皆既日食の継続時間が長い理由

長い皆既継続時間

 2009年7月22日トカラ列島皆既日食で最大食となるのは、硫黄島の東海上280Km付近です。この地点では皆既の継続時間が6分39秒にも達し、「世紀の皆既日食」となります。トカラ列島あたりでも6分を超えますが、通常だと5分を超えれば素晴らしい皆既日食の部類に入りますから、今回の皆既継続時間は特筆すべき長さといえます。

太陽から遠い地球

 これにはいくつか理由がありますが、理由のひとつに、地球が太陽から遠い地点にいることが挙げられます。「えっ。夏なのに地球は太陽から遠いところにいるの?」といわれそうですが、そんなことはありません。南半球では冬なわけですから・・・。
 
 地球は太陽のまわりを回っていますが、ほんの少しつぶれた楕円軌道を回っています。このため、太陽に近づく地点と太陽から遠ざかる地点があります。太陽から最も近づくのは1月上旬(2009年の場合は1月5日0時)で、最も遠ざかるのは7月の上旬(2009年の場合は7月4日11時)です。
 
 地球が太陽に近づけば太陽の見かけの大きさが大きくなります。逆に、太陽から遠ざかれば太陽の見かけの大きさは小さくなります。これは当たり前ですね。今回の日食は太陽から最も遠ざかった7月4日に近く、そのため太陽が小さく見えるので、月が太陽を覆い隠すのに有利に働いています。

地球に近い月

 一方、日食が起こる要因のひとつに月の距離があります。地球が太陽のまわりを回るのと同じように、月は地球へ近づいたり遠ざかったりしながら地球のまわりを回っています。
 
 下の絵は2009年7月の月齢カレンダーをつるちゃんの天文カレンダーを使って表示させたものです。よく見ると7月22日は、「月が最近」と書かれています。つまり、月が地球へ最も接近した状態にあるので、月の大きさは最も大きく見えます。月が大きく見えるということは、それだけ太陽を覆い隠すのに有利に働き、トカラ列島の皆既日食で皆既継続時間が長い理由の最も大きな要因となっています。
 
7月22は月が地球へ最も接近する新月

太陽と月の高度

 今度は皆既日食になった時の太陽と月の高度に注目しましょう。硫黄島の東280Km、北緯24度13.2分、東経144度07.0分の地点で食の最大となりますが、この時の太陽高度は86度になります。ほとんど頭の真上ですね。

 太陽の位置(皆既日食なのでイコール月の位置)が、地平線近くにある時と、頭の真上近くにある時とでは、地球と月の距離は地球の半径分だけ変化します。つまり、頭の真上にある時の方が、月と観測点の距離は地球の半径分だけ近いことになり、その分だけ月の見かけの大きさが大きく見えます。ですから、皆既日食に有利になるのです。

 よくわからないけど、太陽が頭の真上にあると太陽との距離も近づくんじゃないの? そう思われるかもしれませんね。実はその通りなのですが、地球と太陽との距離は月との距離に比べて非常に遠いので、地球の半径分ぐらい近づいたところで、太陽の見かけの大きさにはあまり影響しないのです。

まとめ

 ということで、今回の皆既日食で皆既継続時間が長くなる理由は3つあります。

 今回はこれらの要因が重なって太陽が小さく見えて月が大きく見えるため、皆既日食の継続時間も長くなるというわけです。

皆既日食の継続時間地図