マックノート彗星(C/2009 R1)が2等台に? 2010年6月末から7月初旬

 マックノート彗星(C/2009 R1)は、2009年9月9日にけんびきょう座でマックノート氏が17等級で発見した彗星です。マックノート彗星といえば2007年の年初にマイナス等級まで明るくなり、白昼に肉眼でも見えたと言われる2007年のマックノート彗星を思い出しますが、これとは別の彗星です。このまま順調に明るくなれば、2010年6月下旬から7月上旬にかけて4等台まで明るくなるのではないかと期待されています。2009年10月から11月にかけて見やすくなるハートレー第2彗星とともに、2010年天体観測の目玉になることでしょう。

 2010年6月上旬現在、マックノート彗星は当初の予報よりも明るい光度で推移しており、すでに5等台まで増光しています。このままいけば6月下旬から7月上旬にかけて、2等台まで明るくなる可能性があります。もしそうなれば、6月末から7月初旬にかけて、日の入り直後の西空で観測できる可能性も出てきました。
 
注) 実際には4等級までしか明るくなりませんでした。

マックノート彗星の明るさ

 下に示したマックノート彗星の光度曲線をご覧ください。6月初め頃は8等級ですが、次第に増光して6月中旬には6等を突破し、肉眼彗星になることがわかります。その後も彗星は増光を続け、7月上旬に4等台半ばに達して明るさはピークを迎えます。以降は減光して次第に暗くなります。7月中旬には6等を割り込んで、肉眼で見えなくなることでしょう。

光度曲線(当初)

 その後の観測から光度曲線を修正したものが下のグラフです。このとおり推移すれば、7月上旬に2等台前半まで明るくなる可能性もでてきました。ただひとつ気がかりなのは、この彗星がいわゆる新彗星だということです。遠く離れたオールトの雲からやってきて、初めて太陽へ近づく彗星は、太陽へ近づくにつれて増光のスピードが鈍る傾向があります。もし今回も当てはまるとすると、当初予想された程度か、それ以下までしか明るくならないことも考えられます。しかし実際にどうなるかを予想するのは難しく、彗星が来てみないとわからないというのが本当のところです。

修正後の光度曲線

地球との位置関係

 下の絵は彗星の軌道図です。日付はマックノート彗星が近日点を通過する頃の7月3日としています。マックノート彗星は地球軌道面よりも北側に位置していて北半球から有利なはずです。しかし残念ながら、地球から見ると太陽と同じ方向に見えるので、観測には今ひとつ適しません。
 その後は急速に南下し、7月末には地球軌道面を通過して南側へ入ります。そうなると、北半球からはいよいよ観測しづらくなってきます。ですから近日点通過をはさんだ後半よりも、前半の方がマックノート彗星の天体観測に適しているといえます。

近日点通過頃 地球、太陽、マックノート彗星の位置関係

マックノート彗星の経路

 下の星図は星座を背景にしたマックノート彗星の経路図です。日付は7日ごとにプロットしていますが、間隔が狭いところは日付が表示されていません。彗星は右側から左側へと移動していきます。6月中旬頃には最も北側に位置し、その後は南下します。特に近日点通過となる7月上旬以降は南下のペースが速まって、一気に南半球へ突入していきます。

星座を背景にした経路図

日の出1時間半前に見える位置

 下の絵は東京で日の出から1時間30分前におけるマックノート彗星が見える位置変化を表したものです。高度だけから言うと、6月初旬が最も高くなります。しかし明るさの方は8等くらいですから、まだまだこれからといった感があります。その後、マックノート彗星はどんどんと高度が下がっていきます。下の絵を見ると、実際に観測できるのは6月25日頃まででしょう。この頃になると、彗星が見える方角は東ではなく、北東よりもさらに北側に見えますから、方向に注意する必要があります。6月25日の明るさは5.0等(明るい場合は2.8等)で、短い尾が左上方向へ伸びているのがわかるかもしれません。

日の出時刻から1時間30分前にマックノート彗星が見える位置

日の入り30分後に見える位置

 下の絵は東京で日没から30分が経過した時刻に、マックノート彗星がどの位置に見えるかを示したものです。6月末から7月初旬にかけてが見ごろで、北西の空の低い位置に見えるはずです。最も高度が高くなるのは6月28日から29日にかけてで、日没から30分後の高度は東京で8.3度。彗星の明るさは2.5等です。
 
 この時期の日没30分後といえば、空はまだ相当に明るいはずです。彗星の明るさが2等台といっても、彗星自体は広がりのある天体ですからコントラストが低く、相当に見づらいでしょう。肉眼ではまず無理で、最低でも双眼鏡を準備しておく必要があります。彗星が見える保障はありませんで、「もしかすると見えるかも」ぐらいの気持ちでのぞむのが良いと思います。この頃は近日点通過する前後なので尾も発達する時期で、双眼鏡を使えば短い尾が観測できるかもしれません。

日の入り時刻から30分後にマックノート彗星が見える位置

見える位置と方角

 マックノート彗星は星座を背景にして日々移動しています。その中で見つけやすい日を中心に、いつ、どの方角に、どの星座に見えるのかを具体的に解説します。総じて言うと、夜明け前の北東の空に見えますが、近日点通過の頃は夕方西空に見える可能性もあります。次のページを読んで、あなたもぜひマックノート彗星を見つけてください!

