火星が地球へ小接近 2010年1月28日

火星が地球へ近づく

 火星はおよそ2年と2ヶ月ごとに地球との接近を繰り返しています。前回の接近は2007年12月19日でしたから、今年2010年は火星接近の年に当たります。下の絵は2010年1月29日の太陽系の様子です。これを見ておわかりのように、火星の軌道は太陽を中心とした円軌道ではなく、少しいびつで中心がずれています。このため、接近時における地球との距離は一定ではありません。2010年の接近では太陽から遠い位置での接近となりますから、地球との距離が遠い、いわゆる小接近となります。

火星の見つけ方

 下の絵は地球へ最接近となる2010年1月28日の21時頃、東の空のようすです。火星はほぼ真東に見え、空の中ほどよりもやや高い位置にあります。星座でいえばかに座になりますが、かに座は明るい星が少ないため、空が明るい街中からだと、ほとんど形をつかむことはできないでしょう。それではかに座をどのように探せばよいのかというと、ふたご座のカストルとポルックスという明るいふたつの星と、しし座の1等星レグルスの中間付近に位置します。なになに、よけいにわからなくなった? そんなややこしい話をするよりも、火星自体が−1.3等と非常に明るい上に、不気味なくらいに赤い光を放っていますから、東の空で際立って明るく光る赤い星を探すのが良いでしょう。

火星の明るさ

 次のグラフは火星の明るさの変化をしめす光度曲線です。2009年11月下旬から12月上旬にかけて0等を突破し、マイナス等級へ突入します。その後も明るくなり続け、2010年1月28日の最接近前後には−1.3等に達します。−1.3等といえば、全天で最も明るい恒星であるシリウスに匹敵します。それでも小接近というだけあって、火星の明るさとしては少し物足りません。例えば世紀の大接近と騒がれた2003年には−2.9等まで明るくなりました。その後は次第に暗くなっていき、3月下旬頃にはマイナス等級から脱落します。

移動する火星

 火星はもちろん惑星のひとつで、太陽系の第4惑星です。太陽の周りを回る速度が速い地球が、速度の遅い火星を追い越す際に今回の接近が起こるのですが、このとき地球から見た火星は、かに座を背景にして宙返りをするような動きを見せます。下の絵でいうと、通常は右から左へ移動している(順行といいます)のですが、いったん動きが止まり、今までとは逆の方向へ動いていきます(逆行といいます)。そして、地球との最接近を迎えます。その後もしばらく逆行しますが、再び動く向きを変えて、いつものように右から左へと順行するようになります。

経路の概略図


経路の詳細図

表面模様を観測しよう

 今回の接近は小接近ということもあって、火星の大きさはあまり大きくなりません。最大の頃でも7秒あまりしかなく、木星の3分の1にも満たない大きさです。ですから小型の天体望遠鏡では細かい表面模様の天体観測を行うのは難しいでしょう。しかしそれでも大きな模様なら観測することができます。一番模様が濃くて観測しやすいとされる大シュルティスは、21時頃なら1月21日をはさんだ前後3日間くらいが良いでしょう。大シュルティスが火星の中央付近にやってくるので観測しやすくなります。

 火星の表面は、模様が濃い側と薄い側があります。薄い側を観測してもあまり模様を観測することができませんので注意してください。また、自転周期が地球と似ていますから、翌日同じ時刻に観測しても、模様の見え方に大きな変化はありません。別の模様を観測したい場合は、時刻をずらすようにします。

 小型の天体望遠鏡でもうひとつ天体観測してほしいのは極冠です。極冠は極地方にあるドライアイスのようなもので、白く輝きます。全体的に赤っぽい色をした火星にあって、白く輝く極冠は観測しやすいのです。2010年の最接近頃は、火星でいうと晩春にあたります。やや北半球寄りが地球方向へ向いていますから、次第に縮小していく北極冠を6月頃まで観測することができます。

21時を基準にした模様の移り変わり

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