日食を撮影しよう

 部分日食は数年に一度の割合で起こっており、比較的シャッターチャンスに恵まれています。しかし2012年金環日食のような大きな日食はたびたび起こるものではありません。以下をお読みになり、失敗のない撮影に向けて準備しましょう。日食特設サイト日食ナビの日食撮影の各ページもご覧ください。

NDフィルターを使用

 日食中とはいえ、太陽光が強烈であることに変わりはありません。たとえ食分が0.9を超えてきて金環日食になっても同じことがいえます。カメラ側でどんなにがんばって設定を変更してみたところで、完全に露出オーバーになってしまうのです。ですから日食撮影ではNDフィルターをつけて太陽光を減光する必要があります。

望遠レンズを使おう 

 日食撮影で最も簡単な方法は、デジタル一眼レフカメラとNDフィルターを組み合わせることです。レンズの焦点距離によって太陽像の大きさは違いますが、超広角レンズでない限り、太陽が欠けた様子程度なら簡単に写すことができます。

 しかし35mm判フィルム換算で、300mmから400mm程度の望遠レンズがあると、大きくハツキリと日食中の太陽を写しだすことができます。これはデジタル一眼レフカメラで最も普及しているASP-Cサイズの場合だと、180mmから250mmに相当します。仮に望遠レンズがなくても、セット物で付属しているズームレンズを使って望遠側で写すだけでも、写り方はだいぶ違ってきます。

金環日食の撮影 

  金環日食になると周囲が薄暗くなってきて、気温も低下してきます。動物も夕方になったと勘違いして、行動に変化が現れることもあります。そういう意味では金環日食によって、太陽の光量が大きく減少しているのは間違いありません。しかし写真撮影する立場から言うと、金環日食は普通の部分日食と同じです。リングの部分から強烈な太陽光が、少なからず地表に降り注いでいるからです。

 金環日食中の太陽光は予想以上に強烈ですから、NDフィルターをつけたままにしておくのが基本です。皆既に限りなく近い金環日食では、フィルターを外した方が良い場合もありますが、ケースとしては少ないでしょう。フィルターを外して撮影する場合は目をやられないように最新の注意を払う必要があります。

ベイリービーズの撮影 

  ベイリービーズの際も金環日食中と同様に、NDフィルターは取り付けたままにしておきます。このことは望遠レンズで撮影する場合も、天体望遠鏡を使って拡大撮影する場合も同じです。

 ベイリービーズの場合、適正露出よりもやや多い目の露出時間をかけた方が、小さなベイリービーズを写し出せるといわれています。適正露出の4倍くらいを目安にしてください。しかしこの場合は太陽本体は露出オーバー気味になってしまいますから、加減が難しいかもしれません。ビーズとなる光源の明るさがまちまちであるため、露出時間を多段的に変えて撮影しておいた方がよいでしょう。カメラが自動的に露出を段階的に変えながら撮影してくれるオートブラケッティング機能を積極的に使いましょう。

 またベイリービーズは、ほんの数秒の間にも見え方が大きく変化します。できるだけ小刻みに撮影しておきたいとところです。

フルオート撮影

 太陽の写し方は人それぞれですが、一番簡単なのはオート撮影です。なかでも一般の方が通常の撮影シーンで最もよく使われるのはフルオートです。日食撮影の場合でもこれで特に問題ありません。

絞り優先

 フルオート撮影もいいけど、絞りくらいは自分で決めたいという方は、絞り優先のオート設定としてください。「Av」などのポジション設定がそれに当たります。絞り優先にすると絞り値を自分で決めることができますが、シャッター速度は自動でカメラ側が決定します。

シャッタースピード優先

 シャッタースピードを自分で決めたい方は、シャッター速度優先のオート設定でも結構です。「Tv」などのポジション設定がそれに当たります。シャッター速度優先にするとシャッター速度を自分で決めることができます。そのかわり絞り値は、カメラ側にて自動で設定されます。

スポット測光

 オート撮影する場合にぜひともお願いしたいのは、測距点を画面中央とし、測光方式を中央のスポット測光に設定変更することです。

 通常は視野全体をみてピント位置や露出時間が決定されます。これを上記のような設定へ変更することにより、視野の中央部分だけをみて、ピント位置や露出時間が決定されます。つまり、カメラ側で太陽に狙いを定めてもらうことができるのです。といっても中央部に太陽がないと意味がなくなりますので注意してください。

試し撮りと露出補正

 設定が終わったら太陽を中央に持ってきて、一度試し撮りをしてみてください。露出が適切でない場合は、EV値を変えることによって露出補正を行います。EV値をプラス側にすると明るく写り、マイナス側にすると暗く写ります。

マニュアル撮影

 カメラの扱いに慣れた方なら、マニュアル撮影でも結構です。「M」などの設定が該当します。マニュアル撮影なら太陽に雲がかかった時などの状況変化に対し、自分の勘と経験を活かして柔軟に素早く対応することができます。

ライブビューを使ってピント合わせ

 実際に撮影される場合はライブビュー機能を使います。最近発売されているデジタル一眼レフカメラなら、たいていこの機能がついていますから大丈夫でしょう。これを使ってピントが正確に合っているかを確認します。もしライブビューが使えない場合は、ファインダー越しに確認してください。

 オートフォーカス(AF)でピントが合わない場合は、マニュアルフォーカス(MF)に切り替えて、手動でピントを合わせます。太陽は非常に遠い距離にありますから、焦点位置を無限遠(∞、数字の8の字を横倒しにしたような記号)に合わせることでもかまいませんが、微妙にズレていることがあります。自分の目でピントを確認した方が確実でしょう。

露出を変えて何枚か写す

 オート撮影でもマニュアル撮影でも共通していえることですが、写真は必ず露出時間を変えながら、何枚か写しておかれることをおすすめします。ファインダーや液晶モニタ上では十分と思っていても、後で確認すると露出アンダーであったり、露出オーバーであることがよくあるからです。カメラ側で自動的に何段階か露出を変えながら撮影してくれるオートブラケッティング機能がある場合は、これを使うのもひとつの手です。

肉眼で見ないこと

 日食を見たいばかりに肉眼で直接太陽を目視するのは非常に危険です。失明の恐れもありますから、絶対に行わないようにしてください。また、NDフィルターごしに観察するのも危険です。というのもNDフィルターの大半は、眼視観測を想定しておらず、あくまでも撮影用として製作されているからです。構図決めする程度なら問題ありませんが、長く見続けるのは目を痛めてしまう恐れがあります。構図を確認する場合もライブビューを使って、液晶モニタを通して確認するのがよいでしょう。


つるちゃんのプラネタリウム 日食撮影