細をまとめていますので参照してください。

屈折式

屈折式望遠鏡の例 一般の方が天体望遠鏡を思い浮かべるとすれば、この屈折式天体望遠鏡ではないでしょうか。鏡筒はスリムで細長く、鏡筒の後ろからのぞくタイプです。このタイプは全面に対物レンズと呼ばれる凸レンズを配置しています。これはガラスを通過する光は進路が曲がるという性質を利用し、光を1箇所に集めます。いってみれば、虫めがねで拡大するようなものです。

反射式

反射式望遠鏡の例 反射式天体望遠鏡は一般の方にはあまりなじみのない形式かもしれません。その名のとおり、鏡で反射させながら光を集めます。最も一般的なのはニュートン式で、メインの鏡(主鏡という)には放物面を採用しています。放物面で反射された光は1点に集まりますが、このままでは光はもと来た方向(星が見える方向)へ帰ってしまいます。そこでもう一枚、副鏡と呼ばれる平面鏡を配置して光の進路を90度曲げ、鏡筒の横からのぞくようにしています。

カタディオプトリック式

カタディオプトリック式天体望遠鏡の例 屈折式と反射式の良いところを取り入れたのがカタディオプトリック式天体望遠鏡(反射屈折式天体望遠鏡)です。カタディオプトリツク式は反射式のように凹面の主鏡を配置しますが、副鏡は多くの場合が凸面鏡です。2度光を反射させることにより、光を主鏡の方向へ集めます。主鏡の真ん中には丸い穴が開いており、屈折式のように鏡筒の後ろ側からのぞくのが一般的です。また、カタディオプトリック式では補正版や補正レンズを鏡筒の前面へ配置して像の歪みをおさえています。

架台の形式を決めよう

 天体望遠鏡を選ぶ次のステップは架台の形式選びです。架台の形式は大きく分けて経緯台式と赤道儀式の2つがあります。使用目的に合わせて架台を選びましょう。それぞれの特徴を天体望遠鏡の架台の形式へまとめましたのでお読みください。他にもドブソニアン式といった経緯台の変形版もありますが、初心者の方にはおすすめしません。

経緯台式

経緯台の写真 地面に対して上下左右に動きます。動き方が直感的にわかりやすい点や、構造が簡単で安価なのがメリットです。しかし、長時間にわたって星を追尾するような天体観測は苦手です。総じていえば初心者の方に向いています。

赤道儀式

赤道儀の写真 地球の自転軸に対して水平垂直に動きます。初めての方には動き方がわかりづらいのですが、星の動きに合わせて追尾できるので、長時間観測や天体写真撮影に向いています。構造が複雑で重くなり、高価になってしまうのがデメリットです。本格的に天体観測を始めたい方に向いています。

口径を決めよう−天体望遠鏡の性能

 天体望遠鏡の性能のほとんどは、計算上だけでいうと口径の大きさで決まります。つまり、口径が大きいほど暗い天体を細部までハッキリと観測することができます。かといって口径が大きいとそれだけ重たくなり、移動や取り扱いが大変になって、天体観測すること自体が億劫になってしまいます。ハッキリ言って使わなければただの筒。スペースをとる上に重たくて容易に動かせず、結局倉庫の奥へしまってしまうことになりかねません。

 ということで、自分の体力や使用頻度も考えて選ぶようにしましょう。  口径による見え方の違いは下の表を参考にしてください。なお、天体望遠鏡の性能は倍率によって決まるものではありませんので、くれぐれもご注意を! 詳しくは次に出てくる「倍率について」をお読みください。

