金環日食・部分日食の直前ガイド

 2012年金環日食がいよいよ目前に近づいてきました。この文章を書いている現在で、あと2日もありません。「自分も金環日食や部分日食を見てみたい!」と急に思い立って大慌てされている方がおられるかもしれません。そんな方のために、このページ「金環日食・部分日食の直前ガイド」を作りました。と言いつつ、つるちゃん自身も自分の観察準備が全然できていなくて、大慌てしています!(泣)

 本当はもう少し早い目にこのページを作りたかったのですが、金環日食が近づくにつれて忙しさが増してきて、本当に直前になってしまいました。ごめんなさい!

金環日食は金環帯でしか見られない!

 「金環日食が見られます!」と連日のようにテレビや新聞やラジオなど、マスコミで大きく報道されています。これを聞くと日本中で金環日食が見られると思われるかもしれません。しかし残念ながら、それは違います。金環日食は金環帯とよばれる細い帯状のエリアでしか見ることができません。金環帯の拡大図をご覧ください。

金環帯の図。NASAのエクリプス・ウェブサイトを開きます

場所による見え方の違いのキホン

 金環日食とひとことで言っても場所によって見え方が違います。金環帯の中に入ると金環日食が見られますが、それ以外の地域では部分日食となります。また、金環日食が見える場所であっても、中心線との位置関係によって、見え方が違ってきます。

中心線付近
中心線に近い新宿での欠け方。真円に近いリング 中心線に近いほど金環となる継続時間が長くなります。2012年金環日食では最も長い場所だと5分くらい金環日食が見られます。また中心線上では太陽のリングが同心円状となります。
 左の画像は中心線に近い東京都新宿区の場合です。太陽の金環が真円であることがわかります。
限界線付近
限界線に近い明石での欠け方。きわどい金環日食 金環帯の内側から限界線に近づくほど金環継続時間が短くなります。金環帯の端の方では、少し場所が違うだけでも継続時間が大きく違ってきます。金環日食の継続時間は短いですが、ベイリービーズが長く続くといわれています。
 左の画像は北限界線に近い兵庫県明石市の場合です。きわどい金環日食であることがわかります。
金環帯の北側と南側
甲府と館山で見た金環日食。細いリングの向きが逆になっている 2012年金環日食を日本付近で観測する場合、中心線よりも北側では最大食の頃になると太陽の右下が細くなり、中心線よりも南側では左上が細くなります。部分日食についても同じように、最大食の頃に見ると、中心線よりも北側の地域では太陽の右下方向が欠けますが、南側の地域では左上方向が欠けて見えます。
 左の画像は、左から山梨県甲府市と千葉県館山市の場合です。太陽のリングが細くなった向きが逆になっていることがわかります。
中心線からの距離による見え方の違い
 中心線から距離が離れるほど食分が小さくなり、太陽の欠け方が小さくなります。逆に中心線に近づくほど食分が大きくなって大きく欠けます。また金環日食の場合は、中心線に近づくほどリングの形が真円に近づきます。

日食の時刻を調べておこう

 日食がいつから始まっていつ終わるのか。日食の時間は観測地点によって異なるだけに、おさえておかなければならない重要なポイントです。金環日食がいつ始まっていつ終わるのか。最大食の時刻は? このあたりがわかっていないと、日食観察の計画が立てられません。「つるちゃんのプラネタリウム」では各地の見え方で、市町村別に解説していますので、ぜひご覧ください。

東が開けた観測場所を探そう

観測場所のイメージ写真 5月21日の日食は朝方に起こります。日本国内では地域によらず、東の方角が見張らすことのできる場所で観察することが絶対条件です。特に日本でも西に位置する地域では日の出時刻が遅いため、その分だけ太陽が低い位置での観測になります。
 例えば福岡市では日食始まり時刻の高度は11度しかありません。大人が腕をいっぱいに伸ばして作った「げんこつ」一つ分ほどの位置です。東の方向が広く見渡せる場所を探しましょう。日食を観察する場所も参考にしてください。

日食は肉眼では見られない!

