ハートレー第2彗星と冬の星座、観測絶好機に 2010年10月後半

 ハートレー第2彗星は引き続き天の川に沿って移動します。地球との最接近や近日点通過というイベントをひかえ、明るさもピークに達します。ただ残念なのは、大きな月明かりに悩まされそうなことです。月のない時間を見計らって観測することで対処しましょう。

10月16日−速まる移動速度

 カシオペア座、ペルセウス座と移動してきたハートレー第2彗星ですが、ここへきて移動する速度が次第に速まってきます。それというのも、10月21日に地球との最接近をひかえていることから、両者の距離が次第に縮まってきており、それとともに見かけ上の動きが速まっているのです。

 下の星図は10月16日北東の空の様子です。10月前半のページから読まれている方は、時刻が21時となっている点に注意してください。3日前の13日にペルセウス座のα星ミルファクの近くを通り過ぎましたが、16日には早くも勇者ペルセウスの足元あたりまで移動しています。

 この日、ハートレー第2彗星を見つけるためには、まず低い位置で黄色に輝くカペラを見つける必要があります。カペラは1等星よりもさらに明るい0等星に分類される明るい星です。都会の夜空からでもわけなく見つけることができるはずです。そこから上方に見えるペルセウス座のα星ミルファクを見つけてください。ミルファクは2等星ですからカペラよりも暗い目ですが、他の星よりはだいぶ目だっています。3日前にハートレー第2彗星が近づいた星ですから、ご覧になられた方は、すぐにおわかりでしょう。

 さて、カペラとミルファクが見つかったところで、この2星の中間付近に目を向けてください。都会の夜空からだとまず無理ですが、田舎の暗い夜空では、小さくぼんやりと光るハートレー第2彗星が見えるかもしれません。肉眼で見えない場合でも、予報で4.7等まで明るくなっているだけに、双眼鏡を使えば見つけられるでしょう。もしかすると尾の存在が確認できるかもしれませんよ。

 この日は月齢が8.7で、半月よりも太った月明かりがあります。できれば月が沈む夜半過ぎに観測した方が良いでしょう。念のため、1時頃に見える星図も用意しておきました。見える高度や星座の傾き方が違っている点に注意してください。 

10月16日21時の位置


10月17日1時の場合 北東の空を大きく見上げ、まず明るいカペラをつみけよう!

10月19日−カペラに接近

 いよいよ地球との最接近をひかえた前日、ハートレー第2彗星はカペラに最も近づきます。一般的に彗星は暗くて淡いものですから、普段はなかなか見つけるのが大変です。しかし19日は近くにぎょうしゃ座の0等星カペラがいますから、苦労することなく探し出すことができます。

 この日の月齢は11.0です。東京での月没時刻は2時6分ですから、ここから空が明るくなり始める4時25分までが天体観測に適した時間帯になります。下の星図は10月19日4時の場合です。北西の方角を向いて大きく天頂付近を見上げてください。黄色くてひときわ明るい0等星のカペラが目にとまります。この星を双眼鏡の視野に入れましょう。

 少し左下の方へ視野をずらすと、4等台半ばの明るさでぼんやりと光るハートレー第2彗星を見つけることができるでしょう。角度にして3度ちょっとしか離れていませんから、視野の広い双眼鏡なら同一視野で十分とらえることができます。またこの日は、ぎょしゃ座ε星アルマーズ(3.0等)が重なって見えるほどに接近していますので、こちらも見逃さないようにしてください。

 時間帯が時間帯だけに人工の光が少なくて、普段よりも見つけやすいはずです。もしかすると尾が見えるかもしれませんので、カペラと反対方向に伸びているかどうかも確認してみてください。 

10月19日4時の位置

10月21日−地球と最接近

 10月21日はハートレー第2彗星と地球が最接近します。この日は別ページで解説しましたので、そちらをご覧ください。
 ハートレー第2彗星が地球へ最接近

10月21日から23日−ぎょしゃ座の散開星団へ近づく

 21日に地球との最接近を果たすハートレー第2彗星は、同日から23日にかけて、ぎょしゃ座にある3つの散開星団へ接近します。21日はM38、22日はM36、23日はM37といった具合に、日替わりで次々と近づきますから、観測していて楽しいでしょう。また、天体写真撮影の良い被写体になります。特に23日はM37と大接近といってもよいくらいに近づきますから外せません。

 残念ながら23日が満月ですから、大きくて明るい月が夜空を一晩中照らします。暗夜で天体観測できる時間帯はほとんどありませんが、例として23時頃の星図を掲げてみました。真東から少し北寄りの空を見上げて、空の中ほどをご覧ください。例によって黄色い色をした0等星のカペラがすぐに見つかります。同じような高度に、おうし座のアルデバランもありますが、カペラよりも少し暗い1等星である上に、こちらはオレンジ色をしていますから見分けがつきます。

 カペラを一つの頂点として右側から下方向にかけて大きな五角形を作ると、これがぎょしゃ座になります。ハートレー第2彗星はぎしょしゃ座の五角形の中央から下側あたりに見えます。彗星は日を追うごとに下の方へ移動していきますから、日によって見える位置が変わることに注意してください。念のため詳細な星図も掲げておきましたので、彗星観測をする際の参考にしてください。(若干位置にズレが生じるかもしれませんがご容赦ください。) 

10月22日23時の位置


ぎょしゃ座の散開星団と彗星の経路 拡大図

10月29日から30日−明るい星との接近はこれが最後

 ハートレー第2彗星は相変わらず速い速度で星座を移動しています。10月25日頃にぎょしゃ座からふたご座へ移った後、10月29日から30日にかけて、ふたご座γ星アルヘナに近づきます。この星は2等星で明るい星との接近はこれが最後になりますから、見逃さないようにしてください。23時という時間に固定すると、両者が最も近づくのは29日です。しかしこの日は、半月よりも太い月がすぐ近くにいるので観測しづらいでしょう。そんな理由から、下には30日の星図を掲げました。

 ハートレー第2彗星とγ星が接近するのを観測するためには、月が昇るまでの時間が勝負です。30日東京の場合、月の出は22時59分。下の星図は22時30分ですから、月が昇るまで30分しかありません。もたもたしている時間はありませんから、少し早いうちにふたご座の位置を確認し、探し始めるようにしましょう。

 夜空に慣れていないけどハートレー第2彗星を見つけたい。そんなあなたは、まずふたご座にある明るい2つの星を見つけてください。下の星図のように22時から23時頃、東の空からやや北より(左側)の低い位置に目をやると、2つの明るい星が縦に並んでいるのが目にとまります。これが双子の兄弟、カストルとポルックスの頭になります。これらの星から右の方へ視線をずらしていくと、先の星よりも少し暗い目の2等星が見つかります。これがふたご座のγ(ガンマ)星です。もっと右寄りに見えるオリオン座にある赤い1等星ベテルギウスとの中間あたりといってもよいでしょう。わかりますか?

 さて、ふたご座γ星が見つかったところで、この星を双眼鏡の視野に入れましょう。すると、γ星から下側へ少し離れたところに、ぼんやりした小さな雲の切れ端のような天体が見つかります。これがハートレー第2彗星です。やった〜! と感激しているうちに月が昇ってきますから、「あせらず、でもじっくりと」彗星の天体観測に専念してくださいね。
 

10月30日23時の位置

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