秋本番 2003年10月 

 10月になるといよいよ秋も本番を迎えます。気候もすっかりよくなり、スポーツ、読書、行楽にと、何をするにも快適な季節ですね。日本列島は、大型の移動性高気圧に覆われる日が多くなるため、晴れた日が多くなる上に、透明度が高くなってきて、天体観測をするにはもってこいの季節となります。さあ、あなたも美しい星空のもとで、秋の夜長を楽しんでみませんか。

注)このページの星空の様子は10月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます(月や惑星は除く)。また、明石以外でも日本国内であれば、見え方にそれほど違いはありません。

  9 月15日23時
  10月 1日22時
  10月15日21時
  11月 1日20時
  11月15日19時

全天のようす

10月15日21時 全天のようす
10月15日21時 全天のようす

 さすがに10月となると秋の星座でいっぱいになりました。秋の星座は明るい星が少ない上に、夏の星座が華やかだっただけに、何か少し寂しい感じがします。

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女 : 秋の星座を見ていると、なんだか私まで寂しくなっちゃうな。
男 : 寂しくなんかないよ。ほら、僕がそばにいるから。
女 : どこかで聞いたセリフね。その手にはのらないわよ。
男 : ガーン!

つる:−−>ケッ、ケッ、ケッ。ざまーみろ。
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西の空

10月15日21時 西の空のようす
10月15日21時 西の空のようす

 西の空は先月に引き続き、夏の星座でいっぱいです。
 真西の空低くにはへびつかい座が見えます。しかし、下半身はすでに地平線の下へ沈んでしまい、上半身だけが見える格好です。へびつかい座の右側にあるヘルクレス座も高度が下がってきて、H型を横向きにしたような格好をしています。

 視線を上の方へとずらしていくと、大きな夏の大三角が目に止まります。先月は天頂付近に見えたのですが、こちらも西の空へと傾いてきました。おかげで、見上げるのに首が痛くなくてすむので助かります。夏の大三角の真ん中を通る天の川は、高度が下がってきた分、先月に比べると条件は悪くなりますが、それでもまだなんとか見ることができると思います。

南の空

10月15日21時 南の空のようす
10月15日21時 南の空のようす

 10月の南の空は秋の星座で一色といった感じです。

 真南よりやや西側(右側)には、秋の星座の先頭バッターのやぎ座が見えます。逆三角形に並んだその星の並びは、寂しい秋の星座の中では意外と目につきます。真南の方向にはみなみのうお座が見えます。みなみのうお座は、とりたててわかりやすい星座というわけではないのですが、秋の唯一の1等星フォーマルハウトがあるので、位置を確認するのは簡単です。しかし、フォーマルハウト以外はみな暗い星ばかりなので、全容をつかむには骨が折れます。

 みなみのうお座の上方で南中しているのはみずがめ座です。美少年ガニメデスの持つ水瓶から水が流れ出し、みなみのうお座の口へと流れ落ちる姿を想像するには一番よい時期であるはずなのですが、いかんせん、こちらもまばらに並んだ暗い星々からその様子を連想するのには、かなり骨が折れるでしょう。

 東から南東の空にかけては、全天で4番目の広さを持つくじら座が進出してきました。くじら座はギリシャ神話では悪役スターとして登場するのですが、まばらに点在する星の並びから凶暴な化け鯨を想像しても、ちょっと迫力に欠ける気がしないでもありません。

くじら座

 くじら座の鯨はギリシャ神話では凶暴なお化け鯨とされいます。しかもその姿は鯨というよりもセイウチに似たような格好をしています。ある時、お化け鯨はアンドロメダ姫に襲い掛かるのですが、偶然そこを通りかかった秋の星座の英雄、ペルセウスによって退治され、石になってエチオピアの海へと沈められてしまいました。

 くじら座も他の秋の星座と同様に、あまり形がはっきりしませんが、秋の星座の中にあっては、まだましな方です。いちばん右はしの2等星デネブ・カイトスが比較的目だっていますので、これを頼りにお化けくじらの姿をたどってみましょう。デネブ・カイトスの方が鯨のしっぽになり、その反対側(上の絵では左側)が鯨の頭になります。

