火星の楽しみ方

 火星大接近を迎えるにあたり、火星の楽しみ方と題して、火星を見る際の10のポイントをお教えしましょう。

1.明るさに注目!

 火星の明るさは、7月下旬から9月下旬かけてマイナス2等星以上の明るさとなります。そして、最接近となる8月27日にはマイナス2.9等星まで明るくなり、非常に明るい光を放ちます。最も明るい惑星は、宵の明星、明けの明星で知られる金星ですが、火星はそれに次ぐ明るさとなります。しかし、最接近の頃の金星は、太陽の近くに見えるため、実際には簡単にお目にかかることはできません。

 一方、最も明るい恒星はというと、冬の星座であるおおいぬ座の輝星シリウスですが、そのシリウスでもマイナス1.4等星ですから、火星の明るさにはかないません。したがって、全ての恒星は火星よりも暗いことになります。そんなわけで、大接近する頃の火星は、まわりのどの星よりも明るく輝いて見えることになります。

2.火星は赤い星

 火星の特徴は、なんといってもその赤さ。不気味なほどに赤く明るく輝いています。近くには夏の代表的な星座であるさそり座が見えますが、さそり座の1等星アンタレスも赤い星。明るさでは火星の方が圧倒的な勝利なのですが、赤色という点では、ほんのわずかにアンタレスの方が赤いそうです。一度両者の赤さを見比べてみてはいかがでしょうか?

3.移動を観察

 火星は太陽の周りを回っている惑星のひとつですから、火星は星座を背景にして、日々少しずつ移動しています。1日の移動量はわずかですが、1週間くらい間隔を空けて観測すると、確かに移動していることがわかります。簡単なスケッチをしておくと、より確実にわかるでしょう。長期間にわたって観測すれば、宙返りする火星の動きまでわかると思いますよ。実際に火星がどんな動きをするかは、火星大接近徹底解説(その2)、または、火星経路の拡大図を参照してください。生徒さんなら夏休みの宿題の題材にいいかもしれませんね。

4.観測会へGO! −天体望遠鏡で観測しよう

 火星は肉眼で見ているだけでも楽しいのですが、何度か見ていると、やはり天体望遠鏡で火星を見てみたくなります。

 でもぉ、天体望遠鏡はぁ、高そうだしぃ、難しそうだしぃ・・・。グスン。

 そんな時には、天文台や天文同好会で開催されている観測会へ参加してみましょう。タダか格安料金で、大きな天体望遠鏡で火星を見せてもらえますよ。

 次の5番からは、観測会へ火星を見に行くことを想定した時のポイントです。

近くの天文台をリンク集から探して、観測会の日程を調べてみましょう。


(なにが、グスンや。今度は少女チックか?)
つる:−−>(体をくねらせながら)もう、いやーねぇー。
(ゲロゲロ・・・)

5.天体望遠鏡で火星の模様を調べてみよう

 まずは観測会の時間帯には、火星のどのような模様が見えているのかを事前に調べておきましょう。それというのも、火星は自転をしているので、見る日にちや時間が違えば、見える火星の模様も違ってきます。

 火星の最も濃い模様は大シュルティスといいます。大シュルティスが火星の中央付近にきて見やすくなるのは、21時頃なら8月12日頃、0時なら8月16日頃、3時なら8月21日頃となります。

 それから、火星の模様は、濃い側と薄い側があることも覚えておきましょう。模様が薄い側の火星を見ていても、あまりはっきりと模様はわかりません。もし可能であるならば、濃い模様が見える日時に合わせて観測できればベストです。といっても、ご自身の都合や天候との兼ね合いもありますので、実際にはなかなかうまくいきませんけどね。

 8月の火星の模様の変化は、火星大接近観測ガイド(その3)をご覧ください。

天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム フリー版では、火星の模様を簡易的に表示することができます。
  ・メニューバーの[表示]−[惑星]−[惑星の形]−[火星] により表示します。

6.火星の高度を調べておこう

 少しでも良い状態で天体望遠鏡で火星を見るためには、火星の高度が大切です。火星が地平線から昇ってきた頃はまだ高度が低いため、地球の大気の影響を受けやすくなります。仮に天体望遠鏡でのぞいたとしても火星の像は視野の中でユラユラと動いて、火星の表面模様どころの話ではありません。少しでも高度が高くなった頃をみはからって火星を観測するようにしたいものです。

 そういった意味では、大接近前後の観測会では、先頭に並んで早い時間帯に見るよりも、遅い時間に出かけた方が火星の高度が上がっていて、少しでも良い条件で見ることができます。でも、観測会の終了時刻にはご注意を。

 また、天体望遠鏡で火星を見るのは、できるだけ大気の落ち着いた日を選ぶようにしましょう。

(遅い時間に行ったら、雲が出てきて見えへんかったぞ。どないしてくれるんや。)
つる:−−>そんなもん、知るかいな!!!