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  マックノート彗星が本格的な観望期へ 6月中旬
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  マックノート彗星が日没後に見える? 6月末から7月初旬

マックノート彗星の見つけ方

 次に、実際に見つける際の注意点をあげておきます。特に観測場所は大事ですよ。

観測場所を探そう

 マックノート彗星が明るくなった頃は、明け方の北東の空、または夕方の北西の空で低い位置に見えます。ですから、昼間のうちに低空まで見渡すことができる場所を探しておきましょう。また、見える方角に遠くの街明かりや水銀灯などが少ない場所を選ぶようにします。明るい光があると淡い彗星の光が、かき消されて見えなくなってしまうからです。

双眼鏡を準備する

 明るくなった頃のマックノート彗星は、数字だけから言えば肉眼でも見つけることができる明るさです。しかし実際には、周囲にある人工の光や大気による減光など、見えにくくする要因がたくさんあります。それらを乗り越えて仮に肉眼で見ることができたとしても、やはり双眼鏡の威力にはかなわないでしょう。もし双眼鏡をお持ちでしたら、ぜひとも用意しておいてください。肉眼では存在しかわからない場合でも、双眼鏡を使うことによってハッキリととらえることができます。もしかすると尾の存在を確認することができるかもしれませんよ。
 
  双眼鏡を購入

位置を確認しておこう

 日の出前や日の入り直後という限られた時間の中で、確実にマックノート彗星を探しだすためには、あらかじめ見える位置をしっかりと確認しておく必要があります。確認するための方法はいくつかありますが、このページの星図を見て、「何々座にあるこの星の近く」などをイメージしておくだけでもずいぶんと違ってきます。ただし、日付や時刻が異なると星座が見える位置も違ってきますから、「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」と併用されることをオススメします。

薄明時刻を調べておこう

 明るくなった頃のマックノート彗星を観測する場合、夜明け前に地平線上に昇ってから薄明が始まるまで、または日の入り後から数十分という短時間勝負になります。薄明が始まると淡い彗星は背景の空の光に負けてしまい、次第に薄くぼやけて見えなくなっていきます。ですから、いつから薄明が始まるのか、何時が日の出なのかを前もって確認しておくのが賢明です。
 日の出時刻や薄明が始まる時刻は、「つるちゃんの天体出没時刻表」や「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」で調べることができます。トップページへ戻って、「天文ソフトのダウンロードとご購入」のページからダウンロードしてご使用ください。

目印となる星からたどろう

 広い空の中でいきなり淡い天体にたどり着くのは、ベテランといえども至難の業です。ですから、明るい星を目印にしながら彗星を探しましょう。明るい星から暗い星へとたどり、次第に彗星の見える場所へと近づいていくのです。星座がおわかりの方なら、何々座のこの辺りといえば、だいたいの位置を予測することができます。つるちゃんのプラネタリウムの読者の皆さんなら、きっと大丈夫ですよね!?

一般的な彗星の見え方

 彗星はその時になってみないことには、どのような見え方をするのか予測ができません。ここでは一般的な見え方を紹介しましょう。

星雲状にぼんやり見える

 マックノート彗星は恒星のような点ではなく、広がりのある面積を持った天体です。ですから、肉眼で見ても天体望遠鏡で見ても、星雲状にぼんやりと広がって見えます。もう少しわかりやすく言うと、「小さくて丸い雲の切れ端」のように見えるのですが、一度ご覧にならないと、なかなかイメージするのは難しいかもしれません。
 一般に「4等級の明るさで見える」などと表現しますが、これは「彗星全体の光を1箇所に集めたとしたら4等星の明るさに見える」という意味です。ですから、部分的に見れば彗星は4等星よりもかなり暗くなってしまって、想像した以上に見えづらいものです。注意しましょう。

核とコマ

 彗星を天体望遠鏡を使って拡大すると、中心部分に小さくてひときわ明るく輝くところがあります。これは核と呼ばれており本体になります。また、核を取り巻くようにぼんやりとした光の塊はコマと呼ばれます。コマは核から放出されたガスやチリによってできたもので、太陽の光を反射して輝いて見えます。
 
 肉眼や双眼鏡だと難しいのですが、天体望遠鏡で見る機会があれば、核が見えるかどうか注目してください。また、コマの部分も小さな筋や細かい模様のようなものが見えることがあります。例えばヘール・ボップ彗星という過去の大彗星の場合には、コマの部分に核を取り巻くように貝殻状のいく筋もの模様が見えた時期がありました。この辺にも気をつけて見ると、おもしろいかもしれません。

 大彗星と呼ばれるような明るい彗星には尾が見られますが、これもコマと同様、核から放出されたガスやチリによってできています。彗星の尾はダストテイルとイオンテイルの2つのタイプが存在しますが、イオンテイルが肉眼で見えるほどの彗星はそんなに多くありません。マックノート彗星の尾がどのように見えるかわかりませんが、空が十分に暗い場所から双眼鏡で観測すると、2本の尾が伸びている様子が確認できるかもしれません。
 
 尾の生えた彗星らしい姿を見たいと思うなら、倍率の高い天体望遠鏡よりもむしろ、倍率の低い双眼鏡の方がおすすめです。倍率が高くなるとそれだけ視野(見える範囲)が狭くなり、全体の姿を見渡すことができなくなるからです。核とコマを観測するなら天体望遠鏡、尾を含めた彗星全体を観測するなら双眼鏡という具合に、使い分けてください。

シミュレーションしよう

 当サイトからダウンロードできる「天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム」のフリー版を使うと、マックノート彗星をシミュレーションすることができます。このページで使った画像は有料のシェア版によるものですが、無料のフリー版でも同じような画面を表示することができます。その際に必要となるデータ設定方法を紹介しますので、下のリンクからデータ設定を行ってください。
 
  2010年マックノート彗星のデータ設定方法 新しい光度データに対応

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