夜空も秋の気配 2003年9月

 日中はまだまだ暑い日も多い9月ですが、夜になると次第に心地よい夜風が吹くようになり、秋が近くにしのびよってきているのを実感します。空気中の水蒸気も夏の頃に比べると次第に少なくなってきて、空気の澄んだ日が多くなってきます。澄み切ったきれいな夜に星空を眺めていると、体ごと夜空へ吸い込まれて、いやなことも夜空へと溶け込んでしまい、心の奥まで澄んでくるような気がいたします。

(普段は大阪弁丸出しのくせに、何を気取っとるんや。)
つる:−−>たまにはいいじゃん。ほれ、星空をば見上げてみんしゃい。きれいばってん、心が澄んでくるようじゃろ。
(お前はいったい、どこの出身や!)

注)このページの星空の様子は9月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます(月や惑星は除く)。また、明石以外でも日本国内であれば、見え方にさほど違いはありません。

  8 月15日23時
  9 月 1日22時
  9月15日21時
  10月 1日20時
  10月15日19時

全天のようす

9月15日21時 全天のようす
9月15日21時 全天のようす

 先月に比べると夏の星座が西へと移動し、秋の星座がおずおずと東の空から昇ってきました。西半分は夏の星座、東半分は秋の星座といったところでしょうか。

西の空

9月15日21時 西の空のようす
9月15日21時 西の空のようす

 西の空は夏の星座でいっぱいです。7月頃には天頂付近に見えていたかんむり座やヘルクレス座ですが、9月になるとさすがに高度が下がってきました。この時期のヘルクレス座は、左側を頭にして仰向けに寝そべったような格好をしています。へびつかい座とそれを取り巻くへび座も高度が下がり、小さな星が多いへび座は見えにくくなってきました。

 北西から北の空低く(右端の方)には北斗七星が見えています。北斗七星の斗は中国でひしゃくを意味しますが、今はちょうどひしゃくの形に見えているので、その形を連想しやすいと思います。

 西空低くには春の星座の1等星アークトゥルスがかろうじて見えていますが、もう9月なんですけどって感じがします。

南の空

9月15日21時 南の空のようす
9月15日21時 南の空のようす

 先月までは夏の星座一色といった感じだった南の空ですが、夏の華やかな星座に見とれているうちに、秋の星座が東側(左側)から進出してきました。

 秋の星座の先頭バッターはやぎ座ですが、逆三角形に並んだその星の並びは、寂しい秋の星座の中では意外と目につきます。やぎ座の左下方向には秋の唯一の1等星フォーマルハウトが見えています。フォーマルハウトはみなみのうお座の口にあたりますが、その口へ向けてみずがめ座から水が流れ落ちていきます。

 南の空の西側(右側)は夏の星座です。天の川は地平線から立ち上がっていて今月も見ごろなのですが、さそり座は半分沈んでしまっていますし、いて座も少し傾いてきており、先月に比べると見劣りがします。天の川の上方にはわし座の1等星アルタイルも見えています。

やぎ座

 南の空ではやぎ座の星々が逆三角形の形に並んでいるのが目にとまります。暗い星が多いので、街明かりの激しい場所では見つけにくいかもしれません。しかし、少し郊外へ出ると星の並びがはっきりとわかり、秋の星座の中では比較的見つけやすい星座といえるかもしれません。

 ギリシャ神話では、森と羊の神パーンが怪物テュホンに襲われたとき、魚に変身して川へと逃げ込みました。しかし、慌てていたため、水につかった下半身だけ魚に化けて、上半身はやぎの姿のままでした。大神ゼウスはこれを見て大笑いし、記念にしようと天へ上げた姿がやぎ座だということです。星座絵では右半分はやぎですが、左半分は魚の姿が描かれていてとても愉快です。

みなみのうお座

 秋の星座の1等星はみなみのうお座のフォーマルハウトひとつだけしかありません。このためフォーマルハウトは「秋のひとつ星」と呼ばれています。フォーマルハウト以外は付近に明るい星は少なく、みなみのうお座も形がよくつかめません。星座絵では、みずがめ座からこぼれ出した水が、みなみのうお座の口へと吸い込まれていく姿が描かれています。

みずがめ座

 秋の星座は暗い星が多くて、形がつかみにくい星座が多いのですが、その代表がこのみずがめ座でしょう。暗い星ばかりでイメージが全然つかめません。その中にあってYの字に並んだみずがめ座の三ツ矢と呼ばれる部分だけが目立ちます。

