北極星といえばその名のとおり、いつも真北の方角で2等星として輝いて見えています。北極星の高度は自分の観測地の緯度とほぼ同じになります。
北極星はこぐま座の一部ですが、こぐま座にはもうひとつコカブという別の2等星がありますので、間違えないようにしましょう。
星名 | 学名 | 星座 | バイヤー符号 | フラムスティード番号 | 赤経 | 赤緯 | 実視等級 | 絶対等級 | 距離 | スペクトル型 |
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ポラリス | Polaris | こぐま座 | α星 | 1番 | 02h31m49s | +89゜15’51” | 2.02等 | −3.59等 | 432光年 | F8 |
北極星はいつも真北に輝いて見えます。そして全ての天体は、時間の経過とともに、北極星の周りを回るように動いていきます。
単純に言うと恒星は24時間でほぼ360度動きますから、1時間に15度動くことになります。これらの星の動きのことを日周運動とよんでいます。日周運動が起こるのは、もちろん地球が自転していることによります。
一方、北極星自身は動かないように見えます。北極星が偶然、地球の自転軸と同じ方向(天の北極)にあるために、動かないように見えるだけなのです。
アラビア語では北極星のことを北極の釘とよぶことがあります。釘で天上に打ち付けられたように動かないことからこのようによばれるのでしょう。
ヨーロッパではルネサンスの頃からポラリス(Polaris)とよぶのが一般的です。しかしこれとは別に、アルルカバとよばれることがあります。これは、アラビア語のアッ・ルクバからきており、ひざという意味です。かつてはおおぐま座θ星の名前でしたが、ヨーロッパに伝わる際に誤って北極星につけられたのだそうです。
北極星の呼び名が一般的に使われますが、これは中国名です。和名は子の星(ねのほし)です。方角を十二支で表したとき、北の方角は子(ね)ですから、子の星というわけです。また、北の一つ星という呼び名もあります。
先に北極星は動かないと書きました。しかし厳密に言うと、北極星は西暦2000年で44分09秒(0.736度)だけ天の北極からズレています。ですから北極星も日周運動によって半径が0.736度という小さな弧を描きながら少しずつ移動します。
地球の自転軸の方向が一定ならば、北極星も半永久的に北極星であり続けることでしょう。しかしながら、地球の自転軸の方向は一定していません。2万6千年という長い周期で向きを変えており、今はたまたま北極星の方向を向いているだけなのです。そのため、紀元前2800年頃にはツバーンという星が北極星でしたし、8300年後にはデネブが、1万2千年後にはベガが北極星になります。(天文用語ミニ解説の中にある歳差運動を参照してください。)
現在北極星は天の北極へ次第に近づきつつあるところで、2103年には27.6分(0.46度)まで近づきます。しかしその後は少しづつ離れていき、いつの日か、北極星が北極星の役割を果たさなくなる日がやってきます。
北極星の明るさは2等星と明るいのですが、その距離は432光年もあります。それでいて2等星ですから大したものです。北極星は太陽の2200倍もの光を放って輝いています。例えば、太陽を北極星の距離まで遠ざけたとすると10等星にしかなりません。また仮に太陽からもっとも近い恒星であるケンタウルス座アルファ星の距離(4.4光年)まで北極星を近づけたとすると、−9等星と半月なみの明るさで輝いて、地球の北半球に闇夜はなくなってしまうことでしょう。
北極星を天体望遠鏡でのぞいてみると、18.3秒(1秒=3600分の1度)離れたところに9等星の青白い色をした小さな星がくっつていることがわかります。この伴星は、偶然同じ方向にあるだけの星と思われていました。しかし伴星のポラリスBは、主星のポラリスAから2700天文単位も離れたところを回っている実視連星であることが判明しています。
またこれとは別に、北極星には30年周期で周りを回っている伴星のポラリスP(またはポラリスa、またはポラリスAbともいう)があり、分光連星となっています。両者の距離は20天文単位と近すぎて、ハッブル望遠鏡のような特殊な望遠鏡でないと、伴星を直接観測することはできません。
北極星は1.87等星から2.13等星の間で明るさが変化する変光星でもあります。明るさが変わる周期は3.97日と短いもので、ケフェウス型またはセファイドとよばれるタイプに分類されます。しかし変光幅が小さいので、普通に見ていただけではわからないでしょう。おまけに20世紀半ばから変光幅が小さくなってきており、1990年代には変光幅が以前の8分の1まで小さくなりました。