紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)

紫金山(ツチンシャン)・アトラス彗星とは

 紫金山(ツチンシャン)・アトラス彗星は、ATLASサーベイにより2023年2月22日に発見されました。その後、紫金山天文台で1月9日に撮影された彗星と同じものであることがわかり、紫金山・アトラス彗星と名付けられました。
 
 紫金山・アトラス彗星は2024年9月28日に太陽へ0.39AUまで近づいて近日点通過となります。また、10月12日に地球へ0.47AUまで近づきます。日本では9月下旬から10月下旬にかけて、2等台から5等台で観測できるのではないかと期待されています。
 
 発見された当初は0等級まで明るくなると言われて、大いに期待されました。ところが、2024年5月以降は増光が鈍り、核が分裂したとか太陽に近づくと崩壊するといった説が生まれました。しかし、再び増光を始め、核が分裂したり崩壊したという事実は観測されていません。残念ながら紫金山・アトラス彗星の明るさピークは2等級まで下方修正されましたが、それでも2等級。ここまで明るくなる彗星は少ないですから、大いに期待しましょう!

 

10月9日にマイナス4等級?

 紫金山・アトラス彗星は崩壊することなく、無事に近日点を通過しました。10月初旬は予報よりも1等級ほど明るいようです。なんでも10月9日は前方散乱により、最大マイナス4等級まで明るくなる可能性があるとのことです!
 
 下の星図は東京で5時30分に東の方角を見たようすです。日の出が12分後に控えている上に、紫金山・アトラス彗星の高度は0.5度という超過酷な条件です。日の出時刻の5時42分でも2.9度しかありません。マイナス4等級といっても、双眼鏡を使って果たして見えるかどうかといったところでしょうか。10月8日なら条件は少しマシですが、明るさはそこまで明るくありません。過去のマックノート彗星のように果たして見えるかどうか、双眼鏡を使って挑戦してください。

10月9日 日の出12分前

10月8日 日の出20分前

紫金山・アトラス彗星がSOHOの写野を通過

 10月8日から11日かけて、紫金山・アトラス彗星がSOHOのコロナグラフの写野に入ります。立派な尾を伸ばしたすごい画像が見れるかもしれませんよ!
 
概略位置をプロット。クリックで最新画像

 

紫金山・アトラス彗星の見つけ方

 ここでは夜空の星座に対して紫金山・アトラス彗星がどの位置に見えるかなど、東京の場合を例にして見つけ方を解説します。このページ以外でも彗星の見つけ方彗星の正体など、予備知識をたっぷり解説しています。彗星の各ページもぜひお読みください。
 

9月25日 紫金山・アトラス彗星が夜明け前に登場!
 
9月30日 夜明け前に最も見やすい
 
10月12日 地球最接近、夕方に見える?
 
10月13日 なんとか観測できる?
 
10月14日 紫金山・アトラス彗星が登場!
 
10月15日 暗夜で観測! M5にも接近!
 
10月16日 紫金山・アトラス彗星がM5に最接近
 
10月18日 高度を上げてへび座の中へ
 
10月20日 紫金山・アトラス彗星がへびつかい座λ星に大接近
 
10月23日 へびつかい座で4等台
 
10月26日 今日もへびつかい座
 
10月29日 へびつかい座β星とγ星に大接近
 
11月3日 去り行く紫金山・アトラス彗星を見送ろう

夜明け前の見え方

 夜明け前に見える紫金山・アトラス彗星は、高度が低くて見える期間も短く、観測条件的にはあまり良くありません。日の出1時間前に観測するとことを考えると、地平線上にあるのは9月23日から10月4日です。もっとも高度が高くなるのは9月29日から10月1日です。高度は3度ほどしかありませんが、双眼鏡を使えば見えないことはありません。
 
 9月25日、30日、10月5日の紫金山・アトラス彗星の明るさは、それぞれ3.1等、2.5等、2.3等です。地球に近づくため、後になるほど明るくなります。

日の出から1時間前に見える位置変化
9月23日(左側)から10月4日(右側)、尾は省略

オススメは日没後

 日没後の紫金山・アトラス彗星は、基本的に西から西南西に見えます。下の図は日の入りから1時間が経過した時に紫金山・アトラス彗星が見える位置を、2日間隔でプロットしたものです。
 
