出そろってきた夏の星座 2002年7月

 7月前半はうっとおしい梅雨の季節。天体観測は難しいかもしれませんね。しかし、7月も後半になると梅雨も明けて、夏の到来。気候も安定してきて、天体観測にはもってこいの季節となります。水辺の近くでは蛍なんかも飛んできたりして、なかなかいいものですよ。

7月の星空(全体)

 まず星空全体を眺めてみましょう。西の空には大きく傾いた春の星座が見えています。先陣を切って昇ってきたかに座はもう西の空へと沈んでしまいました。しし座やからす座はほとんど沈みかけており、長〜いうみへび座もしっぽがかろうじて見えているにすぎません。春の星座のしんがりとなるうしかい座はまだ空の中ほどでがんばっています。北斗七星のひしゃくは、逆さを向いてきて、ひしゃくに水が入っていたら、こぼれ落ちてしまいそうです。

 代わって、夏の星座が続々と終結してきました。真南にはさそり座やへびつかい座がちょうど南中しています。天高くにはヘルクレス座も見えています。一方、東の空からは夏の大三角や天の川も昇ってきて、いよいよ夏本番を思わせます。
 

7月の東の空

 今度は天の川が昇ってきている東の空を見てみましょう。

わし座

 七夕祭りで有名な1等星アルタイル(彦星)がある星座がわし座です。星の並びから、大きく羽を拡げたわしの姿を想像するのは比較的簡単です。上の絵で言えば、アルタイルを頭として右側がしっぽになり、上下に羽を拡げた格好になります。どう、わかりやすいでしょ?

 ギリシャ神話では大神ゼウスの遣いとして、下界の様子を探っていた黒い大鷲だそうです。

はくちょう座

 天の川の真っ只中に5つの星が十字型に並んでいるのがスグ目に留まりますが、これがはくちょう座です。上の絵では1等星デネブがしっぽになり(頭ではないのでご注意を)、右側の3等星アルビレオが白鳥の頭になります。そして羽は上下に拡がっています。白鳥の姿を想像するのは、わし座の場合よりも簡単かもしれません。
 南半球の南十字星に対して、はくちょう座は北十字星と呼ばれる場合もあります。

 この白鳥は、大神ゼウスがスパルタのレダを見初めた時に、レダに近寄るためにゼウスが化けた白鳥だと伝えられてします。

 白鳥の頭の部分に位置する星はアルピレオと呼ばれていますが、機会があればアルピレオを天体望遠鏡でのぞいてみましょう。この星は非常に美しい2重星で、金色とエメラルド色の星が並ぶ姿には、思わずため息が出てしまいますよ。

や座

 先に出てきたわし座のアルタイルと、はくちょう座のアルピレオを結んだ中間付近に、や座という小さな星座があります。星も4等星の暗い星がメインですが、ていねいに見てみると、「なるほど、矢だ!」と驚かされます。
 こんなさえないや座ですが、非常に有名な話があります。キューピッドの矢を受けると、最初に見た異性を好きになるという話を聞いたことはありませんか? そう、キューピッドの矢は、実はこのや座のことだったんですよ。

こぎつね座

 こぎつね座もや座と同様に小さな星座です。そしてや座以上に明るい星も少なく、全くつかみどころのないさえない星座です。

 でもこぎつね座にはメシエ番号27番の亜鈴星雲があります。双眼鏡でもその存在がわかる明るい惑星状星雲で、天体望遠鏡で見ると、「丸いせんべいを両側からかじった」形に見えるユニークな星雲です。機会があれば、天体望遠鏡で一度ご覧になってください。

いて座

 南天の沸き立つ天の川の中に、半人半馬の姿に描かれているのがいて座です。野蛮なケンタウロス族の中にあって、優しくて賢いケイローンの姿だとギリシャ神話は伝えています。
 いて座のメインとなる6つの星は、その配列から、北天の北斗七星に対して南斗六星と呼ばれています。でも北斗七星に対して、星の明るさや規模の点で見劣りするのは否めません。
 いて座の中に銀河系の中心方向があるだけに、天の川も最も太くて濃くなっています。M8(干潟星雲)、球状星団のM22を初めとし、星雲や星団がいっぱいですので、双眼鏡や天体望遠鏡で眺めていても興味は尽きません。

夏の大三角

 大三角は春、夏、冬、それぞれにありますが(秋は大四辺形)、最も細長い形をしているのが夏の大三角でしょう。そして濃い天の川を背景にしているだけに、一番迫力があるように思います。7月中旬の21時前後でしたら、ほぼ真東の高度40度から60度付近に見えます。こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つの1等星で形作られています。夏の大三角が東の空から昇ってくると、いよいよ夏だなあと感じます。