2月の星空 南中する冬の大三角

 2月といえば年間を通して一番寒い月かもしれません。しかし夜空の方は、早くも春の星座がちらほらと見えはじめてきます。寒いのをがまんして、今月もちょっと夜空をのぞいてみましょうか。

注)このページの星空の様子は2月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます。また、東京以外でも日本国内であれば、見え方にそれほど違いはありません。

   1月15日23時
   2月 1日22時
   2月15日21時
   3月 1日20時
   3月15日19時

西の空

 2月の星空は、西の空に秋の星座、南から天頂にかけては冬の星座、東の空には春の星座という具合に、3つの季節の星座が同居した格好になっています。西の空では、1月までがんばっていた秋の星座も、さすがに2月になると、その多くは見えなくなってしまいました。

 やぎ座、みずがめ座といった星座は既に地平線下へと沈んでしまっていますし、ペガスス座、うお座、くじら座なども、地平線へ半分沈んでしまっています。高度30度付近に見えるおひつじ座の主星ハマルが、付近では意外と目立っています。それでも、ペルセウス座やカシオペア座といった、比較的天の北極寄りに位置する星座はなかなか沈まず、まだまだ見ることができます。

 先月あたりは高度が高過ぎてみづらかった、おうし座のすばるは高度が下がってきた分、少し見やすくなりました。肉眼で見た場合でも、普通の視力の人なら6個か7個の星の集まりであることがわかる大きな星団です。

2月15日21時 西の空

南の空

 2月頃には、南の空でちょうど冬の大三角が南中しています。1等星3つでできた大きな正三角形ですから、すぐにわかります。色に注目してみると、右上のオリオン座のベテルギウスは赤色、左上のこいぬ座のプロキオンは黄色(実際には白色に見えるかもしれません)、下側のおおいぬ座のシリウスは白色をしていますので、それぞれ注意して見てみましょう。

 ここで、南の地平線付近に注目してください。カノープスという星が見えています。これはりゅうこつ座の1等星で、全天でシリウスに次いで2番目に明るい星です。その明るさはマイナス0.7等ほどあるのですが、高度が低いため大気の減光を強く受けるので、意外と暗くなってしまいます。また、観測できる時間も短いので、非常に見づらい星として知られています。東方地方よりも北の地域では、この星は地平線に昇ってきませんので見ることはできません。そんなわけで、この星を見ることができると、天文ファンの間でもちょっと自慢できるのですよ。南の開けた場所でカノープスを見ることができるか、あなたも一度試してみられてはいかがでしょうか。

2月15日21時 南の空

北の空

 北の空では、真北の方角にはいつものように、不動の北極星が2等星で光っています。その北極星を両側から挟むように、北西の空にはW字型で有名な秋の星座のカシオペア座があります。また、北東の空からは春の星座の北斗七星が次第に高度を上げてきていて、だいぶ人目につきやすくなってきました。ちなみに、北斗七星は星座ではなくて、おおぐま座の一部ですから間違えないようにしてください。

 このふたつの星座から北極星を見つける方法はご存知ですか? 「知っていたけど忘れちゃったよ」という方もおられるかもしれませんね。探そう・・目印/惑星/星雲・星団から星空の目印を探そうの中にある北極星を参照してみてください。

2月15日21時 北の空

おおぐま座

 北東の方角に目をやってみましょう。かの有名な北斗七星が昇ってきています。北斗七星を含んだおおぐま座は一般には春の星座に分類されますが、意外と早い時期から見えていますね。北斗七星から北極星をたどる方法は有名ですが、春の大曲線の出発点もこの北斗七星になります。また、昔目試しに使われた2重星のミザールや、M81とM82、M97(ふくろう星雲)、M101(回転花火銀河)など多くの星雲があり、何かと話題が尽きない星座のひとつです。リンクをたどって調べてみましょう。

 ギリシャ神話では、熊にされた母親とも知らずに、その子供が熊を殺しかけた時、大神ゼウスがふたりを天に投げ上げてできた星座だといわれています。

こぐま座

 真北の空には北極星がありますが、その北極星はこぐま座に属してします。こぐま座の星をていねいにたどると、おおぐま座の北斗七星と同様に、小さなひしゃくの形ができあがります。星の数も7つあり、ふたつのひしゃくを比較してみると面白いと思います。

