夏の星座がいっぱい 2003年7月

 7月の前半は梅雨のシーズン。次第に蒸し暑さが増してきて雨量も多くなり、集中豪雨といった言葉がよくきかれるようになるのもこの頃です。そして7月も後半になると梅雨が明けて一気に夏の到来。天候が安定してきて晴れの日が多くなってきますので、天体観測には良い時期の到来といえるでしょう。ただ難をいえば、大気中の水蒸気が多くなり、空の透明度が落ちるのですけどね。

 ということでジャンジャン星を見ましょう!

注)このページの星空の様子は7月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます(月や惑星は除く)。また、明石以外でも日本国内であれば、見え方にさほど違いはありません。

  6月15日23時
  7月 1日22時
  7月15日21時
  8月 1日20時
  8月15日19時

全天のようす

7月15日21時 全天のようす
7月15日21時 全天のようす

 空全体を見渡しますと、先月は春の星座と夏の星座が勢力争いをしていましたが、7月になると夏の星座が一気に主力の座を奪い取ったように見えます。春の星座は西の空へと追いやられ、夏の星座が南から東の空を覆ってきました。南の空では夏の天の川が見やすくなっています。

西の空

7月15日21時 西の空のようす
7月15日21時 西の空のようす

 西の空を見てみますと、先月まで主力だった春の星座たちが次第に西の空で高度を下げてきています。しし座も頭の部分はほとんど沈みかけてしまっていますし、うみへび座も南西の空でしっぽのの部分しか見えなくなってしまいました。隣のからす座の四辺形も高度が10度あまりと、実際に見るには少し難しくなってきました。

 少し視線を上にずらすと、真珠星のスピカがあるおとめ座や、さらに上方には麦星のアークトゥルスがあるうしかい座があり、まだがんばって見えています。

 北西の空では北斗七星のひしゃくが下を向いてまっ逆さまに落ちてきているような感じがします。

 先月まで見えていてガリレオ衛星の相互食の話題でにぎわった木星ですが、今月は見えなくなってしまいました。見やすい時間帯に木星を見るには来年まで待たねばなりません。

南の空

7月15日21時 南の空のようす
7月15日21時 南の空のようす

 7月の南の空はズバリ夏の星座です。真南の空のやや低い位置には、夏を代表する星座であるさそり座が南中しています。さそり座のS字型に描かれた星のカーブは非常に美しく、天のなし得た芸術品としか言いようがありません。

 さそり座の右側には「く」の字を逆にしたようなてんびん座が見えていますが、ここから天秤の形を思い浮かべるのはちょっと難しいように思います。そさり座の左側には南斗六星の異名を持ったいて座があります。北西の空に見えている北斗七星に比べるとスケールは小さいのですが、その配列は、なるほどとうなづかされます。一度両者を見比べてみてください。さそり座の上方には大きなへびつかい座と、それを取り巻くへび座があります。両方あわせて見ると医神アスクレピオスが蛇を持ち上げた姿が浮かび上がって楽しいのですが、へび座の星は小さな星が多いので、できるだけ空が暗い場所で見るようにしましょう。

 このように、7月の南天の星座を見つけるには、さそり座を目印にするとよいと思います。

天頂の空

7月15日21時 天頂の空のようす
7月15日21時 天頂の空のようす


 次に天頂方向を見てみましょう。今月天頂付近に見えているのはかんむり座とヘルクレス座です。
 かんむり座は小さな7つの星が半円形に並んでいて、酒の神ディオニソスが妻のアリアドネに送った冠とされています。小さな星座のわりには印象に残る星座のひとつです。かんむり座の星は暗い星が多いので、なかなか半円形に見えないかもしれません。天頂高くにまで昇って大気の影響を受けにくくなるこの時期が狙い目かもしれません。
 ヘルクレス座の方はギリシャ神話で大活躍するヘルクレスです。へびつかい座のアスクレピオスと面を合わせたような格好をしており、頭が南の方を向いている点に注意してください。

  

東の空

7月15日21時 東の空のようす
7月15日21時 東の空のようす

 今月は東の空で夏の大三角が目に付くようになってきました。いよいよ夏も近づいてきました。

わし座

 七夕祭りの彦星で有名な1等星アルタイルがある星座がわし座です。星の並びから、大きく羽を拡げたわしの姿を想像するのは比較的簡単です。上の絵では、アルタイルを頭として右側がしっぽになり、上下に羽を拡げた格好になります。どう、わかりやすいでしょう?

 ギリシャ神話では大神ゼウスの遣いとして、下界の様子を探っていた黒い大鷲だということです。

はくちょう座

 天の川の真っ只中に5つの星が十字型に並んでいるのがすぐ目にとまりますが、これがはくちょう座です。上の絵では1等星デネブがしっぽになり(頭ではないのでご注意を)、右側の3等星アルビレオが白鳥の頭になります。そして羽は上下方向に拡がっています。白鳥の姿を想像するのは、わし座の場合以上に簡単かもしれません。
 南半球の南十字星に対して、はくちょう座は北十字星と呼ばれる場合があります。

 この白鳥は、大神ゼウスがスパルタのレダを見初めた時に、レダに近寄るためにゼウスが化けた白鳥だと伝えられてします。

 白鳥の頭の部分に位置する星はアルピレオと呼ばれていますが、機会があればアルピレオを天体望遠鏡でのぞいてみましょう。この星は非常に美しい2重星で、金色とエメラルド色の星が並ぶ姿には、思わずため息が出てしまいます。

いて座

 南天の沸き立つ天の川の中に、半人半馬の姿に描かれているのがいて座です。野蛮なケンタウロス族の中にあって、優しくて賢いケイローンの姿だとギリシャ神話は伝えています。

 いて座のメインとなる6つの星は、その配列から、北天の北斗七星に対して南斗六星と呼ばれています。しかし北斗七星と比較すると、星の明るさやスケールの点で見劣りするのは否めません。

 いて座の方向に銀河系の中心があるだけに、天の川はいて座付近で幅が最も広くて濃くなっています。M8(干潟星雲)、球状星団のM22をはじめとし、星雲や星団がいっぱいですので、双眼鏡や天体望遠鏡で眺めていて興味は尽きません。

夏の大三角

 大三角は春、夏、冬、それぞれにありますが(秋は大四辺形)、最も細長い形をしているのが夏の大三角でしょう。そして濃い天の川を背景にしているだけに、一番迫力があるように思います。7月中旬の21時前後でしたら、ほぼ真東の高度40度から60度付近に見えます。こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つの1等星で形作られています。夏の大三角が東の空から昇ってくると、いよいよ夏だなあと感じます。