口径 極限等級 分解能 観測対象と見え方 ※目安程度にお考えください
50mm 10.3等星 2.32秒 ・双眼鏡程度の口径なので、観測対象は惑星などのごく一部に限られる
・月のクレーターの存在がハッキリわかる
・木星の縞模様を確認できるが詳細はわからない
・土星の環の存在を確認できるが詳細はわからない
・明るい大型のメシエ天体の存在を確認できる
60mm 10.7等星 1.93秒 ・観測対象は明るい惑星や明るいメシエ天体などに限られる
・月の比較的小さなクレーターまで観測できる
・木星の2本の縞模様を確認できる
・条件が整えば土星の環をA環とB環に分離できる
・明るい大型の天体の存在を確認できる
80mm 11.3等星 1.45秒 ・木星は2本の縞模様の濃淡や大赤斑を観測できる
・土星の環をA環とB環に分離できる。本体の縞模様も見え始める
・メシエ天体のほとんどを確認することができる。大型の天体は詳細までわかる。
・球状星団は大型のものでも恒星に分離できない 
100mm 11.8等星 1.16秒 ・月の小さなクレーターまで観測できる
・木星の細い縞模様や細かい表面模様が見えはじめる
・土星本体の縞模様が観測できる。条件によってはC環が確認できる
・メシエ天体に加え、一部のNGC天体が見え始める
・大型の球状星団は周辺部の星が分離し始める 
150mm 12.7等星 0.77秒 ・月の微小なクレーターまで観測できる
・木星は縞模様の濃淡に加え、縞模様以外の表面模様が観測できる
・土星はA環とB環に加え、C環も分離できる。本体の縞模様に加えて表面模様が確認できる
・比較的明るいNGC天体を確認できる
・大型の球状星団は条件が整えば中心部付近まで星に分離できる 
200mm 13.3等星 0.58秒 ・木星、土星ともに多彩な表面模様が観測できる
・多数のNGC天体を観測できる
・大型の球球状星団は中心部まで星に分離できる 

倍率について

 天体望遠鏡というと倍率が一番気になるかもしれませんね。でも天体観測を行う場合、倍率を気にし過ぎてもあまり意味がありません。確かに惑星など一部の天体観測では倍率が重要になります。しかし倍率を高くし過ぎると、像がぼやけてピントが合わなくなってきます。その上、像の明るさが暗くなってしまって細部がわからず、ほとんど天体観測になりません。

 どこまで倍率を上げることができるか、有効最高倍率は口径の大きさによって決まりますから、倍率よりも口径の大きさや架台の方に気を使ってください。よく「驚異の350倍!」といった宣伝文句を見かけますが、倍率だけを売りにしているものは、粗悪品であるケースもありますから注意したいところです。

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その他をチェックしよう

 鏡筒、架台、口径が決まったところで、最後に細かい部分を決めましょう。決めるといってもほとんどの場合セット品を購入することになりますから、細かいその他の部分をチェックしていくといった方が正しいかもしれません。

三脚

 天体望遠鏡の三脚は、木製のものやアルミ製のものがあります。入門機にはまずありませんが、鏡筒が重い場合や天体ドームに設置する場合は、金属製のピラー式ということもあります。

 いずれにしても、全ての荷重が三脚にかかるわけですから、できるだけしっかりした頑丈なものを選んでください。架台の場合と同様に、三脚がひ弱だと天体望遠鏡でのぞいた像がユラユラと揺れて、好ましくありません。ひ弱そうなものはそれだけで失格です。逆に、三脚と架台がしっかりしているものはそれだけで合格としてもOKです。(本当に・・・)

 また、三脚を省略した卓上式のものがありますが、固定されていないため軽い衝撃で位置がズレたりするので、つるちゃん的にはおすすめしません。

ファインダー

 ファインダーは目標となる天体の方向へ素早く天体望遠鏡を向けるために取り付けられた小さな望遠鏡のことです。ファインダーをのぞくと、視野の中心に十字線が引かれていたり、赤色の光で印が浮かび上がったりします。ここへ目標の天体を合わせることにより、天体望遠鏡の視野の中へ天体を導入することができるのです。

ファインダーに関しては倍率はともかく、できれば30mm以上の口径が欲しいところです。暗い星まで見えるので、導入するのが楽だからです。しかし、値段の安い天体望遠鏡の場合は難しいこともあり、この場合はあきらめるしかありません。

 また等倍式のファインダーもあります。等倍ですから目で見たそのままの感覚で目的の方角へ天体望遠鏡を向けられるというのはメリットですが、暗い星が見えないのはデメリットです。使用する人によって好みが分かれるところでしょう。どちらにしても、ファインダーがなければ目的の天体を導入することができませんから、天体望遠鏡を選ぶ際にはファインダーにも目を配りましょう。

 もし望遠鏡ショップなどで実物に触れる機会があれば、一度遠くの景色をファインダーで見てみましょう。像が明るくハッキリと見えますか? 明るい昼間に見て像がハッキリと見えないものは、暗い夜間には通用しません。等倍ファインダーの場合は自分の目でのぞいてみて、目標物が合わせやすいかをチェックしましょう。

接眼レンズ

接眼レンズはいろいろな種類があって悩むところですが、粗悪品は使わないのが賢明です。視野が狭い上に像の見え味が悪くなるからです。天体望遠鏡は対物レンズ(反射式とカタディオプトリック式の場合は主鏡と副鏡)と接眼レンズというふたつの光学系で決まることを忘れてはなりません。

 倍率は低倍率(30〜60倍くらい)と、高倍率(120〜200倍くらい)の2つがあれば、大体は事足ります。天体望遠鏡をセットで購入する場合、接眼レンズは低倍率用と高倍率用の2本以上がセットになっているのが普通です。最初はこれで十分ですから、買い足すことは考えなくてもよいと思います。どうしても他の倍率が必要だと思ったら、後から接眼レンズを買い足せばよいのです。ですから、倍率に関してはあまり神経質になる必要はありません。

 接眼レンズを買い足す場合は、他に付属している接眼レンズによる倍率とのバランスを考えましょう。倍率は下の式により求めることができます。

    (倍率) = (天体望遠鏡の焦点距離) / (接眼レンズの焦点距離)

例えば、望遠鏡の焦点距離が1000mmで、接眼レンズの焦点距離が20mmの場合、倍率は50倍となります。

 一言で接眼レンズといっても、いろいろな種類があります。初めての人が最も注意したいのは差込口の大きさです。差込口の大きさは、24.5mm、31.7mm、50.8mmなどがあり、差込み式のものやネジ込み式のものがあります。また、別途アダプターが必要になる場合もありますから、お店の人に相談したり、製造メーカの公式サイトで確認してから購入されるのが無難です。

 接眼レンズの眼を当てる部分がプラスチックでできている場合もありますが、差込口部分までがプラスチックでてきている場合は要注意です。これだけで判断することはできませんが、「とりあえず接眼レンズはついていればよい」というメーカの姿勢がうかがえます。もっとも、最終的には値段との相談になりますが。

 それからバローレンズといって、倍率を2倍にしたり3倍にしたりすることのできるレンズも市販されています。しかし、性能が今ひとつなものが多く、見え味が悪くなるケースも少なくありませんから、あまりおすすめいたしません。

付属品

 セット品の天体望遠鏡を購入する場合、どのような付属品がついているのかを確認しておきましょう。

天頂プリズム ・天頂付近を観測する際に使用
・屈折式では必須
・カタディオプトリック式の場合もあった方が良い
地上プリズム ・正立像が得られるプリズムで地上を観察する際に使用
・反射式は使用できないケースがほとんど
・天体観測にはなくても困らない
付属品ボックス ・接眼レンズなどを収納するボックス
・移動する時や野外での天体観測で重宝
星座早見版 ・星座の位置を簡単に確認できる
・あると便利だがなくてもよい
・別途購入してもよい
レンズキャップ ・何も書かれていなくても普通は付属している
天体観測ガイドブック ・付属するケースもある。あると助かる
・市販の書籍を購入してもよい

コントローラーの例自動導入装置

 初心者やベテランを問わずオススメしたいのが、天体の自動導入装置です。最初にいくつかの星をセットしておくと、目的の天体を入力するだけで、電動で自動的に天体を導入してくれるという非常に便利な装置です。はっきり言って、一度使い出すと元には戻れない優れモノです。

 コントローラーには小さなコンピュータが内臓されており、架台部には電動モーター(自動導入装置専用のモータードライブ)が付属するため、どうしても高価になってしまいます。それから、初心者の方は勘違いしないでほしいのですが、最初にいくつかの星を自分で導入してセットしなければなりませんから、全くの予備知識ナシで自動導入というわけにはいきません。
※右の写真はビクセン製自動導入コントローラーの例です。

その他

 たくさんあるのであまり詳しくは書きませんが、あえてひとつだけ書くとすれば極軸望遠鏡でしょう。赤道儀式の場合で極軸望遠鏡が内蔵されていない場合がありますが、これを買い足すかどうかという話です。極軸望遠鏡があると正確に極軸を合わせることができます。その結果長時間にわたって星を追尾できるので、買い足すメリットはそれなりにあります。ただ、予算的に厳しいなどの理由で迷っている場合は、買わないでそのまま使ってみてください。どうしても必要ならば後で買い足すというのもひとつの手です。 

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天体望遠鏡の価格について

 天体望遠鏡の場合、ある程度倍率を上げて天体観測を行いますので、ちょっとした振動でも倍率の分だけ振動が増幅されてしまいます。つまり、視野が大きくユラユラと揺れてしまうことになります。また、地球の自転によって天体はドンドンと移動していくので、これを追尾していく必要があります。先の説明と重複になりますが、それだけに天体望遠鏡選びでは架台や三脚といったところが重要になります。

 よく天体望遠鏡の激安品を見かけますが、この手のものは微動装置が省略されていたり、三脚や架台がひ弱だったりするケースが見受けられます。これでは長時間にわたって目標の天体を追尾し続けるのは難しいですし、暗い天体を正確に導入するのも骨が折れます。

 本格的に天体観測を行いたいのであればできるだけ多くの予算を用意して、三脚や架台といった基本部分がしっかりしたものを購入されることをおすすめします。

 激安な天体望遠鏡の場合は、月や惑星などの見やすい天体に限定して天体観測をするという割り切りが必要になります。しかし、割り切れるのであれば、激安なものはおトク感があります。

望遠鏡ショップで確認しよう

 すっかり天体観測にはまってしまった人は別として、天体望遠鏡は一生のうちに、そう何度も買い替えるものではありません。それだけにじっくりと選びたいものです。まず望遠鏡のカタログを取り寄せるなどして、自分なりに研究してみてください。その上でお店に出向いて実際に確認すれば、失敗は減るでしょう。専門店なら知識が豊富な店員さんのアドバイスももらうこともできます。

 望遠鏡ショップなどで実機をのぞく機会があれば、ぜひ接眼レンズをセットして遠くの景色を視野に入れてください。ファインダーを使ってスムーズに導入することができますか? 架台の動きはスムーズですか?

 粗悪品でなければ、昼間の景色をパッと見たぐらいでは悪いところに気づかないかもしれません。でもじっくりと落ち着いて見てください。パッと見た時の第一印象は意外と大事です。拡大された景色が視野の端から端までスッキリとキレイに見えますか? 視野の一部がひずんで見えませんか?

 もうここまでくれば、あとはあなたの最終決断ですね。

ここまでお読みいただいて、天体望遠鏡の選び方はわかりまりしたか? 