 今回は金環日食や大きな部分日食になるので、普段はまぶしい太陽でも見やすくなるのでは? なんて考えたら大間違い!!! 日食網膜症とよばれる目の障害を引き起こしてしまい、へたをすると失明してしまうかもしれません。肉眼だけでは日食を観察することはできないのです。

日食グラスや日食メガネを準備
日食メガネの写真 実際に日食を観察するためには日食グラス日食メガネとよばれる、太陽観察用の特殊なフィルターが必要です。これはブルーライトをはじめ、赤外線や紫外線など、太陽からやってくる目に有害な光をカットしてくれます。黒い下敷きや濃いサングラスなどで代用することはできません。絶対に使用しないでくださいね。
 販売されている日食グラスや日食メガネの中には粗悪品もあります。蛍光灯の形がわかるくらいに透けて見えたり、強い光にかざすと表面に細かいひび割れがあるものは、使用しない方がいいですよ。
書店に並べられた金環日食ガイドブックの写真。日食メガネが付属するものも多い日食ガイドブックで日食メガネをゲット
 「え〜っ。今からネットで日食メガネを買っても金環日食の5月21日に間に合わないよ。」と言われそうですね。そんなあなたは、書店にダッシュ! 日食ガイドブックが何種類も発売されており、金環日食コーナーが設けられていることも珍しくありません。

 これらの本には日食メガネが付属するケースが多くなっています。「金環日食とは」から始まり、太陽の欠け方や時間、観察方法などが書かれています。日食のことを勉強できる上に日食メガネも手に入るなんて、とてもオイシイ話だと思いませんか? 早い者勝ちですから、とにかく急いでくださいネ。
 日食グラスや日食メガネは家電量販店でも取り扱っているケースが多いようですから、ダメもとで一度お店に行ってみられてもいいかもしれません。
ピンホールを使う
 日食グラスや日食メガネが準備できなかった場合はどうすればよいか。そのときはピンホールを使いましょう。ピンホールとは小さな穴のことで、この穴を通すことによって、太陽が欠けたようすを映し出すことができます。ピンホールを太陽に向け、黒い紙を敷いて映し出すとわかりやすいでしょう。また、木もれ日を使うことも考えられます。葉と葉の間にできた隙間が天然のピンホールになるというわけです。

暗くならない金環日食

 金環日食や大きな部分日食では周囲が暗くなる? 実は思ったほど暗くなりません。カメラのオートで撮影しても風景が普通に写りますし、空だって思ったより明るいものです。金環日食では空が意外と暗くならないのです。

金星を見よう

 日食中の空が意外に明るくても、星が見えるかも!? 下の星図をご覧ください。最大食の頃に東京から見た空のようすです。リング状になった太陽の左下方向、地平線との中間付近に、金星を見つけることができるでしょう。金星は惑星の中で最も明るく、光度はマイナス4等に達します。でも金星以外の星を見つけるのは難しいでしょう。日食中に見える星のページも参考にしてください。

東京で金星が見える位置

日食を撮影しよう

 なかなかお目にかかれない珍しい金環日食や大きな部分日食が見られるということで、ぜひカメラにおさめたいという方も多いでしょう。でも日食撮影は肉眼観測と同じで、フィルターなしで撮影することはできません。フィルターなしで撮影できないのは、ケータイのカメラやスマホのカメラ、デジカメや一眼レフなど、カメラの種類によるものではありません。そもそも太陽の光が強すぎるのです。無理に撮影するとカメラが壊れてしまうかもしれませんよ!

 日食を撮影する場合はNDフィルターという日食撮影用フィルターが発売されていますので購入してください。入手できない場合はどうするかって? その場合は邪道だと承知の上で、日食メガネのフィルターを使う手があります。コンパクトデジタルカメラのページにある「フィルターについて」を参考にしてください。

それではみなさんの健闘と、天気が晴れることをお祈りします!!!


つるちゃんのプラネタリウム 金環日食の解説 2012年5月21日