夏の天の川! 2003年8月

 いよいよ夏本番の8月。夜空の方も夏の星座が全部出そろって、こちらも夏本番となります。先月7月の七夕の頃だと、夏の天の川は高度が低くて見づらかったのですが、8月になると高度も上がってきて、淡い天の川は見やすくなります。暑い日ばかりで大変ですが、夕涼みがてらに夜空を見上げてほっと一息、なんていうのもなかなかいいものですよ。

注)このページの星空の様子は8月15日21時を基準としていますが、下の日時でもほぼ同様の空を見ることができます(月や惑星は除く)。また、明石以外でも日本国内であれば、見え方にさほど違いはありません。

  7月15日23時
  8月 1日22時
  8月15日21時
  9月 1日20時
  9月15日19時

全天のようす

7月15日21時 全天のようす
8月15日21時 全天のようす

 8月の夜空は夏の星座一色です。夏の天の川も天頂近くまで高く昇ってきていて見やすくなっています。西の空には春の星座、東の空には秋の星座が一部だけ見えています。

西の空

8月15日21時 西の空のようす
8月15日21時 西の空のようす

 西の空を見てみますと、先月までかろうじて見えていた春の星座も、さすがに8月になると、そのほとんどは西の空へ沈んで見えなくなってしまいました。ただひとつ、うしかい座の1等星アークトゥルスだけが、30度あまりの高度でがんばっているように見えます。その上方にはかわいい半円形をしたかんむり座が見えています。

 てんびん座やへび座といった、夏の先陣ともいえる星座たちは、早くも南西の空へと移動してきました。

南の空

8月15日21時 南の空のようす
8月15日21時 南の空のようす

 8月の南の空は先月に引き続き、夏の星座第2段といった感じです。

 南から南西の空にかけては、低い高度にさそり座のS字型が見えています。その上方には大きな5角形のへびつかい座とそれを取り巻くへび座があります。医神アスクレピオスと、アスクレピオスがつかんだ蛇の姿を思い描くには、へびつかいの五角形が立ったこの時期が一番よいかもしれません。先月のさそり座にかわって、今月はいて座が真南の空に見えています。いて座の主星となる6星は南斗六星と呼ばれていますが、北西の空低くに見える北斗七星と見比べてみるとよいでしょう。

 さそり座からいて座付近で最も濃くて幅が広くなる天の川は、南の空で立った状態で見えています。その天の川に沿って上方へと目を移すと、天の川の東のほとりにある1等星が目につきますが、これはわし座のアルタイルです。七夕の彦星さんですね。わし座の東隣には、夏の星座の最終選手となる、かわいい小さないるか座が見えてきました。

 南東の空低くには秋の星座となる、逆三角形の形をしたやぎ座が登場してきました。

夏の風物詩 −さそり座と夏の天の川を見よう−

 ほぼ真南で南中しているいて座のやや西側(右側)にはさそり座が見えます。さそり座には真っ赤な1等星アンタレスがあり、さそりの心臓部に位置しています。その上、特徴のある横向きになった大きくS字型に並んだ星々。うまい具合にさそりの毒針まで星が並んでいますので、「なるほど、本当にさそり座だ」と感心させられます。みなさんもさそり座を見られると、「ほーっ」と、うなずかれることと思います。
 今年は地球に大接近する赤い火星が南東の空に光っていますが、さそり座のアンタレスと、はたしてどちらが赤いか比べてみると楽しいと思いますよ。

 この頃には天の川が南の空で縦方向に立って見えており、天の川を見る絶好の季節です。銀河系の中心がいて座の方向にあるため、いて座からさそり座付近で最も幅が広くて濃くなっています。特にいて座の少し右側付近ではひときわ濃くなっており、スタークラウドと呼ばれています。双眼鏡でもあれば、付近をのぞくと「あっ」と声が出るほどの美しさですよ。天の川を見たことがない方は、この季節にぜひ挑戦してみてください。

北の空

8月15日21時 北の空のようす
8月15日21時 北の空のようす

 今月は北の空も見てみましょう。北極星のある星座はこぐま座ですが、こぐま座の星の並びをよくみると、ちいさなひしゃく形をしているのがわかります。おおぐま座の北斗七星は有名ですが、こぐま座のひしゃく形は意外と知られていません。小さな星が多いのですが、一度じっくりとご覧になってみてください。

 北西の空では、その北斗七星が斜めを向いて、水をすくい上げる時のような格好をしています。北極星をはさんで反対側にはW字型で有名なカシオペア座が北東の空から昇ってきました。この時期は北斗七星とカシオペア座の両方が見えるので、北極星を探すのに苦労はありません。カシオペア座の上方には、つぶれた5角形をしたケフェウス座も見えています。

