ハートレー第2彗星を見つけよう 2010年10月から11月

 ハートレー第2彗星(103P/Hartley 2)は1985年にオーストラリアの天文学者マルコム・ハートレー氏によって発見された、6.47年の周期で太陽のまわりを公転する周期彗星です。公転周期が短いだけに、発見されてから既に5回の回帰が確認されていますが、それほど明るくなることもなくあまり話題になりませんでした。
 
 そんなハートレー第2彗星が2010年10月から11月にかけて、絶好の条件で観測することができます。最も地球へ近づく10月21日頃には0.12AUまで接近し、4等台まで明るくなりそうです。周期彗星がこれほど明るくなるのは珍しいことで、6月に明るくなったマックノート彗星とともに、2010年の大きな目玉になるのではないかと期待されています。

予報よりも少し暗い目の明るさで推移しているようです。

ハートレー第2彗星と地球の位置関係

 下の軌道図はハートレー第2彗星と地球の軌道を示したものです。軌道上での近日点位置は太陽から1.06AUで、地球の公転軌道よりもわずかに外側です。近日点付近における彗星の軌道は地球の軌道に沿うように並行しています。しかも地球と彗星が最も近づいた頃の両者はかなり接近します。その距離は0.12AUといいますから約1800万Kmです。そう言われてもピンとこないかもしれませんので、地球から月までの距離の50倍弱といえば、多少わかりやすいかもしれません。どちらにしても彗星としては、かなり近づいた状態になるということです。

 地球との最接近は10月21日頃で、近日点通過は10月28日です。この頃の地球と彗星は太陽からの距離があまり違わないため、公転速度にもあまり差がありません。こうなると時間がたっても太陽、地球、彗星の3者の位置関係があまり変わりませんので、好条件が持続します。そんなわけで、2010年10月から11月にかけてという比較的長い期間にわたって、彗星の天体観測を楽しむことができるのです。しかも地球から見た彗星は太陽と反対方向に見えますので、深夜に観測することができて、こちらの意味でも好条件なのです。まさに、願ったりかなったりの位置関係ということができるでしょう。アニメーション画像も用意しましたので、一度ご覧ください。
 
ハートレー第2彗星から太陽系を眺めよう

地球に近づいた頃

ハートレー第2彗星の明るさ

 次のグラフはハートレー第2彗星の明るさ変化を示すグラフです。光度変化を近日点通過前と通過後で比べると、この彗星の場合、近日点通過後の方が光度の落ち方が緩やかであることが知られています。しかし、このことは下のグラフに反映されていませんから、ピーク後の光度の落ち方は、実際にはもう少し緩やかなものになると思われます。

 ハートレー第2彗星は9月中旬頃に8等を突破し、その後もドンドンと明るくなります。そして10月初旬には6等に達して肉眼彗星となります。10月中旬になると4等台へ突入し、街中からでも双眼鏡を使えばどうにか観測できる明るさになります。10月21日頃に地球へ最接近して4等台半ばまで明るくなってピークを迎えます。その後は次第に光度が落ちていきますが、11月後半まで肉眼彗星として楽しむことができそうです。

光度曲線

ハートレー第2彗星の移動経路

 下の星図は星座を背景にしたハートレー第2彗星の経路図です。短い線はハートレー第2彗星の尾を示しています。尾の長さは0.01AUで計算しています。8月頃の動きは小さなものですが、9月に入ると動きが次第に大きくなってきます。9月末から10月初旬にかけてはW字型で有名なカシオペア座の近くを通り過ぎます。その後はペルセウス座へ移って尾も伸びてくるので、空が暗い地点から双眼鏡を使うと尾の存在を確認することができるでしょう。

 地球最接近となる10月21日頃にはぎょしゃ座のカペラへ近づいています。黄色い色をした0等のカペラが良い目印になってくれることでしょう。このあたりからハートレー第2彗星は一気に南下していき、ふたご座の足元を通り過ぎます。11月に入るといっかくじゅう座からこいぬ座へ移動しますが、地球からの距離は遠ざかってしまいます。それとともに動きも小さくなります。
 
 ハートレー第2彗星の詳細経路

星座を背景にした経路図

ハートレー第2彗星が見える位置

 下の星図は2010年10月21日4時頃の星図で、背景の星座に彗星の移動経路を重ねたものです。10月21日に地球との最接近を迎えるハートレー第2彗星は、ぎょしゃ座のカペラの近くにいます。深夜にも観測することができて、しかも地球に接近しているという、彗星を天体観測するには願ってもない好条件です。彗星は4等台半ばまで明るくなっており、空が暗い場所からだと肉眼でもハッキリと存在を確認することができます。また、双眼鏡を使うと尾が伸びた彗星らしい姿を天体観測することができるでしょう。

 しかし、10月21日前後は月齢の関係で月明かりの影響を受ける時間帯が長くなります。特に10月28日、29日あたりは月が彗星のすぐ横にあるので最悪です。ですから、月明かりがない時間帯を狙うようにして観測計画を立ててください。

 下のリンクでは見える位置や見つけ方を紹介していますので、ぜひお読みください。
 
 ハートレー第2彗星の観測を始めよう 2010年9月下旬
 ハートレー第2彗星が秋の星座を通過 2010年10月上旬
 ハートレー第2彗星と冬の星座、観測絶好機に 2010年10月下旬
 ハートレー第2彗星が地球へ最接近 2010年10月21日
 まだまだいけるハートレー第2彗星 2010年11月

