夏の星座が登場 2002年6月

 6月といえば梅雨。天文ファンにとってはつらい季節の到来です。しかし逆に驚くほど高い透明度の空にめぐり合えるのもこの季節。少ないチャンスをのがさずに観測しましょう。

6月の星空(全体)

 まず星空全体を眺めてみましょう。先月にはちょうど南中していた春の大三角はだいぶ西のほうへ移動しています。ちょうど天球の西半分(右半分)は春の星座で埋め尽くされている、そんな感じがします。西空低くには高度を上げてきた金星がどうにか見えています。金星と「やまねこ」の文字の間にある明るい2星が見えますが、実は冬の星座のふたご座のカストルとポルックスです。もう6月なんですがねえ、といった感じがします。

 かわって天球の東半分(左半分)には夏の星座が登場してきました。さそり座は南南東の空でかろうじて全体が見えてきました。南東の空では大きな5角形の形をしたへびつかい座とその両側にあるへび座が見やすくなってきています。東から北東の空にかけては有名な夏の大三角も見えてきました。ただし天の川を見るにはまだ高度が低くて難しいでしょう。
 

6月の東の空

 今月は東の空も少しにぎやかになってきました。まだ高度が低くて見づらいのですが、いよいよ夏の星座の登場です。

さそり座

 黄道12星座のひとつとして有名な星座で歌のタイトルに採用されたりすることもあります。夏の星座をひとつ挙げるとすれば、さそり座を挙げる人も多いのではないでしょうか。大きなS字型を描きながら、しっぽの毒針まで具えたその均整の取れた形は非常に印象的です。おまけに、さそりの心臓部には赤い1等星のアンタレスがあり、さそり座をさらに印象深いものにしています。さそりのしっぽの部分はつり針のようにも見えることから「さそりのつり針」と呼ばれたりする場合もあります。

 さそり座は南東の空からのぼってきます。ギリシャ神話では勇者オリオンを刺し殺したのが、このさそりです。このため、さそり座が昇ってくるこの季節になると、オリオン座はこそこそと西の空へ逃げて沈んでいくのだそうです。

 さそり座にはM4、M6、M7(Mはエムまたはメシエと読みます)などの大きな星団があります。双眼鏡などでも見えますので、星図を頼りに一度探してみるのも楽しいですよ。

へびつかい座

 へびつかい座は将棋の駒のような形をした大きな5角形の星の並びが特徴です。この時期では将棋の駒は横に寝た形で昇ってきます。へびつかい座は単独で見るよりも、へび座といっしょに捉えた方がわかりやすいかもしれません。将棋の駒の両側にへびを従えている姿が浮かび上がります。

 実はへびつかい座にも天の黄道が通っています。しかもさそり座よりも長い距離を通っていますので、本来ならへびつかい座も黄道12星座に加えられていなければいけません。そんなわけで、星占いではへびつかい座も加えた黄道13星座が採用されている場合もあるようです。

へび座(尾)

 先月もお話しましたように、へび座へびつかい座によって頭と尾のふたつに分断された変わった星座です。このため、へび座には南中時刻がふたつあります。暗い場所へ出かけて、へびつかい座、へび座(頭)、へび座(尾)をまとめて眺めると、へびつかい座にまとわりつくようにへび座の星々が連なっている様子がわかり、なるほどと、うなづかされます。

こと座

 この星座が東の空から昇ってくると、夏も近づいたなあと思います。こと座の最輝星は0等星のベガ。ベガは織姫星として有名ですね。織姫星のペアはわし座の1等星アルタイルですが、高度がまだ少し低いので来月に紹介しましょう。

 こと座は小さな星座ですが、ベガと小さな平行四辺形の4つの星が目印です。特に小さな平行四辺形はとても可愛らしくて、印象に残ります。ギリシャ神話ではギリシャ一番の音楽家オルフェウスが奏でた琴だと言われています。

 こと座には環状星雲(またはドーナツ星雲)として有名なM57という惑星状星雲があります。小さな星雲なので見るには天体望遠鏡が必要となりますが、いびつな唇のような姿は実に印象的です。つるちゃんが自分の天体望遠鏡で見た初めての天体がこの環状星雲でしたが、最も印象に残っている星雲のひとつです。