10月1日1時、11月1日23時、12月1日21時
くじら座の見え方 |
くじら座付近の星図 |
ギリシャ神話に登場するくじら座の鯨はただの鯨ではありません。大きなアザラシのような体をしている上に、カギのような爪のある2本の手が生え、アンドロメダ姫を襲ったという恐ろしいお化け鯨です。しかし最後には、ペルセウスにメドゥサの首を目の前に突きつけられました。すると、お化け鯨はたちまち石になってしまい、海の底に沈んだのだそうです。
くじら座は東西に50度、南北に25度という広い範囲にわたっており、全天で4番目に大きな星座です。といっても明るい星があるわけでもなく、ちょっと鯨の姿を想像するのは難しいかもしれません。一番明るい星はβ星のデネブカイトスですが、これはアラビア語のザナブ・カイトゥス・アル・ジャヌービーからきており、くじらの南の尾を意味します。ですからβ星が鯨のしっぽになります。反対側のα星はメンカルといいますが、アラビア語で鼻を意味しており、こちらが鯨の頭です。
鯨のちょうど首のあたりには、ラテン語で不思議という意味を持つミラという星があります。ミラの明るさは約11ヶ月の長い周期で2等星から10等星まで大きく変化する変光星です。変光星が広く知られていなかった時代には、星の明るさは不変であると考えられていただけに、さぞかし「不思議」な星に思えたことでしょう。
ミラが変光するのは、末期を迎えた星自体が不安定になり、太陽の440倍もある直径が変化し、星自体が縮んだり膨らんだりしているためです。赤色巨星に変光星が多いのはこのためです。このような星は脈動星と呼ばれており、さそり座のアンタレスやオリオン座のベテルギウスはその良い例です。
くじら座τ星はお化け鯨の下半身に位置する3.5等星です。くじら座τ星は太陽と同じタイプの恒星であることから、波長21mの電波を使って宇宙人からのメツセージを探ろうという、オズマ計画の対象星とされたことで有名です。2012年12月にはハビタブルゾーン(液体の水が安定して存在できる領域)に惑星が発見されたことから、再び注目を集めています。
くじら座にあるM77はセイファート銀河として知られています。セイファート銀河は活動的な銀河で、中心部に巨大なブラックホールがあり、大量の物質を吸い込むときに強いX線や電波や赤外線を放っています。セイファート銀河はクェーサーやとかげ座BL天体と似たような天体であると考えられています。M77は口径が5cmくらいの双眼鏡や天体望遠鏡でも存在だけなら確認することができますから、一度ご覧になってみてください。