 お化け鯨の心臓部付近には、ミラという変光星があります。約11ヶ月の周期で2.5等星から10.5等星まで明るさが変わるという奇妙な星です。

天頂の空

10月15日21時 天頂の空のようす
10月15日21時 天頂の空のようす


 今月の天頂方向の星座はとかげ座です。といっても暗い星ばかりで形もはっきりしないので、いまいち面白くありません。天頂付近で一番目立つ星座はペガスス座かもしれません。ペガススの四辺形が天頂付近にまで上り詰めてくると、秋もいよいよ本番です。
  

東の空

10月15日21時 東の空のようす
10月15日21時 東の空のようす

 10月の東の空は秋の星座が主な部分を占めていますが、冬の星座も一部で顔を見せ始めました。

 天高くにはペガススの四辺形が見えますが、そこから左下の方向へ2等星が等間隔で3つ並んでいるのが目に止まりますが、この付近がアンドロメダ座になります。しかし、ここからお姫様の姿を想像するにはちょっと難があるように思うのは、つるちゃんだけでしょうか?

 アンドロメダ座の左下方向には、秋の星座の英雄ペルセスウ座があります。また、アンドロメダ座の下側にはおひつじ座やさんかく座といった星座も見えています。 ペガススの四辺形の下側からは暗い星でできたうお座が高度を上げてきました。

東の空の低い位置には、おうし座やぎょしゃ座といった冬の星座が顔をのぞかせてきましたが、まだ10月です。ちょっと気が早いので、こちらは来月以降に解説することにしましょう。

うお座

 ペガススの四辺形の南から南東にかけて、3等星から5等星くらいの小さな星たちがウネウネとつながっていますが、これがうお座です。こちらも暗い星ばかりで大変なのですが、暗い空のもとで見ると、案外星の並びをたどりやすくて、以外と簡単にひもでつながれた2匹の魚の姿が浮かび上がります。しかし、明るい都会の夜空では望むべくもありません。

 ギリシャ神話では、愛と美の女神アフロディーテとその子エロスが、テュホンという怪物に襲われた時に、親子で手をつないで川へ逃げ込んだ姿だとされています。

おひつじ座

 おひつじ座は黄道12星座のトップバッターとして有名な星座ですが、主星のハマル以外は特にこれといって目立つ星もありません。ここから金毛の空飛ぶ羊を想像するのは、かなりの想像力が必要でしょう。

さんかく座

 アンドロメダ座の下側あたりに、3等星2つと4等星1つでてきた、細長く小さなかわいらしい三角形があるのですが、これがさんかく座になります。形がつかみにくい秋の星座にあっては、ある意味この星座が一番形がはっきりしているといえるかもしれません。

 さんかく座は小さな星座ですが、この星座を有名にしているのはM33と呼ばれる小宇宙(銀河)です。M33はM31(アンドロメダ大星雲)に次いで明るい銀河なのですが、その明るさは6等級です。最高の空のもと、目のいい人なら肉眼でも見えるそうですが、つるちゃんの視力では無理なようです。かなり拡散した天体なので、空が悪いと双眼鏡でも難しい場合があります。さて、みなさんはいかがでしょうか。

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(そんなん、普通の人に見えるわけないやろ)
つる:−−>それを見ようとするのが楽しいんやないか。
(オレにはわからん。この天文オタク!)
つる:−−>みなさん、つるちゃんは素人です。お間違えのないように!
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ペルセウス座

 北東の空を見上げると、秋の星座のしんがりをつとめるペルセウス座が見えます。ペガススの四辺形からアンドロメダ座への延長方向をたどるのがわかりやすいと思います。ペルセウスといえば秋の星座の英雄で、アンドロメダ姫を救った話は有名ですね。また、メドゥサ・ゴルゴンという怪物は、ナント、髪が蛇でできていて、その目にみつめられると石にされてしまうという恐ろしい怪物でしたが、そのメドゥサ・ゴルゴンを退治したのもペルセウスです。

 ペルセウス座のβ(ベータ)星はアルゴルと呼ばれています。この星は3日弱の周期で2.3等から3.5等の範囲で明るさを変える変光星です。上の絵では高度40度弱に見える2つの2等星のうち、右側の星がアルゴルです。アルゴルの意味は悪魔の星。昔、星は不変なものと考えられていただけに、アルゴルの明るさが変わるのは気味悪がられたそうです。実際には2つの恒星が回り合っていて、日食のような現象をひき起こすために見かけの明るさが規則正しく変化しています。