日の入り頃にスピカ食 2013年8月12日

 2013年8月12日の夕方、スピカが月に隠されるスピカ食が起こります。秋田県と岩手県を結んだラインよりも南の地域でスピカ食を観測することができますが、北海道などの北日本では残念ながら食になりません。偶然ですがこの日の夜は、ペルセウス座流星群が極大となりますから、この機会にぜひ夜空に目を向けましょう。

スピカ食とは

 スピカは、おとめ座で輝く1等星です。スピカの意味は穂先ですがその名のとおり、ギリシャ神話に登場する農業の女神デーメーテルが持つ麦の穂の穂先に位置します。また日本では、真珠星といわれるほど美しい星です。このスピカが月によって隠される現象がスピカ食です。スピカが月に隠されて、そして再び現れるようすを想像しただけでもワクワクしますね。

南西の明るい空でスピカ食が起こる

ちょっと珍しい天文現象

 月が恒星の上を通り過ぎるのは珍しいことではありません。しかし1等星が隠されるとなると、そんなに多くは起こりません。月の通り道の近くにある1等星は、レグルス、スピカ、アンタレス、アルデバランの4個しかないからです。日本で前回スピカ食が見られたのは2006年6月7日のことですから、今回は7年ぶりの現象となります。

夕方の明るい時間帯にスタート

 2013年8月12日のスピカ食は夕方の明るい時間帯に起こります。条件的には日の入りの時間が早い東の地域ほど有利になります。例えば東京の場合だと、スピカが隠れるのは日の入りから14分後の話ですが、西に位置する福岡あたりだと、日の入りよりも40分前の天文現象になります。いずれにしても周囲が明るいですから、スピカが明るい1等星といっても、肉眼で観察するのは難しいでしょう。スピカが月の縁に隠れるようすを天体観測しようと思ったら、天体望遠鏡か双眼鏡が必要になります。

各地の見え方

 下の図はスピカ食が起こる際、月に対するスピカの経路を表したものです。札幌、仙台、東京、金沢、大阪、広島、福岡、那覇での見え方を示しています。図の上側が北になるように描画するのが慣例で、そのようになっています。実際に見られる場合は上側が天頂になりますから、見え方が異なる点に注意してください。

 少しわかりづらいですが、18時30分にスピカが見える位置を、小さな白い丸印で示しています。南に位置する那覇では星食中ですが、他の地点ではまだ食が始まっていません。北に位置する札幌では食とならず、月の縁に大接近するにとどまります。

日本各地で月に対するスピカの経路

 潜入と出現の時刻および、月の高度を下表に示します。略算ですので時刻に数分のズレがあるかもしれませんがご容赦ください。見え方を示す図も用意しましたので、リンクから参照してください。

観測地 潜入 出現 日の入り
時刻 高度 時刻 高度
仙台 18:54 22度 19:14 19度 18:34
東京 18:48 26度 19:25 20度 18:34
大阪 18:40 30度 19:24 23度 18:50
福岡 18:28 36度 19:22 28度 19:08
那覇 18:22 44度 19:38 31度 19:08

潜入するようす

 月は恒星に対して西から東へ日々移動している関係で、スピカは月の東側から潜入します。潜入とは星が月に隠される瞬間のことです。スピカは恒星で面積がありませんから、月の縁に近づいた後にパッと消えてしまいます。今回は月の暗部へ潜入します。暗部といえども天体望遠鏡で月を拡大すると、丸い月縁がほんのりと浮かび上がっていますから、月の端がどこにあるか迷うことはありません。

出現するようす

 潜入とは逆に、星が月の縁から現れる瞬間を出現といいます。出現は月の西側で起こります。スピカは月の縁からパッと現れて、突然輝き始めます。今回の場合は月の明部から現れます。月とスピカとの明度差が大きいことから、少し観測がしづらくなります。

次回のスピカ食

 次回に東京で同現象が見られるのは2024年8月10日で、11年後のことになります。この時も今回と同じような経過をたどりますが、食の開始時間が遅いため、暗夜でスピカ食を楽しむことができそうです。

2024年のスピカ食(東京の場合)

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