 ある時、大神ゼウスは美少年ガニメデスに目をつけ、大わしにさらわせてオリュンポス宮殿でお酌をさせたのですが、この美少年ガニメデスが水瓶をたずさえた姿がみずがめ座だと、ギリシャ神話は伝えています。

 近くには先月末に大接近を迎えたばかりの火星が、不気味なほどに赤く光っていますので、これを目印にして、小さな星をていねいにたどってみるとよいでしょう。しかし、つるちゃんには美少年ガニメデスが水瓶をたずさえている姿などとても想像できませんが、みなさんはいかがでしょうか。なお、余談ですが、つるちゃんの星座はみずがめ座です。

(ほんまに余談やなあ。他には余計、余分、蛇足、不要、・・・)
つる:−−>そこまで言わんでもええやろ!

天頂の空

9月15日21時 天頂の空のようす
9月15日21時 天頂の空のようす


 今度は頭の真上、天頂方向です。今月一番空高くに上り詰めているのははくちょう座です。この時期のはくちょう座を見ていると、優雅に飛ぶ白鳥の姿を簡単に想像することができます。はくちょう座のデネブと、先月天頂付近に見えていたこと座のベガ、さらには高度60度付近に見えるわし座のアルタイルを結ぶと、夏の大三角が出来上がります。

 天の川は夏の大三角の中央を通っていますので、先月に引き続いて今月も天の川は見ごろとなります。天の川ははくちょう座付近で濃くなっていることや、空気が澄んでいることを考えると、はくちょう座付近の天の川に限って言えば、先月8月よりも今月9月の方がみやすいといえるかもしれません。

 北の空50度から60度付近には高度を上げてきたケフェウス座が見えます。暗い星が多いのであまり目立たないのですが、つぶれた5角形が目印になります。

 高度70度付近の南の空にはいるか座が南中しています。3等星と4等星でできた小さくてかわらしいひし形が特徴ですが、付近では以外と目につきます。いるか座が宵の空で南中するのを見ると、秋も近づいたなあと思います。
  

東の空

9月15日21時 東の空のようす
9月15日21時 東の空のようす

 東の空からは秋の星座が本格的に姿を見せ始めました。秋の星座は明るい星が少なくてさびしい星座が多いのですが、丹念に星をたどって星座を見つけましょう。

ペガスス座

 東の空を見上げると、2等星3つと3等星1つでできた大きな斜めを向いた四角形が目に止まりますが、これがペガススの四辺形です。秋の星座はさびしい星座が多いのですが、その中にあって、ペガススの四辺形だけは目立ちます。ペガスス座は羽の生えた天馬に描かれていますが、どういうわけか上下が逆さを向いています。ペガススの四辺形は天馬の胴体の部分になります。ペガススの四辺形の西側(右側)が首になりますが、結構わかりやすい星の並びをしているので、天馬の姿を連想するのは容易かと思います。

アンドロメダ座

 ペガススの四辺形の東側(左側)の星から左下方向へ2等星が3つ連なっていますが、この付近がアンドロメダ座になります。一番右側の2等星(ペガススの四辺形の星でもあります)がアンドロメダ姫の頭で、真ん中の2等星が腰、左端の2等星が足になるのですが、なかなかお姫様の姿を想像するのは簡単なことではありません。

 ギリシャ神話によると、勇者ペルセウスは天馬ペガススの背中に乗って、化け鯨のいけにえになりそうだったアンドロメダ姫のそばを通りかかり、化け鯨と戦ってアンドロメダ姫を救ったのだと伝えられています(四季の星座の中にあるアンドロメダ座を参照してください)。

 アンドロメダ座には有名なアンドロメダ大星雲が肉眼でもボーッと見えています。田舎の澄んだ空のもとでは意外と簡単に確認できるのですが、明るい都会の空では望むべくもありません。そんなときには双眼鏡を使うと、小さな楕円形をした雲の切れ端のような星雲を見つけられると思います。ただし、やみくもに双眼鏡を振り向けても、なかなか視野に入ってはくれません。正確な位置を星図などで事前に確認しておくようにしましょう。またアンドロメダ大星雲は、天体望遠鏡を使うと大きな雲のかたまりのように見えます。近くにはお供に従えた2つの銀河も見えて、迫力あるアンドロメダ大星雲の姿を観測することができます。といっても、写真のようにはいきませんで、あくまでも雲の塊程度にしか見えませんので、あまり期待しすぎないでくださいね。