ハートレー第2彗星が地球へ最接近 2010年10月21日

 2010年の秋、ハートレー第2彗星が天体観測の大きな目玉となります。彗星としては地球へ大きく近づき、肉眼彗星となって話題となることでしょう。中でも10月21日は地球へ1770万Kmまで近づいて最接近となります。この頃には明るさも4等台半ばまで明るくなると予想されており、田舎の夜空からは肉眼で彗星を確認することができるでしょう。そんなハートレー第2彗星を、ぜひあなたにも見つけていただきたいと思います。

地球とハートレー第2彗星の位置関係

10月21日4時の場合

 下の星図は10月21日4時頃、東京から見た夜空を天文ソフト「つるちゃんのプラネタリウム シェア版」で描いたものです。この日はハートレー第2彗星が地球へ最接近する日ということもあって、彗星の明るさは4等台半ばまで明るくなっています。条件的にはベストな状態といえます。

 ただ、一つ残念なことがあります。それは、この日は十三夜月の翌日だということです。月があった方が天体観測は楽しくなると思われるかもしれませんが、月明かりは天体観測の妨げになります。特に彗星のような淡い天体は、月明かりがあると、その強烈な光によって一気に見づらくなってしまいます。東京の場合、21日前日の月の出は15時16分、月の入りは3時57分ですから、ほとんど一晩中月が夜空を照らすといっても過言ではありません。そこで当サイトでは、月が沈んでから夜明けまでの間に観測することをオススメします。もちろん事情が許せばということですが・・・。そんなこともあって、下の星図は朝4時の夜空を掲載しました。

10月21日4時の位置

 さて、月が沈んだ直後の4時頃、西の方角を向いて夜空を大きく見上げましょう。ハートレー第2彗星は高度が80度近くにも達し、ほとんど天頂(頭の真上)付近に見えます。天頂付近で最も明るく輝く星は、黄色い色をしたぎょしゃ座の0等星カペラです。彗星はカペラの近くにありますから、まずこの星を見つけてください。天頂近くで最も明るく輝いている星ですから、間違えることはないでしょう。

 田舎の暗い夜空の場合だと、カペラよりも少し左側に目を向けると、肉眼でも小さくてぼんやりした光の塊が見つかると思います。これがハートレー第2彗星です。でもこれは理想的な条件下での話。多くの方は双眼鏡を使って探すことになります。まず、先に見つけたカペラを双眼鏡の視野へ入れてください。ハートレー第2彗星はカペラよりも左側に見えますから、少しずつ視野を左へ動かしていきましょう。

 カペラとハートレー第2彗星との間隔は6.9度です。7倍くらいの低い倍率や広視界の双眼鏡なら、同一視野にどうにかおさまるかもしれませんが、それでもギリギリです。カペラの左側にぼんやりした小さな天体が見つかれば、それがハートレー第2彗星! 尾が見える、もしくは彗星が細長く見えるかも確認しておきましょう。尾は左下方向へ伸びているはずです。

 ここで一つ注意していただきたいことがあります。ぎょしゃ座にはM36、M37、M38という大型の散開星団があります。星図では緑色をした小さな丸印で描かれています。これを双眼鏡で見た場合、彗星と同じような見え方をします。当てずっぽうに双眼鏡をグルグル動かしていると、偶然これらの天体が視野に飛び込んでくることもありますから、見間違えないようにしてくださいね。カペラをはじめ、まわりの星との位置関係に注意すれば、間違えることはなくなるでしょう。念のため天頂付近の詳細図ものせておきましたので、実際に天体観測される際の参考にしてください。

 さらにもう一つ注意していただきたいことがあります。それは、夜明けが迫っているということです。東京の場合、空が白み始める時刻は4時27分です。ですから、のんびりしている余裕はありません。そういう意味で観測を少し早い目に始めるのは大事なことです。月明かりがあっても、カペラぐらいなら見つけられますから、前もってカペラの位置を確認しておくのです。また、できるだけ事前に彗星が見える位置を頭に叩き込んでおいて、テキパキと探すようにしましょう。彗星の天体観測でも、備えあれば憂いなしというわけです。 

天頂付近の詳細図

10月21日22時の場合

 ここまで4時に観測する場合を紹介しました。月明かりの妨げなく観測できるのは大きなメリットですが、「翌日は会社や学校があるし、そんな時間に天体観測なんてできないよ」という方も多いのではないでしょうか。そこで、22時に観測する例を紹介しましょう。

 この日、ハートレー第2彗星は18時56分に北東の空から昇ってきます(東京の場合)。しかし、高度が低いうちは地球の大気による減光や遠くの街明かりが影響して、淡い彗星をハッキリととらえることができません。それでなくてもこの日は大きな月明かりがあって観測しづらい状態ですから、高度が十分に高くなってから観測した方が、ハートレー第2彗星を観測できる可能性が高まります。彗星はそれくらい淡い天体なのです。

 下の星図は10月21日22時頃、東京から見た夜空です。彗星は高度30度ぐらいまで昇ってきており、観測するのに十分な高度があります。それでは実際に夜空を見てみましょう。

 北東の空の中ほどで黄色く光る明るい星は、ぎょしゃ座の0等星カペラです。ハートレー第2彗星はカペラの右側に見えますので、まずこの星を双眼鏡の視野に入れてください。その後ゆっくりと少しずつ、右からやや下方向へ視野をずらしていきましょう。朝の4時頃は7度弱だった両者の間隔はすっかり開いてきましたので、7倍くらいの双眼鏡でも同一視野におさまりません。

 立派な尾を生やした写真で見たような姿を想像していると、いつまでたっても見つけることはできません。小さな雲の切れ端のようなぼんやり光る天体が見つかれば、それがハートレー第2彗星です。写真とは違って肉眼で見た彗星は、本当に小さくて淡い天体なのです。それから、星図で緑色の丸印で示した散開星団と見間違えないようにしていただきたいのは、4時に観測する場合と同じです。彗星が見つかったら尾が見える、もしくは彗星が細長く見えるかも確認しておくようにしましょう。尾は右上方向へ伸びているはずです。

 月明かりがあって相当見づらいはずですから、ゆっくりと丁寧に探してくださいね。 

10月21日22時の位置

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