日食を楽しもう

 日食は太陽が欠けて見える天文現象ですが、皆既日食でも金環日食でも部分日食でも楽しみ方はさまざま。ここでは日食の楽しみ方を一挙にお教えします。太陽を減光しようのページを読んだ上で、ぐれぐれも目をやられないよう、十分に注意してください。

太陽が欠けた方向を観測しよう

 日食といえば太陽が欠けて見える天文現象ですから、とりあえず太陽が欠けていく様子を楽しみましょう。日食の開始時間になると、月の縁が太陽の前面にかかり始め、太陽が欠け始めます。実際に肉眼で確認できるのは1分くらい経ってからでしょう。ほんのちょっぴり欠けた太陽というのも意外と面白いものです。
 
 食が進むにつれて、太陽が欠けた方向が少しずつ変わってきます。10分くらい間隔を置いて連続して観測すれば、太陽が欠ける方向が少しずつ変わっていることを実感していただけるでしょう。

形の変化を観測しよう

 食分が小さい場合は太陽の縁が少しだけ欠けた日食となります。食分が大きくなると、三日月のように細くなった太陽を見ることができます。いずれにしても、太陽が欠けるなんていうことは日食以外では考えられません。特に食分が0.8を超えるような大きな日食は、そんなにたびたび起こるものではありません。さらに皆既日食や金環日食となると、一生に一度見られるかどうかといったレベルの話になります。日食の進行とともに太陽の形もどんどんと変化していきますから、その変化を最後までじっくりと楽しんでおきたいものです。

太陽黒点を観測しよう

 肉眼ではむずかしいですが、天体望遠鏡で太陽表面を観測すると黒点が見られます。黒点は周辺よりも温度が低いため黒く見えます。2008年から2009年にかけてのように、太陽活動が極小期になる頃だと、ひとつも現れないこともありますが・・・。
 
 当然ですが、日食の際には太陽黒点も黒い月によって隠されます。この様子を観測すると、月が少しずつ太陽を食していることを実感できて、なんとも言えない妙な感動を覚えます。
 
※くれぐれも減光対策だけはしっかりお願いします。

木漏れ日に注目しよう

 太陽を減光しようのページでも紹介していますが、日食中に木漏れ日に注目すると、木々の葉と葉の隙間がピンホールの役目をして、地面に欠けた太陽の形がいくつも映し出されているのがわかります。上の方ばかり見ていると首が疲れますから、たまには下を向いて、木漏れ日にも注目してみるとおもしろいでしょう。

影のぼやけ方に注意しよう

 日食が進んで食分が次第に大きくなると、地面に映った影にも変化が現れます。通常だと影のぼやけ方は対称ですが、日食が進むと影のぼやけ方が非対称になります。太陽が欠けた方向によってはわかりにくいこともありますし、注意して見ないとわかりづらいですから、よく観察してくださいね。

空の明るさに気をつけよう

 食分が大きな日食の場合、日食が進むにつれて空が次第に暗くなってきます。食分が0.6を超えてきたあたりで、多くの人が空が暗くなってきたことに気づくと言われています。あなたは食分いくつで気づくかな? 空の明るさについては、食分と空の明るさのページもご覧ください。

気温の変化を感じよう

 日食が進んで太陽が欠けてくると太陽からの光量が少なくなり、次第に日差しが和らいできます。それとともに、気温も少しずつ低下します。季節や太陽の高度、時間帯、地形などの要素がからむので、一概に気温が何度低下するとは言えませんが、気温が低下することは確かなようです。皆既日食が起こる時には急に肌寒くなることもあるぐらいですから、日食を目だけでなく肌でも感じ取りましょう。

動物の反応を見よう

 食分が0.7を超えるような大きな日食では、動物の行動にも変化が現れます。夕方になったと勘違いしておとなしくなったり、夜行性の動物が活動をはじめたりすることがあるのです。鳥が巣へ戻っていったり、犬が遠吠えしたり、夜の昆虫が鳴き始めたり・・・。日食との因果関係を証明するのは難しいですが、こんな動物たちの行動にもちょっと注意を向けてみましょう。