 夕方の西空に、最初に登場するのは10月12日です。その前から登場してはいるのですが、いかんせん、太陽に近いし高度も低いしで観測に適しません。しかしこれ以降は、日増しに高度が上がって見やすくなります。下の図を見ると、尾(イオンテール)が地平線に対して、上方向から左上方向に伸びることがわかります。明るさは2等台から5等台で、日が経つほどドンドン暗くなります。

日の入りから1時間後に見える位置(10月12日から2日間隔)

星座に対する移動経路

 紫金山・アトラス彗星が18時に見える位置を、星図上に1日または2日間隔でプロットしました。彗星を探す際の参考にしてください。
 
 10月9日は最も太陽の近くに見えて、おとめ座にあります。その後は東側(星図では左側)へドンドン移動し、16日には隣のへび座に入ります。その後も東進を続け、21日ごろにへびつかい座へ移ります。

9月21日〜10月9日 しし座・おとめ座付近、1日間隔

10月8日〜15日 おとめ座付近

10月12日〜22日 おとめ座・へび座・へびつかい座付近

10月18日〜11月5日 へびつかい座付近、2日間隔

軌道

 紫金山・アトラス彗星の離心率は1をわずかに超える双曲線軌道です。オールトの雲かそれよりも遠くからやって来る彗星で、今後二度と太陽へ近づくことはありません。見られるのは今回限りなのです。
 
 10月14日頃の軌道図をご覧ください。紫金山・アトラス彗星の軌道は、太陽へ近づく頃は軌道上の青い部分にあり、地球軌道面の南側に位置します。それを除けば水色部分が多くて地球軌道面よりも北側にありますので、北半球から観測しやすいことがわかります。
 
 それから10月14日の場合、彗星が地球に近い位置にあります。青い部分から水色の部分へ移動してきたところで、日本からの観測条件が良いことがわかります。

軌道図

明るさ

 10月10日以降2日間隔で、18時における明るさを表にまとめました。日の入り後に観測できるかどうかといった頃の10月12日の明るさは2.4等です。この日は地球最接近ですが、その後は太陽からも地球からも遠ざかるため、一貫して暗くなります。肉眼彗星から脱落するのは11月3日頃です。
 
 紫金山・アトラス彗星は太陽系よりもはるか彼方、オールトの雲かそれよりも遠い所からやってきたと考えられています。こういった彗星は表面が殻で覆われており、太陽に近づいても明るくならないケースがよくあります。実際、発見された当初は0等級まで明るくなって大彗星になるかもしれないと期待されたのですが、現在は2等台に下方修正されてしまいました。さて、実際はどうなるでしょうか?
 
※彗星の明るさは予報から大きくズレることも多いため、ひとつの目安とお考え下さい。

日付 明るさ(等級、18時)
09月24日
3.1
09月26日
2.9
09月28日
2.7
09月30日
2.5
10月02日
2.4
10月04日
2.3
10月06日
2.2
10月08日
2.2
10月10日
2.3
10月12日
2.4
10月14日
2.7
10月16日
3.0
10月18日
3.4
10月20日
3.7
10月22日
4.1
10月24日
4.5
10月26日
4.8
10月28日
5.2
10月30日
5.5
11月01日
5.8
11月03日
6.0

紫金山・アトラス彗星の光度曲線

 

距離

 一般的に彗星は太陽へ近づくほど活動が活発になって、明るくなります。ですから太陽との距離(日心距離)が最も重要です。紫金山・アトラス彗星は9月28日に太陽へ最も近づいて、近日点を通過します。近日点距離は0.39AUということで、水星の軌道付近まで太陽に近づいて、活動が活発になるのが期待されます。
 
※1AUは地球と太陽間の距離に相当し、およそ1.5億Km。

日心距離(太陽との距離)のグラフ

 
 紫金山・アトラス彗星が地球へ最も近づくのは10月12日頃です。距離は0.47AUと比較的近い方です。ちょうど日本から観測しやすくなる頃ですので好都合です。

地心距離(地球との距離)のグラフ

 

このページのシミュレーション画像は、Windowsパソコン用の自作ソフト「つるちゃんのプラネタリウム シェア版」を使用しています。無料のフリー版を使っても、このペーシのようなシミュレーション画像を表示することができます。紫金山・アトラス彗星のデータ設定方法より、ソフトのインストールとデータ設定を行ってください。
※計算精度の関係で位置が多少ズレることがあります。ご了承ください。