ケフェウス座

 つぶれた5角形をしたその形から、古代エチオピアのケフェウス王を想像するのは簡単なことではありません。それどころか空の状態が悪いと、つぶれた5角形を探し出すことさえ骨が折れる場合があります。

 とりたてて見どころもあまりないのですが、ケフェウス座にはガーネット・スターがあります。4等星なので肉眼だと色まではわかりませんが、双眼鏡で見れば、その色の異常さに驚かされます。本当に「ざくろ石」と呼ぶにふさわしい、赤紫色をしているのがわかりますよ。

カシオペア座

 ギリシャ神話では、カシオペア座のカシオペアはケフェウス王の妻です。また、アンドロメダ姫はケフェウス王とカシオペア王妃との間に生まれた娘です。

 カシオペア座のW字型はあまりにも有名ですが、2等星3個と3等星2個からなるその形は非常に印象的です。しかし、ここからカシオペア王妃の姿を想像するのは、かなり骨が折れると思います。

 この時期のカシオペア座はW字型ではなく、少し斜めを向いた形をしています。カシオペア座をはじめとした全ての星座は、北極星を中心に回っているように見えるため、同じカシオペア座であっても、見る時間や季節が違うと見え方も変わってきますので注意しましょう。

天頂の空

8月15日21時 天頂の空のようす
8月15日21時 天頂の空のようす


 次に天頂方向を見てみましょう。今月天頂付近に見えているのは、夏の星座で小さな平行四辺形が印象的なこと座です。織姫星として有名なこと座のベガは、夏の夜空の最輝星ですが、本当に頭上で輝いているので、美しさに見とれていると首が痛くなってしまいます。

 天の川をはさんで、ベガをひとつの頂点とする1等星でできた大きな三角形は、夏の大三角です。夏の大三角は、天の川を背景にしているだけに、他の大三角よりも豪華に思います。天の川ははくちょう座のデネブ付近で大きくふたつに別れて、南の空へと流れ落ちていくのですが、田舎の澄んだ空では、このようすがハッキリとわかります。一度ご覧になると、その荘厳さに胸を打たれることと思います。

  

東の空

8月15日21時 東の空のようす
8月15日21時 東の空のようす

 東の空高くには夏の星座が大きく陣取っていますが、東の空低くからは秋の星座が少しずつ顔を見せ始めており、今か今かと、出番を待ち構えています。

 南東の空からは、8月27日に最接近となる火星が顔を見せてきました。火星はマイナス2.5等星以上の明るさでどの星よりも明るく、しかも不気味なほどに赤く輝くので、初めて見る方でもすぐに火星だとわかると思います。

 それでは、今月は夏の星座の小さな3つの星座を紹介しましょう。

いるか座

 いるか座はわし座のアルタイルのやや北東側(上の絵では左側)にあります。非常に小さな星座なのですが、小さくひし形に並んだ4つの星がかわいらしく並んでして、付近では以外に目立っています。一度見ると印象に残るのも、このひし形が特徴的だからだと思います。いるか座は夏の星座の最終選手。それだけに、この星座が天高くに昇ってくると、「秋も近づいたなあ」と感じさせられます。

 ギリシャ神話では、海の神ポセイドンが見初めた女神アンフィトリーテは、いるかの背中に乗ってポセイドンのもとへ嫁いだのですが、この功によって、いるかは天へ上げられたのだそうです。

や座

 先に出てきたわし座のアルタイルと、はくちょう座のアルビレオを結んだ中間付近に、や座という小さな星座があります。4等星の暗い星がメインですが、ていねいに星をたどると、「なるほど、矢だ!」と驚かされます。

 こんなさえないや座ですが、非常に有名な話があります。キューピッドの矢を受けると、最初に見た異性を好きになるという話を聞いたことはありませんか? そう、キューピッドの矢は、実はこのや座のことだったんですよ。

こぎつね座

こぎつね座もや座と同様に小さな星座です。そして、や座以上に明るい星も少なく、全くつかみどころのないさえない星座です。

 しかし、こぎつね座にはメシエ番号27番の亜鈴(あれい)星雲があります。双眼鏡でもその存在がわかるほど、明るくて大きな惑星状星雲ですが、天体望遠鏡で見ると、「丸いせんべいを両側からかじった」ような形に見えるユニークな星雲です。機会があれば、天体望遠鏡で一度ご覧になってください。