ハートレー第2彗星が見える位置

ハートレー第2彗星の見つけ方

 次に、実際にハートレー第2彗星を探す際の注意点などをあげておきましょう。

観測場所を探そう

 ハートレー第2彗星が明るくなった頃は、夜半過ぎから夜明け前にかけて、比較的高度が高い位置に見えます。彗星としては非常に恵まれた条件ですが、彗星は淡い天体だけに、天体観測するのに適した場所をあらかじめ探しておきましょう。ポイントは、遠くの街明かりや水銀灯などが少ない場所を選ぶことです。明るい光があると、淡い彗星の光はこれらの光によってかき消されて見えなくなってしまうからです。

双眼鏡を準備する

 明るくなった頃のハートレー第2彗星は、数字だけから言えば肉眼でも見ることのできる明るさですが、実際には周囲にある人工の光や大気による減光など、ハートレー第2彗星を見えにくくする原因がたくさんあります。それらを乗り越えて肉眼で見ることができたとしても、やはり双眼鏡にはかないません。肉眼では存在しかわからない場合でも、双眼鏡を使うことによって彗星像をハッキリととらえることができますし、もしかすると尾の存在を確認することができるかもしれませんよ。もし双眼鏡をお持ちでしたら、ぜひとも用意しておいてください。

位置を確認しておこう

 確実にハートレー第2彗星を探しだすためには、あらかじめ見える位置を確認しておく必要があります。確認するための方法はいくつかありますが、このページの星図を見て、「何々座にあるこの星の近く」などをイメージしておくだけでもずいぶんと違ってきます。ただし、日付や時刻が異なると星座が見える位置も違ってきますから、「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」と併用されることをオススメします。

目印となる星からたどろう

 広い空の中で淡いハートレー第2彗星にたどり着くのは結構難しいもので、天体観測に慣れた人でも初めて見る天体を探すのは苦労することもしばしばです。ですから、明るい星を目印にしながら探すようにしましょう。明るい星から暗い星へとたどり、次第に彗星の見える場所へ近づいていくのです。星座がおわかりの方なら、何々座のこの辺りといえば、だいたいの位置を予想することができます。

月明かりを避けよう

 月の光は天体観測には大敵です。特に彗星などの淡い天体を観測する場合は、月明かりのない時間帯を選ぶ必要があります。そうしないと、見えるものも見えなくなってしまいます。「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」や「つるちゃんの天体出没時刻表」などのソフトを使って、月の出や月の入りの時刻を調べておきましょう。

ハートレー第2彗星の見え方

 彗星はその時になってみないことには、どのような見え方をするのかわかりません。ここでは一般的な彗星の見え方を紹介しましょう。

星雲状にぼんやり見える

 ハートレー第2彗星は恒星のような点ではなく、広がりのある面積を持った天体です。ですから、肉眼で見ても天体望遠鏡で見ても、星雲状にぼんやりと広がって見えます。もう少しわかりやすく言うと、「小さくて丸い雲の切れ端」のように見えるのですが、一度ご覧にならないと、なかなかイメージするのは難しいかもしれません。

 一般に「彗星が4等級の明るさで見える」などと表現しますが、これは「彗星全体の光を1箇所に集めたとしたら4等星の明るさに見える」という意味です。ですから、部分的に見れば彗星は4等星よりもかなり暗くなってしまって、想像した以上に見えづらいものですから注意しましょう。

核とコマ

 天体望遠鏡でハートレー第2彗星を拡大してみるとわかると思いますが、彗星の中心部分には小さくてひときわ明るく輝く部分があります。これは核と呼ばれており、ハートレー第2彗星の本体になります。また、核を取り巻くようにぼんやりとした光の塊はコマと呼ばれます。コマは核から放出されたガスやチリによってできたもので、太陽の光を反射して輝いて見えます。

 肉眼や双眼鏡だと難しいのですが、天体望遠鏡で見る機会があれば、核が見えるかどうか注目してください。また、コマの部分も小さな筋や細かい模様のようなものが見えることがあります。例えばヘール・ボップ彗星の場合には、コマの部分に核を取り巻くように貝殻状のいく筋もの模様が見えた時期がありました。この辺も気をつけて見られるとおもしろいと思います。

 大彗星と呼ばれるような明るい彗星には尾が見られますが、これもコマと同様、核から放出されたガスやチリによってできています。彗星の尾はダストテイルとイオンテイルの2つのタイプが存在しますが、イオンテイルが肉眼で見えるほどの彗星はそんなに多くありません。ハートレー第2彗星の尾がどのように見えるかわかりませんが、空が十分に暗い場所から双眼鏡で観測すると、2本の尾が伸びている様子が確認できるかもしれません。また、ハートレー第2彗星は地球へ比較的接近しますから、長い目の尾が観測できるかもしれません。

 尾の生えた彗星らしい姿を見たいと思うなら、倍率の高い天体望遠鏡よりもむしろ、倍率の低い双眼鏡の方がおすすめです。倍率が高くなるとそれだけ視野(見える範囲)が狭くなり、彗星全体の姿を見渡すことができなくなるからです。核とコマを観測するなら天体望遠鏡、尾を含めた彗星全体を観測するなら双眼鏡という具合に、使い分けてください。

シミュレーションしよう

 当サイトからダウンロードできる「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」のフリー版を使うと、ハートレー第2彗星をシミュレーションすることができます。このページで使った画像は有料のシェア版によるものですが、無料のフリー版でも同じような画面を表示することができます。その際に必要となるデータ設定方法を紹介しますので、下のリンクからデータ設定を行ってください。
 
  ハートレー第2彗星のデータ設定方法 ※近日点通過後の光度は、計算値よりも緩やかに暗くなります。
 
 また当サイトではJavaアプレット版でもシミュレーションすることができますので活用してください。

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  2010年10月28日 ハートレー第2彗星が近日点を通過