だいぶそろってきた春の星座 2002年3月

 3月になり寒さは峠を越えたとはいえ、夜間はまだまだ厳しい寒さが続きます。この寒さから開放されるにはもう少しの辛抱が必要です。3月の夜空は春に向けての準備中といったところでしょうか。

3月の南の空

 はじめは南の空を見てみます。まず西側(上の絵の右側)の方から見ていきましょう。冬の星座たちはだいぶ南西の空へと傾いてきました。先月のこの時刻にちょうど南中していた冬の大三角は、南というよりは南西の空へと移ってきました。冬の大三角の中で最も南に位置するシリウスは、早くも沈んでいく体制に入ってきています。冬の先陣をきって昇ってきたはずのおうし座や土星などは絵の右端の西空へと隠れかけてしまいました。

 一方、南の空でも東側(上の絵の左側)を見てみますと、まず目に付くのは春の星座であるしし座の勇ましい姿でしょう。勢い良く「ガオ〜ッ」とほえながら、まるで天へ向かってかけ上がっていくように見えます。南の空の高度60度付近から南東の空へかけては大きなうみへび座が昇ってきました。うみへび座だけで相当に大きな領域を占めていますが、これでもまだ全部ではありません。天高くには南中しているかに座も見えています。

 このように、右半分は冬の星座、左半分は春の星座が占めており、星空の方もちょうど季節の入れ替えの時期ということがわかりますね。
 

3月の東の空

 次に東の空を見てみましょう。こちらの方は春を迎えるために、これから春の星座がどんどんと昇ってきます。かに座、しし座、うみへび座、おおぐま座は顔を見せ始めた春の星座たちを参照してください。

りょうけん座

 りょうけん座は北斗七星の右側にあるマイナーな星座です。しかし主星のコル・カロリーだけは3等星のくせに、辺りに明るい星がほとんどないため目立っています。コル・カロリーとはチャールズ王の心臓という意味だそうです。来月に解説予定の春の大三角にコル・カロリーを加えて春のダイヤモンドと呼ばれる場合がありますので覚えておいてください。
 りょうけん座には天体写真でおなじみの子持ち星雲(M51)があります。天体望遠鏡で見る機会がれば、ぜひ一度見ておきたい天体のひとつです。

かみのけ座

 しし座のしっぽと、りょうけん座のコル・カロリーの中間付近には、何やら小さな星がゴチャゴチャと集まって見えますが、この付近がかみのけ座になります。かみのけ座には特に明るい星はないのですが、つるちゃんが最も好きな星座です。その理由は四季の星座のかみのけ座をみてね。

うしかい座

 まだ高度は低いのですが、東北東の空を見ると、まわりの星と比べてひときわ明るく輝くだいだい色の星が見えますが、これは1等星(正確には1等星よりも明るい0等星)アークトゥルスです。日本で麦刈りをする頃の宵に頭の真上に輝くことから「麦星」と呼ばれています。うしかい座は地平線に寝そべった形で昇ってきますが、空が暗くないとその形はわかりにくいかもしれません。アークトゥルスとその北側(絵では左側)にできた5角形がうしかい座のメイン部分になります。
 まだ高度が低いので、来月の4月以降かもう少し遅い時間に見る方が良いかもしれません。

おとめ座

 真東よりもやや南より、アークトゥルスよりもさらに低い高度になりますが、青白色の1等星が見えます。これはおとめ座スピカです。スピカとはラテン語で「穂先」を意味しますが、農業の女神デーメーテルが持つ麦の穂の先の部分に位置しています。スピカは実は2重星で、ピッタリとくっつくように4日という短い周期で回りあっています。しかも赤道付近では太陽の100倍の秒速200キロという猛烈なスピードで自転しており、その表面温度は2万2千度もあって太陽の700倍もの光を放っているという強烈な星なのだそうです。
 おとめ座からりょうけん座にかけては銀河が密集しており、「宇宙ののぞき窓」と呼ばれています。「つるちゃんの3D銀河宇宙」を使うと、この様子を3次元的にシミュレーションすることができますので、ダウンロードして一度お試しください。

春の夫婦星

 うしかい座のアークトゥルスを男性に、おとめ座のスピカを女性に見立てて、両星をあわせて春の夫婦(めおと)星と呼んでいます。スピカは青白い色をしていて美しく、いかにも女性的な感じがするのですが、その実態は先に話したとおりです。気をつけなきゃ(独り言です)。