8月の星空 夏の天の川!

 いよいよ夏本番の8月。夜空の方も夏の星座が全部出そろって、こちらも夏本番となります。7月の七夕祭りの頃だと、夏の天の川は高度が低くて見づらかったのですが、8月になると高度も上がってきて、淡い天の川は見やすくなります。暑い日ばかりで大変ですが、夕涼みがてらに夜空を見上げてほっと一息、なんていうのもいいかもしれません。

    7月15日23時
    8月 1日22時
    8月15日21時
    8月31日20時
    9月15日19時

西の空

 西の空では、先月までかろうじて見えていた春の星座も、さすがに8月になると、そのほとんどは西の空へ沈んで見えなくなってしまいました。ただひとつ、うしかい座の1等星アークトゥルスだけが、30度あまりの高度でがんばっています。その上方にはかわいい半円形をしたかんむり座が見えます。

 てんびん座やへび座といった、夏の先陣ともいえる星座たちは、早くも南西の空へと移動して高度を下げてきました。

8月15日21時 西の空

南の空

 8月の南の空は7月に引き続き、夏の星座第2段といった感じです。

 南から南西の空にかけては、低い高度にさそり座のS字型が見えています。その上方には大きな五角形のへびつかい座と、それを取り巻くへび座があります。医神アスクレピオスと、アスクレピオスがつかんでいる蛇の姿を思い描くには、へびつかいの五角形が立った形に見えるこの時期が一番良いかもしれません。先月のさそり座にかわって、今月はいて座が真南の空に見えています。いて座の主星となる6つの星は南斗六星と呼ばれていますが、北西の空低くに見える北斗七星と見比べてみるとおもしろいでしょう。

 さそり座からいて座付近で最も濃くて幅が広くなる天の川は、南の空で立った状態で見えています。その天の川に沿って上方へと視線を移すと、天の川の東のほとりで光る1等星が目につきますが、これはわし座のアルタイルです。七夕の彦星さんで有名すね。わし座の東隣には、夏の星座のラストバッターとなる、かわいい小さないるか座が見えてきました。

 南東の空低くからは、逆三角形の形をした秋の星座のやぎ座も登場してきました。

8月15日21時 南の空

夏の風物詩 −さそり座と夏の天の川を見よう−

 ほぼ真南で南中しているいて座のやや西側(右側)にはさそり座が見えます。さそり座には真っ赤な1等星アンタレスがあり、さそりの心臓部に位置しています。そして、横向きになりながら大きくS字型に並んだ星々。うまい具合にさそりの毒針の部分まで星がきれいに並んでいるので、「なるほど、本当にさそり座だ」と感心させられます。みなさんもさそり座を見られると、「ほーっ」と、うなずかれることと思います。

 たまにアンタレス付近を惑星が通過することがあるのですが、赤色をした火星がアンタレスに近づいた際、火星とアンタレスと、果たしてどちらが赤いのか、比べてみるのも面白いと思います。

 8月頃には天の川が南の空で縦方向に立って見えており、天の川を見る絶好の季節です。銀河系の中心がいて座の方向にあるため、いて座からさそり座付近で最も幅が広くて濃くなっています。特にいて座の少し右側付近ではひときわ濃くなっており、スタークラウドと呼ばれています。双眼鏡でもあれば、付近をのぞくと「あっ」と声が出るほどの美しさです。天の川を見たことがない方は、この季節にぜひ挑戦してみてください。

北の空

 北極星のある星座はこぐま座ですが、こぐま座の星の並びをよくみると、ちいさなひしゃく形をしているのがわかります。おおぐま座の北斗七星は有名ですが、こぐま座のひしゃく形は意外と知られていません。小さな星が多いのですが、一度じっくりとご覧になってみてください。

 北西の空では、その北斗七星が斜めを向いて、水をすくい上げる時のような格好をしています。北極星をはさんだ反対側には、W字型で有名なカシオペア座が北東の空から昇ってきました。この時期は北斗七星とカシオペア座の両方が見えるので、北極星を探すのに苦労はありません。カシオペア座の上方には、つぶれた五角形をしたケフェウス座も見えています。