7.期待し過ぎないように

 さあ、いよいよ観測会へ行くぞ、と気分が盛り上がってきたあなた。冷水を浴びせるようで申し訳ないのですが、天体望遠鏡で見た火星の像は、非常に小さなものです。感覚的に言えば、米粒より小さいと思っておいて間違いないでしょう。おまけに、大気の影響を受けて、像がユラユラして落ち着かないこともしばしばです。もともと火星の模様は、非常に淡くて見えにくいものです。ですから、初めて見た人は「なんやこれー、ただの赤い丸やんか」と思うのが実感だと思います。

 そりゃ、そうです。地上からそんなに火星が大きくはっきりと見えるなら、わざわざロケットを火星に送り込む必要はないと思いませんか?

8.天体望遠鏡をのぞいてみよう

 さて、感動と失望の予感が入り乱れる中(?)、いよいよ観測会で天体望遠鏡をのぞいてみましょう。
 まず、強烈に明るくて赤い星が視野に飛び込んできますが、これが火星です。火星は小さな円形に見えているはずです。

 ここで、あわててはいけません。火星をしっかりと見るためには、はずはピントを合わせなければなりません。ピントの合わせ方は望遠鏡によって異なりますが、普通はのぞく場所(接眼レンズといいます)の近くに小さなハンドルがついており、これを回すことによってピントを調整します。わからなければ、係りの方に聞いてみると教えてもらえます。重ねて言いますが、火星の輪郭がクッキリとわかるようになるまで、ピントはしっかりと合わせてください。

 ピントは合いましたか? 先に書いたように、火星の像は非常に小さなものですから、よく目を凝らして見てみましょう。赤い表面のところどころに、薄い黒っぽい影があるのがわかります。これが火星の表面模様です。

 たいていの場合、大気の影響により、火星の像はユラユラと小刻みに揺れて見えますが、瞬間的に像がクッキリと見えることがあります。この時の映像をしっかりと目に焼きつけるようにします。といっても、なかなか難しいのですが、慣れてくるとコツがつかめてきて、細かい模様まで識別できるようになってきます。

 それから、火星の極付近に白く光るものが見えたら、それは火星の極冠です。極冠は氷の塊かドライアイスのようなものでできていると考えられています。火星の南半球は夏を迎えますので、極冠は日が経つにつれて次第に小さくなっていき、ついには見えなくなってしまいます。

 ここで、ひとつ心配なことがあります。それは大黄雲という現象です。これは、火星に発生する砂嵐ですが、大規模に発生すると、火星表面は砂塵に覆われて、火星の模様がサッパリ見えなくなってしまいます。前回2001年の接近時には大黄雲が発生し、火星の模様がほとんど観測できなくなってしまいました。今年も7月5日に黄雲が発生したとの情報があるだけに、非常に気になるところです。

9.昔の人が見た火星を想像してみよう

 その昔、スキャパレリやローウェルは、天体望遠鏡で無数といってもいいほどの運河を観測したと言われています(火星大接近徹底解説(その1)を参照)。そのため、火星には優秀な頭脳を持った火星人がいて、運河を網の目のように張り巡らし、渇水をしのいでいるのだと考えられました。火星人の話の発端はここからきているんですよ。

 現在では無数の運河などは存在しないことが確認されていますが、スキャパレリやローウェルが見た火星を想像しながら火星の像をながめてみるのも楽しいと思います。

10.自分の天体望遠鏡で・・・

 観測会へ行けば天体望遠鏡で火星を見ることはできるのですが、他に多くの方が来られているので、何十分間もじっくりと火星を観測するというわけにはいきません。また、ご自身の都合のいい日に観測会があるとは限りません。

 そんなぁ、やだぁ、どうすればいいの? グスン。

 天体望遠鏡を買えばいいんですよ!

 天体望遠鏡もピンキリで、安いものは2万円くらいから、高いものはウン百万円まで、本当にいろいろあります。大きく分けると、本体は屈折式反射式、架台は経緯台式赤道儀式に分かれます。それぞれ人によって好みが分かれるところですが、火星を見るということに限れば、架台は赤道儀式が絶対に有利です。

天体望遠鏡の購入を考えられている方は、「天体観測入門」の中にある天体望遠鏡の選び方を参考にしてください。

それでは、5万7千年ぶりという火星の超大接近を満喫しましょう!!