金星の形を天体観測しよう 2010年7月から10月

宵の明星−金星

 2010年の前半から10月頃にかけて、宵空で輝く一番星は金星です。金星は非常に明るくて、1等星の40倍以上もの光を放ち、どの星よりも明るく見えます。このため金星は、宵の明星や明けの明星と呼ばれ、古くから親しまれてきました。金星は惑星の中で最も明るく光る惑星で、一番明るくなった頃には昼間でも肉眼で見つけることができるほどです。そんな明るい金星ですから、少々夜空が明るい都会からでも簡単に観測することができます。

満ち欠けする惑星

 金星といえば太陽系の第二惑星で、地球のすぐ内側を回る天体であることはご存知のとおりです。金星は地球の公転軌道よりも内側を回る内惑星ですから、夕方か明け方しか見ることができません。また、天体望遠鏡を使うと、満ちたり欠けたりする様子を観測することができます。といっても、いつでも満ち欠けを楽しめるわけではありません。金星が地球と一直線に並ぶ内合と呼ばれるタイミングの前後で金星の形は大きく変化しますが、それ以外のタイミングではあまり変化がないのです。下の絵のように、6月、7月あたりはあまり変化がありませんが、8月から10月にかけて一気に大きく変化することがわかります。

東方最大離角 8月20日 45度58分
最大光輝 9月24日 −4.6等
内合 10月28日

金星の満ち欠け 2010年、10日間隔
満ち欠けする金星

 下の例は2010年10月28日に起こる金星の内合の様子です。内合とは太陽−金星−地球の順に一直線に並ぶことで、地球から見た金星は太陽を背にした裏側から見ることになります。このため新月のように真っ暗な状態になります。また、地球と金星は最も接近していますから、見かけの大きさも最大になります。

一直線に並んだ太陽、金星、地球
内合のようす

日の入り時の位置変化

 下の絵は日の入り時刻において、金星が見える位置がどのように変化するかを表したものです。あわせて金星の形も表示しています。ご覧になるとおわかりのように、7月以降はじわりと高度が低くなっていきます。そして9月に入ると一気に高度が下がります。

 また、形や大きさの面では、7月頃まであまり変化がありません。しかし8月に入ると次第に変化が現れます。そして、9月以降は一気に欠けて細くなり、見かけの大きさも大きくなっていくことがわかります。

位置と形の変化
金星が見える位置

軌道上での位置関係

 下の絵は6月20日から1ヶ月ごとに、公転軌道上で位置関係がどのように変化していくかを示したものです。金星、太陽、地球の順に結んだ直線が作る角度が、次第に小さくなっていくことがわかります。

6月20日

 6月の時点では、金星−太陽−地球が作る角度は大きく開いています。この後、次第に角度が小さくなっていきます。
7月20日

 地球の公転速度よりも金星の公転速度の方が速いため、金星は次第に地球へ近づいてきます。6月の場合よりも角度が小さくなっています。
8月20日 東方最大離角

 8月に入ると角度はさらに小さくなりました。地球から金星の軌道へ向けた接線上に金星がやってきて、地球から見た金星は太陽から最も離れた状態になります。そしてこの頃は半月状に見えます。
9月20日

 9月に入るとさらに角度が小さくなりました。このため、地球から見た金星は三日月状に見えます。また、距離も近づいてきたため、見かけの大きさも大きく見えます。
10月20日

 10月になると、いよいよ角度が小さくなります。これとともに金星は太陽へ近づいていくため、観測が難しくなります。

 10月28日には内合となって角度がゼロになります。内合の頃は地球と金星の距離が最も接近した状態になりますから、見かけの大きさも最大となります。
11月20日

 11月に入ると金星が地球を完全に追い越しました。また、今まで夕方に見えていたのが、明け方の空へまわることになります。

天体望遠鏡で金星を天体観測しよう

  金星の場合、地球へ接近してから次に地球へ接近するまでの会合周期は584日と非常に長いのが特徴です。ですからチャンスを逃してしまうと、1年半以上お預けとなってしまいます。先にも話したように、2010年の場合は10月28日に内合が起こりますから、7月頃から金星を天体望遠鏡を使って観測すると、満ち欠けや大きさが変化していく様子を楽しむことができます。

 このページの最初で示した金星の形と大きさの変化を表した絵は、10日間隔で描いています。これを参考にして金星を天体観測してみましょう。天体望遠鏡で観測する場合、倍率は50倍から100倍くらいが良いでしょう。7月頃は見かけの大きさが小さいため、倍率を少し高い目にした方が形がわかりやすくなります。8月以降は日を追って形や大きさがドンドンと変化していきますから、観測の間隔を少し短めにした方が良いでしょう。9月になると高度が低くなってきますから、地球の大気や雲の影響を受けやすくなります。したがって、観測できる日は確実に観測するのがベストです。

7月は丸みを帯びた形

  7月頃の金星は、まだ丸みを帯びた姿をしています。視直径も20秒を切っていますから、金星としてはあまり大きい方ではありません。地球との距離は0.8天文単位以上ありますから当然かもしれません。日の入り時刻での金星の高度は20度台後半ありますから観測しやすいでしょう。見かけの変化が乏しい時期ですから、2週間に1度くらいの観測で十分です。

8月は半月状

  8月に入ると少し変化が見られるようになってきます。8月20日が東方最大離角ですから、太陽から最も離れて観測しやすいはずなのですが、7月の方が高度が高く、8月の方が観測条件的には良くありません。最大離角頃ということで、金星の形は半月状に見えます。しいて言うなら、8月の前半は半月よりも少し丸みを帯びていますが、20日以降は半月から少しずつ細くなります。

9月は三日月形

 9月の金星は大忙しです。月の前半は半月っぽい形をしていますが、月の後半になると三日月状に変化します。これとともに見かけの大きさも、目に見えて大きくなってきます。観測する間隔を少し短くして、10日から1週間に1度くらい観測するのが良いと思います。9月24日には最大光輝を迎え、−4.6等と最も明るくなります。月末になると視直径が40秒を超えてきて、ずいぶん大きくなったことが実感できるでしよう。

10月は内合で細い金星

 夕方の金星観測も終盤です。観測を初めた頃と比べると、大きさが3倍から4倍以上に大きくなります。形の方も三日月からそれよりも細くなり、下旬になると糸のように細い金星を観測することができます。内合になる10月28日が近づくと、糸のように細い金星をねらって日中に天体望遠鏡を金星へ向けられる方もおられるでしょう。この場合、金星が細くなるほど太陽から近い位置にやってくるため、誤って太陽を視野に入れないように細心の注意を払ってください。

最後に・・・

 いろいろ書きましたが、一番大事なのは続けて金星を観測することです。飽きないようにがんばってくださいね!

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