 星座絵を見ると、おおぐま座もこぐま座も、ひしゃくの柄の部分が熊のしっぽに描かれています。いずれのしっぽも長さが熊のしっぽにしてはずい分と長いのですが、これには理由があります。ギリシャ神話では、おおぐま座とこぐま座は、親子が天に投げ上げられてできた星座なのですが、天に投げ上げる時にしっぽをつかんで投げられたので、しっぽの部分が長く伸びてしまったのだそうです。そんなことを考えながらこのふたつの星座を見てみると楽しいですね。

東の空

 2月になると、東の空からは春の星座がぼつぼつと見えはじめてきました。かに座はすでに高度が60度に達し、しし座やうみへび座も勢いよく昇ってきています。この時期、まだまだ寒さは厳しいのですが、空の方は一足先に、春の気配がちらほら感じられるようになってきました。

2月15日21時 東の空

かに座

 春の星座のトップバッターはかに座です。冬の星座のしんがりであるふたご座のすぐ東隣に位置していますので、当然かもしれません。かに座は黄道12星座のひとつに数えられているので、有名な星座のひとつですが、明るい星が少なくて形もいまひとつはっきりしません。上の絵では南南東の空、高度60度付近に見えています。

 それでも、かに座を一躍有名にしている天体があります。それは蜂の巣を意味したプレセペ星団(M44)です。プレセペ星団は非常に明るく大きな星団で、空が暗い場所でこの付近を見ると、肉眼でも雲のような光の塊ががボーッと見えています。上の絵では星座名の「かに」が表示されている付近です。でも肉眼では星に分解するまでには至りません。しかし双眼鏡があれば、数十個の星が見えてきて大迫力です。一度は見ておきたい天体のひとつです。

 ギリシャ神話では、ヘルクレスがヒドラ(うみへび座)と戦う際に、女神ヘラがヒドラに加勢させるために送り込んだお化け蟹ですが、あっという間にヘルクレスに踏み潰されてしまったそうです。

うみへび座

 かに座の下あたりから南東の空に上下方向へ星がウネウネと連なっている部分がありますが、これがうみへび座です。目印はうみへびの心臓部に位置した2等星のアルファードでしょう。付近には明るい星が少なくて結構目立っていますから、あまり迷わないで見つけられると思います。うみへび座は全天で最も大きな星座で、頭からしっぽの先まで、全部が東の空から昇りきるのに7時間もかかってしまいます。さすがはギリシャ神話の英雄ヘルクレスを苦しめただけのことはありますね。うみへび座を端から端まで全部見ようと思えば、大きいが故に時を選ばなければなりません。21時頃に見ようと思えば、もっと先のゴールデンウィーク過ぎ頃が最適でしょう。

 うみへび座はギリシャ神話でヒドラだとされています。ヘルクレスによって退治されることになるのですが、首が9つもある上に、そのうちのひとつの首は不死身の首でした。おまけに首を切り落としても、そこから首が2つ生えてくるので、さすがのヘルクレスもたいそう手を焼いたそうです。

しし座

 2001年11月に日本中を騒がせたしし座流星群の輻射点のある星座が、まさにこのしし座です。

 しし座を探すには1等星レグルスを目印にするとよいでしょう。この時期と時間なら、東の方角で高度40度くらいのところに光っています。そこから?マークを裏返したような星の配列がすぐ見つかるかと思いますが、これはししの大がまと呼ばれています。しし座のしっぽの星は2等星のデネボラですが、こちらは春の大三角を構成する一員となっています。しかし、春の大三角の残りの2星を見るには、まだ少し時期が早いようです。まだ2月ですから、しかたのないところです。

 しし座はヘルクレスによって退治されたお化け獅子とされています。ヘルクレスはお化け獅子を退治した後、毛皮を剥ぎ取っていつも身につけていたそうです。

天頂の空

 頭の真上方向を見上げると、少しつぶれた五角形の形をしたぎょしゃ座や、カストルとポルックスのあるふたご座が見えています。ぎょしゃ座の方は、明るい0等星のカペラが良い目印となるでしょう。一方、ふたご座は、0.4等星の光度差しかないカストルとポルックスの明るい2星が並んでいるので、こちらもすぐにわかると思います。これらふたつの星座は、形に特徴がある星座なので眺めていて飽きないのですが、空を見上げすぎると首が痛くなりそうです。

2月15日21時 天頂の空

<恒星の凡例> <星雲・星団の凡例>
大きさにより1等星から6等星までを分類しています。 銀河、散開星団、球状星団、散光星雲、惑星状星雲、超新星残骸などを分類しています。