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目的別 天体望遠鏡の選び方

 天体望遠鏡を選ぶといっても、メーカーや機種は多種多様です。自分の目的に合ったものを選ぶことが最も大切ですね。そこで、目的別にどのような天体望遠鏡を選べばよいのか、そのポイントを解説しましょう。

月のクレーター、木星の縞模様、土星の環を見たい

 多くの方が月や惑星観測を目的に天体望遠鏡を購入されるのではないでしょうか。ですからある意味、この条件を満たすことが求められている最低条件といえるかもしれません。しかしこれだけが目的でしたら、発売されている多くの機種が条件を満たしていると思います。口径の大きさが6cm以上で、付属する接眼レンズを使った倍率が100倍以上あれば、月や木星や土星といった惑星観測をそれなりに楽しむことができるでしょう。惑星は高倍率で観測することが多いので、安定して追尾することができるように、微動装置のついたものを選びましょう。鏡筒の形式は安定した像を楽しめる屈折式のものをおすすめします。

 ここで、注意していただきたいことがあります。それは、あまり安価な天体望遠鏡を選ばないことです。安価なものはコスト削減のために作りが悪く、レンズの研磨状態が悪かったり、本来は金属を使わなければならないところがプラスチックで代用されています。カメラ用として使われる程度の架台と三脚が付属していることも多く、ガタガタしたり、天体を導入するのに手間取ったり、像がにじんだりして、しっかりと落ち着いて天体観測をすることができません。価格は最低でも2万円以上を目安にしてください。

星雲、星団を見たい

 せっかく天体望遠鏡を購入するのだから、美しい星雲や星団を見てみたい。こう思われる方も多いのではないでしょうか。星雲や星団は暗くて淡い天体が多く、どこまで見たいのか、欲を出せばきりがありません。その中でも8等級くらいの大型で明るい天体であれば、存在を確認するだけでしたら6cmくらいの望遠鏡でも見れなくはありません。しかし、できることなら口径が8cm以上のものをおすすめします。というのも、淡い星雲や星団の天体観測では口径の大きさがものをいうからです。

 例えば小さく密集した暗い星の集まりは、小口径では存在すら確認することができません。ところが少し口径が大きくなると、モヤモヤとした星雲状に見えてきます。さらに口径が大きくなると、星の一粒一粒までが分解できて、美しい星団であると認識できるようになります。このように、星雲・星団は天体望遠鏡の口径の大きさ次第ですから、口径の大きさを基準に考えてください。屈折式なら8cm、反射式やカタディオプトリック式なら10cm以上で、価格は3万円から5万円以上が目安となります。口径の大きさのことを考えると、価格的には屈折式よりも反射式やカタディオプトリック式の方が有利です。

もうちょっと詳しく天体観測したい

 惑星や星雲・星団など、もう少し詳しい天体観測をしてみたいという方もおられるでしょう。詳しい天体観測を行うためには、どうしても大きな口径が必要になります。初めて天体望遠鏡を購入されることを前提にすれば、屈折式なら10cm、反射式やカタディオプトリック式なら15cmを目安にしてください。口径が大きくなることで、11等級程度の淡い天体が観測できるようになって、観測対象が広まります。また、分解能が上がることで細かいものを識別できるようになり、惑星の小さな模様をとらえることもできるようになります。入門機とは違ったワンランク上の天体観測を行うことができるでしょう。

 それから、詳しく天体を観測しようとすると、どうしても観測時間が長くなります。その点では経緯台式よりも天体の追尾が楽な赤道儀式のものをおすすめします。モータードライブや自動導入装置に付属する自動追尾機能を使うと観測はさらに楽になりますが、こちらは絶対に必要というものではありません。

 注意していただきたいのは、赤道儀式とは名ばかりな機種もあり、実際に使ってみるとちょっとしたことでガタガタしたり、ユラユラと星が揺れたりすることがあります。値段は正直ですから、あまり安価な機種に飛びつかない方が賢明です。10万円オーバーの価格帯になるのが普通ですが、口径をひとまわり小さくすることで安く収めることができます。

末永く使いたい

 自分はのめり込む性格じゃないから天文マニアにはなれそうにないけれど、いい趣味だし末永く天体観測を続けたい。そんな方がおられるかもしれません。そういう方には入門機よりもチョッピリ性能がいい天体望遠鏡がおすすめです。でも赤道儀式にすると重たくなるので、それだけで天体観測が億劫になってしまいそうですね。ですから、架台は経緯台式がよいでしょう。使用頻度がそれほど多くないことを前提にすると、長く保管しておく場所のことも考えなければなりません。