 8月といえばペルセウス座流星群の季節ですが、カシオペア座の下の方からペルセウス座流星群の輻射点(放射点)のあるペルセウス座が、ちょっぴりと顔をのぞかせてきました。

8月15日21時 北の空

ケフェウス座

 ケフェウス座の特徴はつぶれた五角形ですが、その形から古代エチオピアのケフェウス王の姿を想像するのは、簡単なことではありません。それどころか空の状態が悪いと、つぶれた五角形を探し出すことさえ難しい場合があります。

 とりたてて見どころもあまりないのですが、ケフェウス座にはガーネット・スターがあります。4等星なので肉眼だと色まではわかりませんが、双眼鏡で見れば、その色の異常さに驚かされます。本当に「ざくろ石」と呼ぶにふさわしい、赤紫色をしているのがわかります。

カシオペア座

 ギリシャ神話では、カシオペアはケフェウス王の妻です。また、アンドロメダ姫はケフェウス王とカシオペア王妃との間に生まれた娘です。

 カシオペア座のW字型はあまりにも有名ですが、2等星3個と3等星2個からなるその形は実に印象的です。しかし、ここからカシオペア王妃の姿を想像するのは、かなり骨が折れると思います。

 この時期のカシオペア座はW字型ではなく、少し斜めを向いた形をしています。カシオペア座をはじめとした全ての星座は、北極星を中心に回っているように見えるため、同じカシオペア座であっても、見る時間や季節が違うと見え方も変わってきますので注意しましょう。

東の空

 東の空高くには夏の星座が大きく陣取っていますが、東の空低くからは秋の星座が少しずつ顔を見せ始めてきました。南側から北側へ、順にやぎ座、みずがめ座、ペガスス座、カシオペア座が高度が30度付近で横一直線に並び、スタートダッシュするのを今か今かと待ち構えているようにも見えます。

8月15日21時 東の空

天頂の空

 8月に天頂付近に見えている星座は、小さな平行四辺形が印象的なこと座です。織姫星として有名なこと座のベガは、夏の夜空の最輝星です。本当に頭上で輝いているので、美しさに見とれていると首が痛くなってしまいます。

 天の川をはさんで、ベガをひとつの頂点とする1等星3個でできた大きな三角形は、夏の大三角です。夏の大三角は、天の川を背景にしているだけに、他の大三角よりも豪華に見えます。天の川ははくちょう座のデネブ付近で大きくふたつに別れて、南の空へと流れ落ちていくのですが、田舎の澄んだ空では、このようすがハッキリとわかります。一度ご覧になれば、その荘厳さに胸を打たれることと思います。

 天の川の中には、や座、こぎつね座、少し離れているか座といった小さな星座があります。天の川が高く上るこの時期に、こちらも一度見ておかれるとよいでしょう。

8月15日21時 天頂の空

や座

 わし座のアルタイルと、はくちょう座のアルビレオを結んだ中間付近に、や座という小さな星座があります。4等星の暗い星がメインですが、ていねいに星をたどると、「なるほど、矢だ」と驚かされます。

 あまりさえないや座ですが、非常に有名な話があります。キューピッドの矢を受けると、最初に見た異性を好きになるという話を聞いたことはありませんか? そう、キューピッドの矢は、実はこのや座のことだったんですよ。

こぎつね座

 こぎつね座もや座と同様に小さな星座です。そして、や座以上に明るい星も少なく、全くつかみどころのないさえない星座です。

 しかし、こぎつね座にはメシエ番号27番の亜鈴(あれい)星雲があります。双眼鏡でもその存在がわかるほど、明るくて大きな惑星状星雲ですが、天体望遠鏡で見ると、「丸いせんべいを両側からかじった」ような形に見えるユニークな星雲です。機会があれば、天体望遠鏡で一度ご覧になってください。

<恒星の凡例> <星雲・星団の凡例>
大きさにより1等星から6等星までを分類しています。 銀河、散開星団、球状星団、散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸などを分類しています。