注意:この特集に出てくる彗星の詳細位置や光度は、今後の観測によって大きくずれる可能性がある点をご了承ください。特に光度に関しては、あいまいな要素が多いので、注意が必要です。
最近2つの新彗星、ニート彗星(C/2002 V1)と工藤・藤川彗星(C/2002 X5)が発見され、1月上旬から3月の上旬にかけて、相次いで観測しやすくなることがわかりました。そこで、今回は「年初から彗星三昧?」と題して特集記事を組んでみました。
彗星の多くは、太陽系最果ての惑星である冥王星よりもはるか遠くからやってくる、汚れた雪だるまのような天体だと考えられています。太陽から離れている間は、太陽の光を反射して光る小さな星のようにしか見えませんが、太陽に近づいてくると、一転します。太陽の強い光のために表面が熱せられて、水蒸気やチリが噴き出してきます。これが彗星の尾となって、地球から観測されるのです。
しかし、彗星自体の大きさが小さかったり、太陽に熱せられ方が足らなかったりして、肉眼で見えるほど明るくなり、尾をたなびかせるような彗星は、そんなに多くありません。むしろ、非常に少ないと言った方がいいくらいです。
ニート彗星は、観測ガイドの中にあるニート彗星が明るい(2002V1)で既に紹介したとおりです。そこへきて、12月14日に、工藤・藤川彗星が日本人2人によって発見され、明るくなりそうだということがわかりました。日本からは、ニート彗星は2月の中旬頃、工藤・藤川彗星は1月の上旬頃に、それぞれ見やすくなりそうです。
まずは、2つの彗星の軌道から見ていくことにしましょう。下の絵は彗星の軌道のうち、地球付近の部分を拡大したものです。
太陽系で一番内側を回っているのは水星ですが、ニート彗星の軌道は、その水星よりもはるか内側を通過していることがわかります。したがって、太陽に接近した頃には激しく熱せられて、かなり明るく輝く可能性を秘めています。しかし、それゆえに彗星自体が崩壊してしまう恐れもあります。
一方、工藤・藤川彗星の場合は、太陽系を北から南へ串刺しにしたような軌道を描いています。そして、こちらもニート彗星ほどではありませんが、太陽にかなり接近する軌道であることがわかります。
ニート彗星と工藤・藤川彗星の軌道図 |
下の絵は、ニート彗星と、工藤・藤川彗星の経路を表示したものです。尾は若干誇張して描いています。両彗星とも徐々に南下し、秋の星座から冬の星座へと移動していくことがわかります。
ニート彗星(C/2002 V1)と、工藤・藤川彗星の経路 |
下の絵は、日の出時刻における工藤・藤川彗星の位置を示したものです。実際には、日の出よりも前の時刻でないと、空が明るくて、彗星を観測することはできません(つまり、彗星の高度は絵よりも低くなるということです)。
工藤・藤川彗星は1月上旬から中旬にかけて、少しずつ高度を下げながら、5.7等(1/1)、4.5等(1/10)、2.2等(1/20)と、増光していきます。尾の方ですが、地球との位置関係から、あまり長くは伸びないと思われます。
なお、1月上旬頃は、夕方の西空でも工藤・藤川彗星を観測することができます。しかし、条件的には明け方の東天の方が高度が高くて観測はしやすいでしょう。夕方西空での工藤・藤川彗星の位置は、「2月下旬からは再び工藤・藤川彗星」の絵を参照してください。
日の出時、東天の工藤・藤川彗星の位置 |
1月の下旬からはニート彗星が活躍します。1月下旬から2月中旬にかけて、彗星の高度は一気に低くなっていきますが、光度の方は一気に明るくなります。しかし残念ながら、ピークの頃には彗星の位置が太陽に近くて、観測は困難となってしまいます。それでも2月の上旬から中旬頃には、彗星は肉眼でも見える明るさまで明るくなって、短い尾も観測できそうです。
日の入り時、西空でのニート彗星の位置 |
工藤・藤川彗星はいったん南下して太陽に近づき、日本からは観測できなくなりますが、2月の下旬になると、再び西空に顔を見せるようになります。その後彗星はどんどんと高度を上げていきますが、彗星の明るさは暗くなっていってしまいます。光度の方は、5.5等(2/25)、6.8等(3/7)と暗くなっていきます。尾の長さもあまり長くは伸びません。
下の絵では1月の工藤・藤川彗星の位置ものっていますので、参考にしてください。
日の入り時、西空での工藤・藤川彗星の位置 |
彗星を見る時の注意点は次のとおりです。
彗星は淡く拡がった天体です。光度が2等といっても、「淡い光を1点に集めると2等星くらいに見えますよ」という意味です。ですから、思ったよりもかなり見にくい天体であるということを、まず心にとどめておく必要があります。
毎度言っていることですが、淡い天体を見る場合には、ぜひとも空が暗い場所へ行くようにしましょう。見え方がウソのように違ってきます。空が明るい場所では、肉眼で彗星を見られるなどと、思わないことです。その場合は、双眼鏡や天体望遠鏡を用意しておいた方が無難でしょう。(もちろん、持ち合わせていればですが)
現地では、まず方角を確認してください。トンチンカンな方角を向いても彗星を見ることはできません。日が昇ってくる方角は東、日の沈む方角は西になります。当たり前のことなのですが、辺りが暗いと、案外わからなくてオロオロする場合があります。
方角を確認したら、目印になる星を探してみましょう。そして、目印にした星から彗星の位置をたどるようにします。やみくもに眺めているだけでは、なかなか彗星を見つけることはできません。しかし、それには星図が必要となりますね。でもご安心あれ。次にちゃーんと、用意しておきましたよ!
上で紹介した絵だけでは、星が表示されていないので、実際に彗星を探すときに苦労するかと思います。そこで、星図を用意しておきましたので、下のリンクを参照してください。
1月 4日(土) 夕方、西空の工藤・藤川彗星
1月 5日(日) 明け方、東天の工藤・藤川彗星
1月11日(土) 夕方、西空の工藤・藤川彗星とニート彗星
1月12日(日) 明け方、東天の工藤・藤川彗星
1月18日(土) 夕方、西空のニート彗星
1月25日(土) 夕方、西空のニート彗星
2月 1日(土) 夕方、西空のニート彗星
2月 8日(土) 夕方、西空のニート彗星
2月25日(火) 夕方、南西の空の工藤・藤川彗星
3月 4日(火) 夕方、南西の空の工藤・藤川彗星
ここで、当サイトならではの画像を紹介しましょう。ニート彗星から太陽系を眺めると、どのように見えるのでしょうか?
「つるちゃんの3D太陽系のシェア版」で描いた太陽系の画像を参照してください。
天文ソフト つるちゃんのプラネタリウム for Windowsへ彗星のデータを設定し、シミュレーションして観測条件などを調べてみてください。彗星のデータ設定はこちらを参照してください。
つるちゃんのプラネタリウム for Javaアプレットではさまざまなシミュレーションを行うことができます。
万能プラネタリウム
・星空を参照しながら、彗星の位置を確認できます。
・太陽や月の出没時刻などの基本情報も表示されます。
惑星の経路
・惑星をニート彗星か工藤・藤川彗星に設定すると、彗星の経路が表示されます。
・表示された経路をクリックすると、彗星の位置情報も表示されます。
内惑星の位置
・惑星をニート彗星か工藤・藤川彗星に設定すると、日の出、日の入り時の彗星の位置が表示されます。
・彗星の経路や他の惑星も表示できます。
3D太陽系
・彗星の軌道を3次元表示します。カッコいいよ。
観測情報
・彗星の位置、太陽との離角、出没時刻などの情報が一度にわかります。
2003年1月下旬から2月上旬
ニート彗星(C/2002 V1 NEAT)が明るい
2003年2月
ニート彗星と工藤・藤川彗星
2003年2月18日
ニート彗星(C/2002 V1 NEAT)が近日点を通過
それでは、彗星が明るくなってくれることを、みんなで期待しましょう。