 以上のようなことを考えると、鏡筒は口径8cmくらいで屈折経緯台式の天体望遠鏡をおすすめします。入門機と比べると観測できる天体数が多くなりますし、見たいと思った時にパッと取り出してスグに観測を開始することができます。価格は5万円前後を目安にするとよいでしょう。 

天体写真を撮りたい

 天体望遠鏡にカメラを取り付けてカッコイイ惑星や美しい星雲の天体写真を撮影してみたい。そんな風に考える方がおられるかもしれません。そんなあなたは天文マニアの卵ですから、最初からしっかりした機種を選ばなければなりません。当然のことながら、天体写真撮影では長時間天体を追尾し続ける必要があるので、赤道儀の架台にこだわる必要があります。

 天体写真撮影を行う場合、ガイドスコープと呼ばれる補助望遠鏡や、補助バランスウェイト、カメラや関連する撮影器具など、重たいものをたくさん載せなければなりません。したがって鏡筒もさることながら、特に架台がしっかりした積載重量に余裕がある、1ランクも2ランクも上の機種を選びましょう。

 例えばビクセン製品でしたら、APシリーズ(積載可能重量 6Kg)ではなく、積載可能重量が大きなSX2赤道儀・PFL(12Kg)やSXD2赤道儀・PFL(15Kg)、SXP赤道儀(16Kg)を選ぶようにします。また、より本格的なAXD赤道儀(30Kg)もありますが、上位機になるほど価格が飛躍的に高くなっていきます。

 それから、鏡筒のF値も大切です。カメラでいうところの絞り値に相当し、焦点距離のミリ数を口径のミリ数で割り算すると求まります。この値が小さいほど短い露出時間で撮影することができて有利です。屈折式なら8以下、反射式なら6以下を目安にしてください。

 天体写真はもちろん自分の腕も必要ですが、ある程度の機材がそろわないと綺麗な天体写真を撮ることができません。どこまで望むかのレベルにもよりますが、機材をそろえるにはそれなりにお金がかかるのも事実です。例えば天体写真マニアご用達のタカハシ製EM−200という赤道儀は、鏡筒なしで40万円前後で販売されています。

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予算別 天体望遠鏡の選び方

 天体望遠鏡の選び方はわかったけど、自分の予算ではどのくらいものを手に入れることができるんだろう? そんな疑問をお持ちの方が多いかもしれませんね。ここではそんなあなたのために、予算別にどのような天体望遠鏡を手に入れることができるのかを見てみることにしましょう。つるちゃんのおすすめもあげておきました。「YAHOO!ショッピング」へ飛びます。

2万円以下

 2万円という絶対的な価格が高いか安いかは別にして、天体望遠鏡としては激安品といえます。口径60mm前後の屈折経緯台式のものが大半です。この価格帯で天体観測用として末永く使いたい方へ積極的にオススメできる天体望遠鏡はそれほど多くありません。三脚、架台に難があったり、微動装置がついていなかったり、ファインダーの性能が不十分だったりするので、目的とする天体の導入に手間取るケースも覚悟しなければなりません。ですから、ある一定レベル以上の天体観測を始めたいと考えている方は、今回は購入を見送って、もう少し予算を確保してから購入されることでもよいでしよう。

 しかしながら、月のクレーターや木星の縞模様、金星の満ち欠けや土星の環をこの目で見てみたいというのが目的の方にとっては、非常に魅力的な価格帯ということができます。購入される際には次の点に注意されるとよいでしょう。