シャドーバンド

 食分が1に近づいていよいよ皆既日食が目前にせまってくる頃になると、地表面に細かな縞模様が小さく小刻みに動いて見えることがあります。これはシャドーバンドと呼ばれる現象ですが、必ずしも皆既日食のたびに見られるわけではありません。非常に淡くて見づらい現象なので、地面に白いシートを敷いたり、白い建物の壁などを利用すると見やすくなります。見ることができたらもうけもの。皆既日食を見られる方は一度挑戦してみてください。

ダイヤモンドリング

 皆既日食が始まる第二接触の直前と、皆既日食が終了する第三接触の直後に見られる現象です。月の谷間から太陽の光が漏れる時、黒い太陽の端にダイヤモンドが光るように美しく見えることからこのように呼ばれています。ダイヤモンドリングはおよそ30秒ほど継続します。写真を撮られる方は間際の15秒間くらいが勝負ですから、この瞬間を逃さないようにしなければなりません。

ベイリービーズ

 皆既日食や金環日食の際に欠け際ギリギリのところで、月の谷間から何箇所かとぎれとぎれに太陽の光が漏れると、数珠玉のように光の列が見られることがあります。これをベイリービーズと呼んでいますが、皆既日食や金環日食のたびに毎回見られるわけではありません。太陽と月の見かけの大きさが同じに近い、言い換えると食分が1に近い日食の場合に見られやすいと言われています。

本影錐

 皆既日食では太陽の方へ視線が釘付けになってしまいますが、ちょっと太陽の周辺にも目をやると面白い現象を見ることができます。そのひとつに本影錐があります。皆既日食となる直前に月の黒い影が西の方から太陽の方へスーッと忍び寄ってくるのがわかりますが、これを本影錐といいます。皆既日食が終わった直後も同様に、太陽から東の方へ本影錐が離れていきます。
 
 本影錐の中に入ると皆既日食が見られますが、視界からみえる範囲の全てが本影に入っているとは限りません。本影から外れた部分は地平線方向が明るく見えますから、この点にも注意しまょう。

プロミネンス

 特殊な装置を使わない限り、皆既日食でしか見ることのできないもののひとつにプロミネンスがあります。プロミネンスは紅炎とも呼ばれるように、太陽から炎が舞い上がっているように見える現象です。プロミネンスは地球をすっぽりと包み込むほど大きなものですが、見かけの大きさは小さなものです。ですから、これを観測するためには双眼鏡くらいは必要になります。
 
 プロミネンスは太陽表面を取り巻く赤い彩層とプロミネンスの対比は非常に美しいものですから、ぜひとも自分の目で見ておきたいものです。
 
 プロミネンスは皆既日食が始まった直後か終了する直前にしか見ることができませんから、このタイミングを見逃さないでください。皆既日食が終了するタイミングで観測する場合は、皆既が終了して太陽光で目をやられないよう、十分に注意して観測しましょう。

太陽コロナ

 プロミネンスと同様に、皆既日食でないと見ることができないのがコロナです。太陽の表面温度が6千度であるのに対し、コロナの温度は百万度もありますが、どうしてこのような高温なのかは解明されていません。
 
 肉眼でわかるコロナの広がりは、太陽視半径の5倍くらいのところまでです。その広がり方は太陽の活動状況によって異なります。太陽活動が活発なときは全方向へ均一に広がりますが、太陽活動が活発でないときは、太陽の赤道方向にしか広がらないといわれています。
 
 コロナを倍率の高い双眼鏡や天体望遠鏡で拡大すると、フィラメント構造をした細い筋が何本も見られ、非常に美しい眺めとなります。
 
 コロナの明るさは太陽に近い部分と周辺部とでは、明るさの違いが千倍もあります。ですから、写真撮影をされる場合はどのような露出にしてもそれなりに写りますが、自分の思い通りのベストショットを得るためには、露出を変えながら何コマか撮影しておかれた方が良いでしょう。