つるちゃんのオススメ

ビクセン製
スペースアイ 600
ビクセン製
スペースアイ 700

YAHOO!ショッピング

※検索文字が文字化けするため、うまく表示できません。
 検索文字を手入力して再度検索してください。

2万円〜3万円程度

 ちゃんとした天体観測を始めたい方にとっては、この価格帯以上がターゲットになります。しかし、初心者の方が初めて購入されれる天体望遠鏡の中でも、超がつく入門機的な位置づけのものが大半を占めます。2万円以下のものと比べると少し価格が高くなる分、全体的に安心感のあるものが多くなります。口径で言えば、60mmから70mmの屈折経緯台式のものが大半を占めます。赤道儀式のものもありますが、赤道儀がひ弱なものが多いため、積極的にお勧めはいたしません。実際に購入される場合には、次のような点に注意してください。

つるちゃんのオススメ

ビクセン製
ミニポルタ A70Lf
ミザール製
ミザール MT-70R
YAHOO!ショッピング

3万円〜6万円程度

 この価格帯になると機種選択の幅が広まり、入門機用としてはしっかりした機種をじっくりと選ぶことができるようになります。屈折式なら80mmクラス、反射式やカタディオプトリック式なら100mmから130mmクラスをねらうことができます。しかしながら、この価格帯になっても、なお経緯台式が中心です。安定感のある赤道儀式の天体望遠鏡を望まれるのでしたら、もう少し予算を確保しておきたいところです。購入のポイントは基本的に2万円〜3万円の場合と変わりません。さらに、この価格帯ならではの次の点に注意してください。

つるちゃんのオススメ

ビクセン製
ポルタU A80Mf
ビクセン製
ポルタU R130Sf
YAHOO!ショッピング

6万円〜10万円程度

 この価格帯は経緯台式入門機と赤道儀式の間にあり、ある意味空白の価格帯となっています。赤道儀式の入門機もないわけではありませんが、やや貧弱なものが多いですから、自分の使用目的に耐えられるかチェックしておく必要があります。経緯台式であれば高級機を狙うことができます。中には自動導入装置が付属するものもありますが、モーターの音がうるさかったりして我慢しなければならないところがあります。購入される際には次の点に注意してください。

つるちゃんのオススメ

ビクセン製
ポルタU ED80Sf
YAHOO!ショッピング

10万円〜15万円程度

 10万円を超える価格は高価と思われるかもしれませんが、本格的に天体観測を行おうとする方にとっては最低ラインの価格帯といえるかもしれません。この価格帯になると、ようやく赤道儀式天体望遠鏡の入門機が圏内に入ってきます。高倍率を用いて長時間の天体観測をしたり、写真撮影を行う方にとって赤道儀はぜひとも必要ですね。赤道儀式の天体望遠鏡を選ぶからには、正確に星を追尾できなければ意味がありません。ですから、できる限りしっかりした堅牢な機種を選んでください。口径も屈折式の場合で80mm以上、反射式やカタディオプトリック式の場合で130mmから150mm程度を選べます。しかし赤道儀は、眼視観測用と思っておいた方が賢明でしょう。

つるちゃんのオススメ

ビクセン製
AP-A80Mf
ビクセン製
AP-R130Sf
YAHOO!ショッピング

15万円以上

 本格的な天体望遠鏡を購入することができますが、ハッキリ言ってピンキリです。口径200mmを超えるもの、しっかりした赤道儀を持つもの、自動導入装置・・・。付属品の組み合わせも考えると本当に多種多様で、価格も上限がありません。それだけに、当たり前のことになりますが、目的をはっきりさせた上で機種選びを行ってください。あなたの目的にピッタリ合ったものを選んでくださいね。

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どこで買えばいいの?

 購入したい天体望遠鏡の候補が決まりましたが、どこにでも売っているというわけではありません。そりゃあそうです。かなりマイナーな商品だけに、店頭にズラリと並んでいるのを見たことがある人なんて、ほとんどおられないのではないでしょうか。それではどこで買えばいいんだろう??? 悩んでしまいますね。天体望遠鏡の購入先を大きく分けると、専門店、光学品取り扱い店、インターネットの3つに分類されます。

天体望遠鏡専門店

 いわゆる望遠鏡ショップです。専門店のいいところは、店頭でいろいろな機種を見比べたり、豊富な知識を持った店員さんの説明や実際の使用感を聞くことができることです。また、直接店頭へ出向かなくても電話で質問することができますし、値引き交渉だって可能です。しかし、日本広しと言えども、天体望遠鏡を幅広く取り扱っている専門店はごく限られています。それだけに、通信販売の形態で購入される方も多いのが実情です。以下ではそれほど多くない望遠鏡ショップの中でも有名どころを2、3紹介しましょう。

協栄産業 SPACE LAND KYOEI

 現在は東京と大阪に店を構えています。関西にお住まいで天文歴の長い方なら、一度はお世話になったことのあるショップではないでしょうか。つるちゃん自身何度もお世話になりました。それというのも、もともと大阪で生まれ育った老舗のショップである上に、かつて、天文誌の1ページ目から10ページ以上も占めるほど大量の広告を出していたからです。天文ファンなら知らない人はいないほど知名度の高いショップといえます。店舗はそれほど広いというわけではありませんが、多くの機種や付属品を取り扱っています。最近では天体望遠鏡に限らず、天体観測所や天体望遠鏡を収納するドームの製作まで手がけています。

STARSHOP

 かつて誠報社とよばれていた東京にある望遠鏡ショップ大手です。その昔に望遠鏡ショップがそれほど多くなかった頃、西の協栄産業に対して東の誠報社といった感がありました。品揃えが豊富で、メーカ完成品の天体望遠鏡はもちろん、オリジナル商品も取り扱います。また、ピント合わせグッズやカメラと望遠鏡の接続装置、デジタルカメラの改造など、天体写真用に独自に開発したパーツや改造品を販売しているのも特徴です。

テレスコープセンター アイベル

 アイベルは三重県津市に店を構える望遠鏡ショップです。「業界随一の広々としたショールーム」というだけあって、広い店内に多くの天体望遠鏡が並べられています。20社以上のメーカを取り扱うなど、品揃えの面でも満足できます。加えてオリジナルパーツも取り扱い、実際の天体観測に役立つ付属品が安く手に入ると好評です。

笠井トレーディング

 独自路線をいく望遠鏡ショップで、輸入物を数多く取り揃えています。マニアがよだれを垂らすアイテムも豊富で、本格的な天体観測者は外せないショップです。はっきり言って初心者向きではありませんが、そのうちお世話になるかもしれませんよ。

光学品取り扱い店

 専門店とは異なり、カメラをはじめとする光学品のオマケとして天体望遠鏡を販売しているショップです。お店の規模にもよりますが、全体的に品揃えが少なく、選択の余地がないケースが多くなります。また、店員さんもそれほど知識があるわけではありません。「望遠鏡は下側からのぞくもの」と思い込んでいるせいか、反射式望遠鏡が地面の方を向いて展示されているという、笑うに笑えないケースも見受けられます。

 光学品取り扱い店は、先に書いたような専門店へ行くことが難しい場合は選択肢のひとつになります。お店の人にこと細かに相談するのは難しいですが、実物を見て購入することができるというメリットがあります。たとえ自分が購入したい機種が展示されていなくても、実際に触ってみることで理解が深まって、他の天体望遠鏡を選ぶ際の参考になります。

インターネット

 近くに適当なお店がない場合、わざわざ望遠鏡ショップへ出向いたら、交通費の方が高くついてしまうかもしれません。そんなあなたが天体望遠鏡を購入するには、インターネットを利用するのが一番です。なじみが薄くてよくわからない天体望遠鏡という商品を買うわけですから、不安があるのは当然でしょう。しかし、インターネットで掲示板を探して実際に使ってみた方の感想を読むだけでも、ずいぶんと参考になります。率直な意見が書かれているケースが多いので、ある意味、最高のアドバイスといえるかもしれません。

 インターネットで購入される場合は、ページ先頭にある「買っちゃおうリンク」や「予算別の所に出てきたリンク」も参考にしてくださいね。当サイトからもすでに多くの方が購入されていますよ。(と、思いっきり宣伝・・・)

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